SランクPTを追放された最強土魔術師、農業で無双する
絢乃
001 追放されました
クエスト攻略の連続成功記録を更新し、馬鹿騒ぎする為に酒場へ行く。
まさかそんな場で宣告されると思わなかった――。
「クリフ、お前には今日限りでPTを抜けてもらう」
注文が終わるなり、PTリーダーを務める黒髪の
だから俺は、真面目な顔で返した。
「それって何か、俺はこの〈影の者達〉からお払い箱、つまりクビってことか?」
「そういうことになる。お前は
「なんだよそれ、意味が分からないぜ。お前達はどう思うんだ?」
左右に座っている仲間の二人を見る。スキンヘッドが特徴的な大柄の武闘家・バルザロスと、水色の長い髪をした女プリーストのリーネだ。この二人と俺とシャドウの四人で、駆け出しの頃からSランクの今までずっとやってきた。
「シャドウの言い分に一理あると思う……」
バルザロスが目を逸らす。
「ごめん、クリフ……」
リーネは申し訳なさそうに頭を下げた。
「俺達は今までメンバーを入れ替えずにやってきて、今日だって上手くいってたじゃないか。最後にクエストで滑ったのっていつだ。数年前だぞ。なのに、どうして」
「さっきも言ったが、土魔法はもう不要なんだよ」
シャドウがきっぱり言い切る。
「それが意味不明なんだよ。貢献してるだろ。俺がいないとボロボロになるぜ?」
「昔はそうだった。お前が戦いやすいフィールドに整えてくれて、そのおかげで俺達は100%の力で戦うことができた。だがな、そんなものがありがたいのは中位の冒険者までなんだよ。SランクやAランクのような上位になれば、どんなフィールドでも最高のパフォーマンスを発揮できて当然だ。他の上位PTを見ればお前だって分かるだろ」
たしかに他の上位PTに土魔法の専門家はいない。いるとしても、他の魔法に特化しつつ土魔法も嗜んでいます、といったスタンスの者くらいだ。
「……どうやら考えを改める気はないようだな」
「すまんが、熟慮の末に決めたことなんでな」
「そうか。だったらもういい」
俺は席を立った。シャドウという男を知っているからこそ、これ以上の話し合いは無駄だと悟ったのだ。
「PTからは抜けてもらうが、だからって友情の輪が切れるわけじゃねぇ。これからは友達として仲良く頼むぜ」
「悪いが俺はそこまで出来た人間じゃないんだ。今後も仲良くとはいかない」
三人に背を向け、店の外へ向かう。
「お待たせいたしました! 祝勝記念の丸ごとチキンスペシャルでーす!」
何も知らない女性従業員の声が響いた。
◇
冒険者ギルドにやってきた。
酒場から飲食物の提供を無くしたような感じの場所だ。
奥には受付カウンターが横並びにたくさんあり、その内の端に行った。
「これは! クリフ様! どうなされましたか?」
顔なじみの受付嬢が満点のスマイルをくれる。
「冒険者稼業から足を洗うことにした。今日をもって引退するので手続きを頼む」
「えっ、引退? 本気ですか? 今日だってSランクのクエストを……」
「そうなんだが、PTを追放されてしまってな」
「それは……大変でしたね……。でも、PTメンバーの入れ替えなんて日常茶飯事ですよ」
「分かっているさ。他所ではクビなんて当たり前にある。だが、俺達〈影の者達〉は違ったんだ。今まではな」
「たしかに……」
「他所のPTに入る気はないし、それなりに稼いだから引退するよ。それに、Sランクの冒険者の引退ともなれば、功労金やら何やらいい感じだろ?」
冗談ぽく笑う。
こちらの気持ちを察してか、受付嬢も合わせてくれた。
「それはもう、すんごいですよ! 手続きの代行とかもできますよ! 家の取得とか、仕事の斡旋とか、何でもお申し付け下さい!」
「なら家を用意してもらおうかな。今まで宿屋を転々としていたから」
「かしこまりました! どういった物件をご希望ですか?」
受付嬢は手元の機械をカタカタする。
「広々とした土地がいいな。土魔法を活かしてのんびり農業でもしたい」
「農業用の土地は……まともなところが空いていませんね。冒険者ギルドのある都市の農場は人気ですから、空きが出てもすぐに別の農家が手を出します」
「別に冒険者ギルドがなくてもいいよ。戦闘に不向きな土魔術師といってもSランカーだからな。その辺の雑魚なら自分で対処できる」
「そういうことでしたら!」
こうして、行ったことのない片田舎の広大な土地を購入した。家は新たに建ててもらう。
24歳から始めるセカンドライフの幕開けだ。
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