第73話 残念女子の飲み会
ラベレ村の村長である来人の家。
ここに女達が三人集まり食事の準備を始める。
「ふんふふーん♪」
「ふふ、リディアさん、ご機嫌ですね」
「アーニャ姉だって喜んでる」
と言うシャニの尻尾は半日以上も動きっぱなしであった。
リディア、アーニャ、シャニの三人はご機嫌であった。
先ほど来人から久しぶりに愛の告白を聞いたからだ。
来人は今は自宅にいない。
新しい力である鉄壁を発動し村を以前の4倍まで大きくしたはいいが、彼にはまだやることがある。
敷地は大きくしたが、各施設は以前のままなのだ。
なので畑の拡張の指示や倉庫の建設などまだまだやることがあったからだ。
リディア達は来人を手伝おうとした。
しかし建設については彼しか出来ないことなので、来人は断ったのだ。
彼なりの優しさなのだろう。
なので三人は考えた。
自分達は愛する人に何をしてあげられるかを。
とりあえず来人が帰って来たら美味しい食事を用意してあげることにした。
彼女達は朝食と昼食は食堂で用意されたものを食べるが、夕食は三人で作り来人と一緒に食べることにしている。
最も楽しい時間の一つだ。
今日はある意味記念日だ。
新しい壁が建ち、そして来人が彼女達に愛の言葉と決意を言ってくれたことの記念日になったと彼女達は思ったのだ。
なので彼女達なりに作れる最高の食事を用意することにした。
それだけではない。おもむろにリディアが樽を取り出した。
「あれ? リディアさん、それは?」
「うふふ。実はね、とうとう完成したの! 見て!」
――パカッ
リディアが樽の蓋を開けると、そこにはなみなみと液体が入っているではないか。
果実の甘い香りと強いアルコールの香り。
「わぁ、お酒ですね」
「そうなの! ねぇ、せっかくだしさ、ちょっと味見してみない?」
「飲みます」
来人が帰ってくるまでもう少しかかるだろう。
三人は完成した酒の試飲会をすることに。
彼女達は全員酒が好きであった。
かつて王都にあった酒場には各々行きつけの店がありこんな感じで楽しんでいた。
リディアは思い出す。かつて酒を楽しんでいた思い出を。
『うぅ、ぐすん。なんで彼氏が出来ないのよー。そんなにおっきな胸が嫌いなのー。うぇぇーん。マスター、おかわりー』
『お客様、閉店です』
あんまり楽しそうな思い出じゃねえな。
リディアは酒は好きなようだが、そこまで強いようではなく、しかも絡み酒からの泣き上戸らしい。
めんどくさい飲み方なのである。
「うふふ、お酒なんて久しぶりですね。わぁ、すごくいい香り。
とアーニャは樽から酒をすくい鼻に近づける。
この酒は地球でいうところのシードルに近い。
リンゴを使ったワインのようなものだ。
原料はミンゴの実と水であり、樽の中でアルコール発酵させたのもので王都ではポピュラーな酒の一つだ。
アーニャは酒の香りを嗅ぎつつ、酒を楽しんでいた過去を思い出した。
『あははー、もう男なんかいらないのよ! 私は一人で生きていくんだもん! あははは! 私だけの人生に乾杯!』
『お静かに。他のお客様のご迷惑となりますから』
アーニャは笑い上戸であり、うるさいと出禁を食らったこともある。
普段は淑女のようだが飲むと性格が変わるのだ。
一緒に飲みたくないタイプだな。
「これは見事なお酒です。一流の
と今度はシャニが酒を取る。
なんか気取ったことを言っているが実は彼女は三人の中で一番お金を持っていた。
暗殺部隊のトップだったので、それなりの給料は貰っていたのだ。
シャニは思い出す。一人で王都で最も高級店であった酒場でゆったりと酒を飲んでいた思い出……なのだが、本人はあまり覚えていなかった。
なので私がシャニの思い出を語ろう。
『ゴクッ。ふぅ、美味しいです。もう一杯下さい』
『お客様、それ120杯目ですよ。もう店にある酒はそれが最後です』
『残念です。マスター、なんだかムラムラしてきました。この後時間はありますか?』
『帰ってくれ』
一番厄介なのはシャニであった。
うわばみの挙げ句、酒を飲むとエッチな気分になってしまう。
さらに悪いのはシャニは酒を飲むと一切の記憶を飛ばすのだ。
幸いなことにシャニの容姿はこの世界では受け入れ難いものであったため、純潔は来人に捧げられるまで守られたようだが。
恋愛についてもだが、三人はこんな残念な一面も持っていた。
この三人が酒を飲めばどうなるか?
