第2話 くっつくことに慣れてしまう1週間

 俺は南那と空港で別れるまで1週間一緒に過ごした。あんなにずっと一緒に過ごしたのは初めてだ。

 南那がこっちにいた頃は俺が実家暮らしだったから。


 遠距離になって半年、やっと南那が遊びに来てくれたのがこの間。

 1週間、俺達はホテルに寝泊まりしながら、あの頃行った思い出の場所や、まだ行ったことがなかった場所に遊びに行った。少し遅れた夏休みだった。


 離れて暮らすようになり、南那が隣にいないことに少し慣れてしまっていた頃、南那が遊びにくるというので、俺はそのために仕事を頑張った。

 まるで片想いが始まった時みたいに、周りの色がキラキラして見えて、明日が来ることが毎日楽しみだった。


 南那と過ごした1週間。半年ぶりの1週間はとても濃い時間だった。

 この1週間ですっかりくっつくことに慣れてしまい、もう離れることが苦しく思うほど。

 半年間も離れていたとは思えない、悲しみだった。



「秋馬ー!」

 手荷物を受け取った南那が空港の到着ロビーに現れ、俺に手を振って近づいてくる。

「南那! 久しぶり! 元気だったか?」

「元気だけど、秋馬がいないとやっぱり淋しいね」

 そう言って南那は俺にギューッときつくしがみつく。

 その姿がまた可愛く、懐かしい香水の香りが仄かに鼻をかすめた。


 これから1週間、南那との暮らしが始まる。1週間なんてあっという間に過ぎてしまうことは覚悟していた。

 けれど、間に1日だけ会議があり、午前中は出社しなければならない日があった。

 それでもほぼ1週間まるまる有休を取らせてくれた会社には感謝している。


 まぁ、俺の要領がよくてやるべきことは片付けておいたからっていうのもあるが。


「水曜日ごめんな、午前中どうしても会社行かなきゃいけなくて」

「ううん、大丈夫。でも1週間も有休なんてよくくれたね! 近くのカフェで時間潰してれば午前中なんてすぐだよ!」

「やるべきことはやってきたからね〜」

 得意気になる俺を、南那は可愛い横顔で笑う。


 南那はショッピングが大好きだったが、俺はべつにそうでもない。むしろ1人だったら絶対デパートなんかには入らない。

 でも、南那が一緒だと楽しいんだ。南那が喜ぶ顔が見られるっていうだけで、楽しい。


「再会記念に何か買ってやろうか?」

「え!? ホントに!?」

「南那、誕生日春だったじゃん。だからプレゼント」

「えー! じゃあ私も、秋馬にプレゼント買ってあげる!」

「それじゃ意味なくね?」

「えー! あるよ! お互いに買って渡すのがいいんだよ! 秋馬だってもうすぐ誕生日でしょ? 何か欲しいものある?」


 俺達はお互いに欲しいもののジャンルをリクエストして、お互いに選んだものを買ってプレゼントし合うことにした。

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