転生したらナメクジでした~死にスキルを駆使してレベルとステータスを上げ、魔物を吸収し、仲間を増やして、塩で即死するクソ雑魚最弱生物から最強の魔王へと成り上がり、虐げてきた勇者どもに復讐します~
おさない
序章
第1話 ナメクジ転生
俺の名前は田中。今年で(※ヒミツ♪)※歳になるニートだった。
毎日を平穏に過ごしていた俺だったが、自室に突っ込んできたトラックに轢かれて死んでしまった。
まさか、家にいるのにトラックに轢かれるとは思わなかったぜ。
いやはや人生はままならない。
――それはともかく、ここは一体どこだ?
見たところ、やたらジメジメした湿地のような場所みたいだが……。
やっぱり……異世界転生ってやつ……?
もはや流行を通り過ぎて定番ジャンルと化したアレに、俺もとうとう巻き込まれたということなのか……?
……とはいえ、そこまで悲観することでもない。もし本当に俺が異世界転生をしたのであれば、俺の前途は希望で満ち溢れている。
なぜなら、異世界転生にはチートスキルや美少女ハーレムがつきものだからだ!
ああ、そんな素敵な世界で第二の人生を歩めるなんて、なんと愉快なことだろう。やったぜ!
――――こんな体じゃなければそうやって喜べたんだけどな!!!!!!
手足もない、やたら動くのが遅い、使えるのは目の下あたりについている短い謎の触手くらい。おまけに、目の位置も何か変だ。上手く言い表せないけど、体から飛び出してる気がする。
今の俺の体は明らかに人間のそれとは違うのだ。
というか、どう考えても悍ましい化け物みたいな姿をしているとしか思えない。
俺は一体、何になってしまったんだ?
こんなんじゃやっていけないぞ!
……と、落ち込むところまでが定番の流れだ。
大丈夫、最初は明らかに詰んでいる状況から始まることもままある。
でもなんだかんだで最強になるのだ。つまり俺の前途は希望で満ち溢れている!(二回目)
そんなことを考えほくそ笑んでいると、俺はいつの間にか複数の人間に包囲されていた。
(!?!?!?!?!?)
何が何だか分からず、困惑する。相手はざっと数えた感じ五人。これだけの人数に接近されながら、今に至るまで全然気づかなかった。
一体なぜ? 疑問に思ったその時、俺はふとある事実に気づいた。目の前の人間は口をぱくぱくさせて何か話している様子なのに、俺には何も聞こえないのだ。
――そうか。そもそも俺には音が聴こえていないのだ。やけに静かな世界だとは思っていたが、単純に俺が聴覚を失っていただけらしい。
視覚だけが頼りなのに、そのリソースを自分の体の観察に割いてしまったせいで、相手の接近に気づかなかったのである。
相手は明らかにゲームとかアニメとかで見る冒険者風の格好をした人間が五人。
そして、こちらはおそらくおぞましいモンスター。
死亡フラグしか見当たらなかった。
(や、やばい、経験値にされる!)
俺は縮こまって身体を震えさせ、露骨な無害アピールをする。
(ボクは悪いスライムじゃないし、たぶんスライムじゃないですぅっ!!)
心の中でしか叫べなかったので、俺の訴えは五人のうちの誰にも届いていない。
それから少しして、白いマントを羽織った男が俺の前に歩み出てきた。
(な、何事だ…………?)
よく見ると、男の手には白い粉のようなものが入った瓶が握られている。
――というか、瓶の上に『塩』と表示されていた。
(しお…………?)
どうやら、俺に塩をくれるらしい。まさに敵に塩を送るというやつだ。
こいつは馬鹿なのだろうか?
そう思った次の瞬間、男は俺の体に塩を振りかけてきた。
(ぐおおおおおおおっ!?)
刹那、全身に激痛が走る。
(な、なんだこれはッ!?)
全身が焼けるように熱い。いや、痛い!