何となく想像はつくだろう。
「ふふ、ライトさんが帰ってくる前に飲んじゃうのはちょっと気が引けるけどね」
「でも味見はしておかないと。美味しくないお酒を出してもがっかりされてしまうかもしれません」
「ライト殿のためでもあります。飲んでみましょう」
と三人は各々カップを手に取る。
そして軽くカップを合わせ乾杯をした。
ここで一つ説明しておこう。
この酒は地球でいうところのシードルに近い酒である。
しかし実は違ったのだ。来人は先日配偶者満足度を上げて、新しい力を手にした。
それが敷地内成長促進・改である。
本人は「改っていうくらいだから効果が上がっただけなんだろ」と大して調べることもなく効果をアクティブにしてしまった。
これが実は中々にとんでもない能力であった。
敷地内成長促進をアクティブにしておけば畑に蒔いた作物は翌日には収穫出来る。
さらに味も格段に向上するのだ。
ここまでは以前の力と同じである。
しかし敷地内成長促進・改になったことで作物だけではなく、味噌、醤油、アルコール発酵させる酵母の働きも活発化させることになる。
やろうと思えば1日で醤油や酒が出来てしまうのだ。
つまりこの酒はシードルではない。それ以上にアルコール度数の高いものであった。
そう、ガルヴァドスと同じ酒が出来上がってしまったのだ。
だが敷地内成長促進の効果により、使用した果物はとても甘い。
この酒はアルコール度数は高いものの口当たりがまろやかで甘く、ストレートでもクイクイいけてしまう危険なものだった。
そうとは知らずリディア達は酒を口にする。
――ゴクッ
「あ、あれ? 思ったより強いみたいだけど……」
「すごく美味しいですね。も、もう一杯飲んでみましょうか」
「私も頂きます」
味見だけだから……と二杯目の酒を注ぐ三人。
それがいけなかった。
二杯が三杯、三杯が四杯と重ねていくことで……。
「うぇぇーん。ライトさんが帰ってこないー。寂しー」
「あははー! もう三人で楽しみましょうよー! ライト様にも飲ませちゃいましょうねー!」
「ムラムラしてきました。エッチがしたいです」
リディアは泣き、アーニャは笑い、シャニはムラムラしている。
なんだこれ?
しかしアルコール度数が高かったことが幸いしてか、来人が帰ってくる頃には三人はヘベレケになっており、仲良く寝ゲロを吐いて眠ってしまったのだ。
その光景を見て来人は思う。
「なにこれ……」
そう思うわな。
家がゲロまみれになるという事件はあったものの、これをきっかけにラベレ村でも気軽に酒が飲めるようになった。
だが三人は起きた後ちょっとだけ来人に怒られてしまいしょんぼりするのであった。
◇◆◇
☆次の
☆総配偶者満足度:0/1000000
リディア:0/1000000
アーニャ:0/1000000
シャニ:0/1000000
※来人に怒られしまい、しょんぼりしたため配偶者満足度がリセット。
☆総村民満足:8561/1000000
☆現在のラベレ村
・鉄壁
・敷地面積:32000㎡
☆設備
・村長宅:シャニが住むようになったので三階建てに改装。
・家屋:30棟
・倉庫:8棟
・櫓:16基
・畑:8000㎡
・牧草地:5000㎡
・露天風呂:4つ
・水路
・養殖場
・兵器廠:金剛石の矢と槍
☆生産品
・ナババ:パンの原料。
・ミンゴ:果物。
・ヤマイモ:生食可。ねっとりしてる。
・茶葉:薬の原料。嗜好品としても優秀。
・カエデ:樹液が貴重な甘味となる。
・豆:保存がきく。大豆に近い。
・キャ采:葉野菜。鍋にいれたい味。
・牛乳:地球のものより濃厚。
☆総村民数195人。各仕事と人員配置。
・農業:雑草の除去、作物の収穫が主な仕事。
・狩猟:肉はまだ生産出来ないので狩りは継続。
・服飾生産:アーニャが担当。狩りで得た毛皮を服、寝具に加工。
・調理:朝、昼、晩、三食の食事作り。
・武器製造:ダイヤの刃を持つ武器の生産。
・探索:リディアが担当。森を探索し遭難者を見つける。他に村にとって有効な動植物がいたら取得、または報告してもらう。
・牧畜:シャニが担当。羊毛の刈り取り、牛の搾乳。
・研究:来人が担当。味噌、醤油など新しい調味料の製造や醸造など。リディア達も協力してくれる。
・養殖:デュパ担当
・村の整備:来人担当。
・伐採:来人担当。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここまで読んで頂き誠にありがとうございます!
お気に召しましたらご評価頂けると喜びます!
更新速度が上がるかも!? ☆☆☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます