乱反射

オオムラ ハルキ

第1話コードネームB:side 寂寥

「なぁ、本当にこれで良かったのか?」


「弱気になってるわけじゃなくてさ。」


「世界は、間違ってる。これだけは分かる。」


「確かに俺は未来を救った。」


「でも、それと同時に帰る場所を無くしたんだ。」


 時代は2###年。あの日この手で潰した故郷はとっくのとうに跡形もなくなっている。俺が小さかった頃、この世界はクソみたいにつまらなかった。つまらないだけじゃなくて人間間の差も大きい不平等な世界だった。大人は偉い、年長者を敬え、子供が知ったかぶるな、女は従順でいろ、男はよく働け…etc。あらかじめ決まったレールに則って生活すればある程度の保証は受けられるそんな世界に俺は飽き飽きしていたんだ。見慣れた街を捻り潰すのにあまり良心は痛まなかった、当時は。


「ビルを、人を、自然を、グシャッと丸めてゴミ箱にポイっとする」


 考えていることは割とすごいことなんだけど、口に出すとなんでこんなにもポップになってしまうのか。むしゃくしゃした気持ちを当てつけられたこの街はきっと悲しんでいただろう。まぁ、あの頃の俺には分からなかったけど。


 自由を行使する代わりに帰る場所を失った。今は少し、それが寂しい。フードを深く被って、傷つけてしまったものの重みをずっしりと感じた。

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