力が抜けて、体がどんどん萎びていくような感じがした。
(まって、これ死ぬ! 死んじゃう! ぐあああああっ!)
朦朧とする意識、にやにやと笑う男の顔。
そして干からびていく俺のぬめぬめボディ。
(がはッ…………まだ何も始まってないのに……死ぬのか……)
苦しむ俺のことを一通り観察した後、満足した様子で仲間と共に立ち去る男。
そのマントには、尻尾を咥えた蛇の紋章が描かれていた。
よくよく見てみると他の人間も、皆着ている服や鎧のどこかに同様の紋章を入れている。
(くそ……覚えたぞ…………!)
俺は、心の中で復讐を誓った。
――だが、もう限界のようだ。
(塩で死ぬとか……ナメクジかよ……)
朦朧とする意識の中、俺は思った。
なるほど、そういえば他の特徴もナメクジっぽいぞ。
(もしかして……俺はナメクジになったのか……?)
衝撃の事実に気付いた次の瞬間、俺は自分の意識を手放すのだった。
*
(うぐ…………)
体が冷たい。俺は死んでしまったのだろうか?
異世界転生したばかりなのに……せめて来世は人間になりたい……。
すると突然、俺は水の中に放り込まれた。
(がぼぼぼぼぼっ!?)
そして今度は、水の中から勢いよく引き揚げられる。
(ごふっ……)
拷問か?
もう駄目だ。死ぬ。
「だ、大丈夫ですか!?ちゃんと生きてますか?」
その時突然、頭の中に声が響いてきた。
(俺はもう長くはない……)
「そんな……しっかりしてください!」
……うん? 会話が成立してるぞ。
何かが、俺の考えていることに対して適切に返答してくる。
幻聴か?
(なぜ……俺の考えていることがわかるんだ……?)
「空気中の魔力を介して、あなたの心に直接語りかけています」
ふーん。なんかすごいじゃん。ファンタジーって感じ。
(じゃあ、あんたが俺のことを助けてくれたのか?)
「はい! あなたが干からびて地面の上に転がっていたので、大急ぎで近くの水溜りまで運んできました!」
俺は歓喜した。どうやら、こんな
その甲高い声からして、きっと童顔で巨乳の素敵な美少女なのだろう。
俺はゆっくりと目を開いて、命の恩人の姿を脳裏に焼き付けることにした。
……どこがナメクジの脳なのかは知らんけど。
「良かった、ちゃんと目も見えるみたいですね!」
(……え?)
「どうかしましたか?」
しかし、俺の目の前に居たのは、俺と同じくらいの大きさの……。
(……カタツムリじゃん)
「ハイそうです。私はカタツムリです! 名前はツムリンっていいます!」
俺が脳内でイメージしていた美少女像は一瞬で崩れ去った。
(カタツムリじゃん…………)
「あなたもカタツムリですよね? 私、初めて仲間に会えました!」
触覚を動かして喜ぶカタツムリ。
そこに存在しているのはゆるキャラ的な可愛さのみである。
「カタツムリ同士、これから仲良くしましょう!」
(…………いや、残念ながら俺はカタツムリではない)
「ど、どうしてですか!?」
俺の言葉に驚くカタツムリ。……確かツムリンとか名乗ってたか。
(お前の背負ってる殻、俺の背中にあるか?)
「ありませんね」
ツムリンは即答した。カタツムリにあるまじき早さだ。
だが、これで俺がナメクジであることはほぼ確定した。
(つまりそういうことだ。俺はナメクジ。お前はカタツムリ。良く似ているが、実は違う種なんだよ)
「そんな…………あなたが噂に聞くナメクジという生物だったんですね……」
どんな噂だよ。
ツムリンは少しだけ触手を垂らして落ち込んでいたが、やがてニョキニョキと目を伸ばして俺の方を見た。
「でも、似ているので何も問題ありません! 早速私たちの子孫を残しましょう!」
(……はい?)
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