明日の僕は昨日の誰か

いざよい ふたばりー

第1話 発端

 見上げた空はあくまでも青く、世界の果てまで澄み渡っているようだ。

まるで今のボクの心を映し出しているかのように……。



 ──しばらく前から妙な夢をみる。

薄暗い部屋の中で僕と誰かが取っ組み合いをしているんだ。

一番初めに見たのはそう、今となってはぼんやりとしか覚えていないが、確か罵り合いから始まった。日が経つにつれ罵り合いはエスカレートし、殴り合いに発展していった。


「……と、言うことなんだ。」


 穏やかな休日の昼下がり。

僕の様子がおかしいと、幼馴染が話を聞いてくれている。

一通り話を聞いた幼馴染は、心配そうにうなづいた。


「だから最近様子がおかしいのね。」


「まあ、そう言うことなんだ。毎日毎日あの夢をみてもうウンザリ。」


「なるほどね。それでかな、まるで別人の様になる事があるのよ。お医者さんに診てもらった方がいいんじゃないかな。」


「医者ねぇ。あまり気が進まないな。それに、何か病名をつけられて薬漬けにされてしまいそうで怖いんだよ。そうなると、僕が僕ではなくなる様な気がしてね。」


「でも、いよいよとなったらお医者さんに診てもらう事も考えておいてね。」


「考えておくよ。でも、当分は大丈夫かな。君に話を聞いてもらっている間、心持ち楽になる気もするし。それに、なるべくならあまり薬には頼りたくはないからね。お金もかかるし。」


「あら、お役に立てて嬉しいわ。じゃあまたおはなししましょう。」


「うん、ありがとう。じゃあまたね。」


 この子は昔から世話焼きで、悩み事やなんかに首を突っ込んでくる。それが煩わしい事もあれば、今みたいに助かる事もある。


「そういえば……。」


 ふと、思い当たる事があった。

だけどこれはあの子にはナイショかな。

だってこれを聞いたらあの子は責任を感じてしまいそうだから。

たぶんだけど、きっかけはあの子が誰か、僕の知らない男と街を歩いていたのを目撃した事。

繁華街を肩を並べ歩いていた。その男は僕より少し背は高く、きっと僕よりはっきりと物を言いそうな、グイグイ行くタイプ。

一方、僕はと言うと絵に描いたような内気で押しに弱い。見た目もソイツに比べたら見劣りしてしまうだろうね。


「はぁ……。」


大きな溜息が、夕焼け空に混ざって消えた。

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