Jack Eyes

がじろー

第1話 『私立探偵 神代八雲』

 悪い見本の大人とはどういったイメージがあるのか。

 何もない日があれば銀色の玉を打ち込みパチンコに勤しんだり、毎日ぐうたらと過ごしている事を言うのだろうか?

 否、それは違うと二十後半でまもなく三十になろうとしている男――――神代八雲かじろやくもはその間違いを否定した。

 銀色の玉を打ち込んでいるのは未来を予測し、どの台が当たるかを見極めるための過酷な修練であり、日々ぐうたらしているように見せ掛けて実は瞑想して精神統一を日頃からしているためなのだと声を高らかにして言いたい。

 と言うのが彼の言い分だった。

 要するに本当に駄目な大人なのだ。

 そんな彼は都内にある雑居ビルの一角に小さな探偵事務所を携えていた。

 探偵業でも仕事が舞い込み今日も一日忙しい毎日が始まる――――――――――



 「へぇ、最近のアイドルも色々闇深そう」



 鼻をほじりながら八雲はエンタメニュースを見ている。

 机の上は吸い殻が溜まった灰皿が置かれており、ビールや酒類の空き缶も散乱している。

 もう何から何まで駄目だった。

 一人で切り盛りしていると言うこともあるのだろうが、正直そこまで賑わっていないのが現状だった。

 依頼が来ても内容は浮気現場の証拠だとかペットを探すなどそんなものだった。

 別に出掛ける度に殺人事件が起きたり、誘拐事件が起きたりしてそれらを解決していくような立派な名探偵を目指している訳でもない。

 それが彼、神代八雲の日常だった。

 そんな日常まいにちを過ごしている八雲だが、その日常は呆気なく崩れ去っていく事になる。

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