スターチルドレン

@sakura37

第1話 スターチルドレン

 いい天気、窓を開けましょう。外は太陽が眩しい風が吹き込んでくる。その風は髪を乱す。私は髪を押さえ笑顔で振り返る。すると、誰かの優しい手が私の頬を包み優しくキスをする。優しく、そこで目が覚めた。しばらく唇に残る感触を確認するように自分の指を唇当てる。何だろう‥‥‥この優しいキス……


 胸が締め付けられる。それにあれは誰だったのだろう涙が溢れる。何故泣いているの? この涙は何? 訳が分からず暫くその不思議な感情に支配されていた。ただの夢なのにどうして懐かしいの。


 私は子供の頃から他の人には見えない物が見えていた。こんな変わった子供なのに両親はいつも話しを聞いてくれた。


 今日は親友の智子とランチに行く日だ。いつもの様に駅前で待ち合わせる。待っている間にも色々な物が見えている。だから、待っている時はいつも本を読んでいる事にしている。


「お待たせ! あゆみ」

 と肩を叩かれる、


「それじゃあ、いつもの所に行きましょう!」


 スターチルドレン、前世の記憶を持っていたり宇宙のエネルギーを感じ取れる人達をそう呼ぶらしい。


 いつもの所、表向きは普通のカフェだが、ここは、スターチルドレンが集まる場所になっている。


「いらっしゃい、先ずはランチだね。今日のお勧めでいいかな?」


 マスターが笑顔で聞いてくれる。


「はい! その後に季節のパフェをお願いします!」


「かしこまりました。では、お待ち下さい」


 ここのマスターもスターチルドレンなのだ。ランチとパフェを食べ終わると、奥のドアを開けて入る。スタッフ以外立ち入り禁止のドアだ、中に入るともう他の人が来ていた。大きなテーブルに椅子、そこに智子と座る。


 ここでは、宇宙エネルギーからのメッセージを受けたり、前世の話をしたりする場所になっていた。


「今日は新しいメンバーが来る予定だから、もう少し待ってくれないか」

 と、太陽くんが言うけれど‥‥‥迷っているのかしら? ドアが開く


「アキラ! 遅いじゃないか! 迷ったら聞けって言ったろ?」


「悪い悪い、店間違えて入ってたー、話しが通じないからおかしいなと思ったら店名を間違えてたよ」


アキラと名乗る青年は頭を掻きながら照れて言う。


 その青年と目が合う、しばらく見つめ合う、


「あのー何処かで会った事ありますか?」


「初めての会った気がしない」


 とアキラも言う。それを見ていた太陽が、


「当たり前だろ! 前世で一緒だったんだ。その内思い出すさ」


 前世、ふと夢の事を思い出し顔が熱くなる。私は前世の事を覚えていない、でもここに居る人は同じ前世を持っているらしい。


 智子は前世を覚えていて私と姉妹だったらしい、入社式で会っていきなり抱き着かれて驚いた。それから、ここの場所を教えてもらって通っている。


「アキラも前世は余り覚えていないらしい、が、あゆみと同じで色々見えるみたいだ」


 と、アキラを誘った太陽が言う。その時、アキラが

「後ろに見える人は君の前世の姿かい?」


 アキラは席を立つと私に近づく、私もアキラの後ろに違う人が見えている。すると、アキラが顔を真っ赤にする。


「いいぜ、そのままキスしたら? 久しぶりの再会だろ?」


「なっ!」


 お互い自分の口に手を当てる。


「ばか言うなよ! 人前でそんな事出来るかよ!」


 二人で顔を赤くしてもじもじする。すると智子が、


「そうか! あなた! リーなのね!」


「そっ! リーなんだよ」


 ニコッと太陽が笑う。智子は、そうかーと言う顔をしてニヤッと私を見る。


「それじゃあ、私達はお邪魔かしら?」


 その時ドアが開きマスターが珈琲を持って入って来た。


「邪魔者がもう一人来ちゃったわね。マスター、珈琲は外の席でもらうわ。ちょっとここは若い者同士に、ね! 少し時間をあげましょう」


 と、二人きりになった。何を話せばいいのかしら? 下を向き困ってると


「ティアーヌ」


 その名前を呼ばれてハッと顔を上げる。するとアキラは私の頬に片手で優しく触れる。この感じ、覚えてる。暖かい、懐かしい‥‥‥


「リーキャス」

 私はその名をアキラに向かって呼んだ。後ろに見えている人とアキラが重なる。

「リー」


 すると夢で見たあの場面、窓辺で二人外を見ている。風が吹いて髪が乱れる。


「ティア」


そう呼ばれ、それと同時に優しくキスをされた。触れるだけの優しいキス、涙が溢れる。そうだ、この人は、私の愛する大切な人、いつまでも傍に居たいと願った相手だ。そこから前世を思い出した。


