【異世界設定資料集】貴き落人の御圀――エールンドレ(Ērndore)

犬單于 𐰃𐱃 𐰖𐰉𐰍𐰆

第1話【地理概説】 エールンドレのエンデルーン

 エールンドレとは、高貴な民エールザンドが住まう谷という意味である。祖先の故地を追われ、始祖サルマルドに率いられた民がエールザンドである。そして、始祖サルマルドとエールザンドの民が落ち延びた先が、エールンドレである。エーレンドレの内側をエンデルーンとも呼ぶ。その外側はビールーンと呼ばれる外地、異国である。


 エールンドレは、外敵を寄せ付けない険峻な山脈ハルボルズに囲まれている。四季がはっきりしているが、夏と冬が穏やかな地上の楽園である。ハルボルズの峰々は、エンデルーンをビールーンから隔てている。天にも届くような険峻の岩肌の下には、なだらかな草原地帯ラーグが広がっている。そこは夏は豊かな牧場となっている。草原の下は、豊かな樹木に覆われた大森林ウェーシャゲスターンが広がっている。大森林ウェーシャゲスターンに囲まれて、開けた平地が広がっている。ハルボルズの峰々から流れ出た小川が集まって一本の河ウェフロードとなっている。そして、大森林ウェーシャゲスターンに囲まれて、開けた土地をロードバールと呼ぶ。ロードバールの流れは、ハルボルズの裂け目デルベンドを貫いて異界ビールーンに流れる。

 エーレンドレの内側エンデルーンは、外縁にハルボルズ山脈、その内側にラーグ草原、更に内側にウェーシャゲスターン森林、そして中心にロードバール平原が同心円状に並んでいる。そしてウェフロード河がハルボルズ山脈の隘路デルベンドを経て異界と繋がっている。


◎ハルボルズ山脈

 ハルボルズの峰々は夏でも万年雪を頂いている。万年雪の白さは、女神アルドウィー・スーラー・アナーヒターの肌の白さに例えられる。その険峻さは霊長セーンムルウでも越えられないと云われている。そして、この峰々に霊長セーンムルウは巣作りをしてると云われる。ここは外界を隔てる結界であり、聖域でもある。急峻で気候も厳しく、夏でも凍えるほど寒く、息することさえできない。エンデルーンの住民たちが近づくことは先ずない。しかし、岩肌には野生のヤギが生息し、霊薬の元となる珍奇な様々な薬草が生えている。また僅かながら美しい毛皮を持つ雪豹も生息している。


◎ラーグ草原

 冬は寒さ厳しく雪で覆われている。春の雪解けとともに豊かな牧草が生い茂る草原地帯である。信義の神ミスラの広き牧場に例えられる。ラーグ草原は、エールザンドの王族や貴族、騎士たちが夏を越す所である。ここに牛や羊、馬を放牧することは、エールザンドの王侯たちの特権である。しかし、王侯だけで独占している訳ではなく、一部の牧草地は低地の農民たちにも割り当てられている。


◎ウェーシャゲスターン森林

 冬は雪が積もるが、ラーグ草原ほど寒さは厳しくない。一部は王侯の狩場として囲い込まれているが、その多くはエールーンドレに住まう民たちの全てに豊かな恵みを与える。民たちは、ここから材木や柴や薪を得る。秋には色鮮やかに紅葉し、木の実や茸の実りをもたらす。しかし、森の奥には熊や豹、狼などの猛獣も潜んでいる。またペリーやガンダルヴァなどの妖精も棲むと考えられている。そして、怪しげな獣人や小鬼も棲んでいるかもしれないが、あまり信じられていない。


◎ロードバール平原

 女神アルドウィー・スーラー・アナーヒターの恵みの賜物であるウェフロードの流れによって開かれた肥沃な平原である。冬は寒いことは寒いが、寒さはそれほど厳しくは無い。夏は暑いことは暑いが、暑さはそれほど厳しくは無い。エンデルーンの中心に王都ペイタフトが立つ。嘗ては、ウェフロードは度々氾濫を起こし、民を苦しめていた。その為、高貴な民エールザンドが来る前はデーウロードと呼ばれていた。しかし、大賢者ダニシュモンド・ウズルグパランの時に治水工事を行って反乱を鎮めた。それ以来、ロードバールは豊かな穀倉地帯となった。


◎王都ペイタフト

 ロードバール平原の中心部にある高台に立っている。その高台の下にはウェフロードが緩やかに流れている。町全体は、長さ一パラサング程で、ほぼ円形である。城壁の高さは大人の背丈四人分である。そして大人の背丈六人分の高さの塔が十二本あり、城壁を守っている。城門は四つある。南東にフラダダフシュ門、南西にウィーダダフシュ門、北西にバルシュト門、北東にジャルシュト門がある。四つの門から、町の中に向かって大通りが伸び大広場メイダーンで交差する。ここがパイタフトの中心である。メイダーンに面し、バルシュト門通りとジャルシュト門通りの間はシャフレスターンと呼ばれている。シャフレスターンの中に王宮や聖火の神殿、王侯たちの屋敷が並んでいる。シャフレスターン以外の所を、ワルダーナと呼ぶ。そこには市場や旅籠、商人や職人たちの家が立ち並ぶ。


◎デルベンド

 エールンドレを囲むハルボルズ山脈も、南側に一つだけ僅かに途切れ、狭く開けた所が有る。この谷間をデルベンドと呼ぶ。そこからウェフロード河は山肌に激しくぶつかりながら、異界ビールーンへと流れだす。ウェフロード沿いの崖には、馬と馬がすれ違えるほどの隘路が穿たれている。この隘路はエンデルーンとビールーンを繋ぐ唯一の街道となっている。



【解説】


 「一フラサング」は、約6kmに相当します。約一時間の歩行距離という説がありますが、馬とかロバによる騎行一時間という説の方が説得力あると思います。


 国の広さを、十フラサングと計算すると、とんでもないことが判りました。南関東の主要部がすっぽり収まる広さでした。

 皇居を起点に計算してみると、王都ペイテフトが江戸城と同じくらいの広さです。北の丸から一ツ橋界隈くらいの範囲がシャフレスターンになります。

 ロードバール平原の範囲を二フラサングとすると、ほぼ二十三区くらいの広さです。

 ウェーシャゲスターン森林の厚さを三フラサングとすると、東京近郊のベッドタウンが樹々で覆われることになります。川崎、横浜、町田、府中、立川、所沢、さいたま市、船橋、千葉、東京湾の殆どです。

 ラーグ草原の厚さを三フラサングと設定すると、横須賀、鎌倉、八王子、川越、春日部、佐倉、木更津の辺りが草で覆われている訳です。

 更に外側がハルボルス山脈だとすると、平塚、檜原村、東松山、つくば、成田、茂原、久里浜辺りが山頂部に当たります。

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