「ゴメン急に、こんな事」


 私が泣いたのでアキラが焦る。


「違うの、これは嬉し涙よ。思い出したの、あなたがリーなのね」


「ティア、今でも愛してる。姿が変わってもこの想いは変わらない」


「私も同じ」


 二人で見つめ合っているとドアがノックされる。


「あー、入っても大丈夫かな?」


 太陽の声だ、アキラが、


「何、変な想像してんだよ! お前ら! 入って来いよ!」


 マスターも一緒に入って来る。


「あゆみちゃん思い出したんだね」


「ハイ! 思い出しました」


「アキラくんも思い出したようで何より」


 二人で顔を赤くする。


「今日はこの後、店はクローズだ。これから皆に伝えなければならない重要な話しがある」


 マスタも席に着く。

「これで、まあ、主要メンバーが揃ったか」


「覚えているだろう、我が母星が攻撃され破壊された。その奴らが今度はこの地球を狙っている」


 そこに居た全員の表情が変わる。それぞれの記憶を辿っているようだ。


 そうだ、私は建物の下敷きになった。リーが走って来る、手を伸ばすが届かない、その後は記憶が途絶えている。


 次の場面では、ベッドで寝ている私の手を握ってリーが何かを言ってる。その横で泣いているのは智子、私の可愛い妹サーシャ、他にも見知った顔が悲しそうに私を見てる、そこで記憶が終わる。私は死んだのね。そこで、思い出しながら、太陽が


「真っ先にティア姫が死んじゃうから、あの後ほんと! 大変だったんだぞ。リーが全然使い者にならなくて、ポンコツだったから」


 マスターが渋い顔で言う

「あんな思いはもうしたくないと皆思っているさ」


 太陽が言う

「で? 俺達はどうすればいい?」


「この中で一番力が強いのは、“リー”アキラだ。が、覚醒したばかりだしな、うーん」


 と考え込む、それを見たアキラは

「大丈夫ですよ。前世を思い出して力の使い方も思い出しました」


「おっ! それは、心強いな、智子ちゃんは太陽がいるから大丈夫だね」


「サーシャ。足引っ張るなよ」


「まあひどい! セナがいくら近衛隊長だったからって! 私だって自分で言うのも何だけど射撃は上手かったわよ」


 そんなやり取りをマスターは笑顔で聞いていた。


「街中で暴れる訳には行かないからな、奴らは俺達に気づいていない。くれぐれも気配を消して置いてくれ力は使うなよ」


 皆で頷く。

「俺は今、大臣クラスの人と何度か面会している。地球が危機にあると伝える為に、明日は防衛省に行く予定だ。一緒に行ける者はいるかな?」


 すると、太陽が

「仕事は何とでもなる、休みにするさ。人数が多い方が説得力があるだろう? アポとるの大変だったろ? 時間はどれだけとれた?」


 マスターはほっとした様に

「流石だね、話しが早い。時間は午後1時から30分もらえたよ」


「マスターの事だから、ある程度話しは通してあるんだろ? 後はそれを証明すればいいだけだから、充分だよ」


 太陽はさらっと言った。


 えーっと明日はお得意先に挨拶があるから、午前中の回ったら体調不良で早退しよう。そう考えていたら智子も同じ事を考えてる、顔を見ればわかる。有給使うぞって書いてある。


 翌朝、私はお得意先に挨拶をした後体調不良で早退した。上司は優しい人で翌日も休んでいいと言ってくれた。何だか申し訳ないが、仕事続きで疲れていたのは本当なので休む事にした。


 そのままカフェに向かう。カフェは休業日でもいつものメンバーが待っていた。もしかしたら、時間間違えた? 慌てて走る。皆の所に着くとマスターが、



「いや~皆、予定より早いよ。気合入りすぎ」


 そうなんだ、良かった。ほっとするとアキラと目が合った。昨日の事を思い出す。顔が赤くなるのが自分でも分かるアキラは優しく微笑み返してくれた。

 

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