第22話 新しい住人

「ライトさん、あれ……」

「あぁ。やっぱりいたんだな」


 森の中、俺達はようやく目的を果たす。

 とうとうリディア以外の生き残りを見つけたのだ。


「あ、あなた達、大丈夫!?」


 リディアは心配そうに二人に駆け寄る。

 しかしエルフ達は彼女の言葉が聞こえていないようだ。

 俺もリディアを見つけた時は同じような状態だった。


「うぁぁ……」

「うぅ……」  


 エルフ達はリディアの問いかけに応えず呻くばかり。

 その瞳には光が無く、まるで廃人のようだ。


「リディア、手を貸してくれ。拠点まで連れてってあげよう」

「は、はい……」


 俺は男を。リディアは女のエルフを背負い森を出ることにした。

 森を歩きながらもリディアが話しかけてくる。


「あ、あの……。私もこんな感じだったんですか?」

「あぁ。でも拠点で1日過ごしたら意識を取り戻したんだ。きっと彼らも大丈夫さ」


 リディアのステータスは最初は呪われた状態だったんだよな。

 きっと彼らも呪いの効果で自我を失っているのだろう。

 何故かは分からないが、拠点で一定時間過ごせば呪いが解除出来るらしい。

 彼らも1日寝かせていればきっと良くなるさ。


 そして歩くこと2時間。

 俺達はようやく森の外に出る。

 体力は上がってはいるが、人を背負っての行軍だったのでいつもの倍の時間がかかった。


 拠点に戻り、エルフをリディアが使っていた小屋に寝かせる。

 毛皮で作った毛布をかけておいた。

 

 リディアは心配そうに二人を見つめている。


「大丈夫でしょうか……?」

「まぁ今は待つしかないさ。ならさ、ちょっと手伝って欲しいんだ」


 彼らが回復するには時間がかかるはずだ。

 なので今後に向けて、今まで集めた資源を確認することにした。

 今助けたのは二人だけだが、これを機に生き残った者を見つけられるかもしれない。

 拠点に住む者、すなわち村民が増えれば彼らを食わせていかなければならない。

 そのためにも今の持ち物、資源を確認する必要があるだろう。


「なるほど。分かりました」


 リディアも納得してくれた模様。

 倉庫として建てた小屋から今まで狩ったり、採取したものを並べていく。


・毛皮25枚:様々な獣から剥いだ物。保温性が高い。

・燻製肉:200キロ程度貯蔵してある。リディアの精霊魔法により腐敗を遅らせている。貴重なタンパク源。

・ミンゴのジュース:樽に一杯程。ミンゴを絞り水で薄め、さらに細かくした茶葉を混ぜている。

・種芋:十個程度保存してある。味はヤマイモに近い。

・ナババの実:100キロ程度貯蔵。この世界のパンの原料となるが、加工に時間がかかるらしく実のまま保管してある。

・塩:少量

・カエデの樹液:2L程

・毛皮の下着:ライト、リディア共に三着ずつ。

・毛皮の布団:敷き布団、掛け布団共に四対ずつ。 

・竹槍:20本。地球の竹より頑丈であり、そう簡単に折れることはない。

・弓:リディア作成。現在庫は5丁。

・矢:リディア作成。300本。


「ず、ずいぶん増えましたね」


 とリディアは驚いているが、俺はまだ足りないと思う。

 これから増える人数を考えると武器も食糧も、もっと必要になるはずだ。

 それに拠点に住む住人……俺の能力からすると村民になるのか?

 ともかく人が増えるのであれば拠点も広くする必要がある。

 今の広さでは、受け入れられて後数人といったところだ。


「まぁ、今は助けたエルフが意識を取り戻してからだ。ほら、そろそろ夜が来るぞ。準備しておかなくちゃ」

「は、はい! でも一昨日から異形の数が減ってますよね。何故なんでしょうか?」


 そう、リディアの言った通りなのだ。

 理由は分からないが、俺達を襲う異形の数が減っている。

 それも日を追う毎に。

 

「何か理由があるのかもね。とにかく今は備えよう」


 異形達を撃退するため、リディアはいつものように小屋の屋根に上り弓を構える。

 さぁ、いつでも来い……と気合いを入れていたのだが。


「な、なんか来ないね」

「ですね……」


 いつまで経っても異形の襲撃は来なかった。

 拍子抜けだ。このまま一生出てこなくてもいいぞ。  

 

「ふぁー。なんか気が抜けちゃったな。多分今日は大丈夫だろ? ん……?」


 あくびをしつつ伸びをすると、今夜が新月だということに気がついた。

 この世界の月も30日周期で満ち欠けする。

 そういえば満月は2週間前だったよな?

 異形の大群が現れたのもその時期だ。


 だとすると……。

 いや、その可能性があるな。

 リディアには話しておこう。


 二人で焚き火を囲みつつ、気付いたことを話す。

 

「あのさ、もしかしたらなんだが異形の数について分かったことがある。あくまでも推測だ。だが聞いて欲しい。

 恐らくだが月の満ち欠けで異形の数が決まるのかもしれない」

「月ですか? 今日は新月ですよね。つまり新月だと異形は現れなくて……」


「そうなんだ。逆に満月だと異形の数は爆発的に増える。つまり今日から2週間後にはまた大群が襲ってくるってことだ」


 まだ推測の粋は出ないが、明日から日を追う毎に異形の数が増えれば俺の考えは正しいと判断出来るだろう。


「分かりました……。なら明日から気をつけないといけませんね」

「だな。まぁ、今日はもう襲撃の心配もないしさ。ゆっくりしないか? 風呂にでも入ってさ」


 すでに焚き火の中ではたくさんの石を焼いてある。

 リディアは俺の提案を笑顔で受け入れてくれた。


 水を張った湯船に焼けた石を次々に放り込むと風呂はすぐに沸いた。

 二人で星空の下、ゆっくりと風呂を楽しむ。


「ふぅ、気持ちいいです……」

 

 リディアは俺に体を預けてくる。

 いつもだったら風呂に入りつつ一戦始まってしまうのだが、今日は助けたエルフ達がいるからな。

 ちょっと自粛しておくことにした。

 

「しないんですか……?」

「うーん、今日はちょっとね。あの人達が起きてきたら恥ずかしいじゃん」


 と言うリディアにガッカリされた。

 うーん。俺史上、最もエロい彼女が出来てしまったな。

 しょうがない。少しだけでも満足させてあげようかな。


「静かに出来る?」


 ――コクッ


 嬉しそうな顔をして頷いてくれた。

 本番こそしなかったが、お風呂の中でイチャイチャを楽しんでいると……。


 ――ピコーンッ


 おや? この音は。

 リディアの村民満足度が上がったかな?


【対象???と???が一定時間領域内に滞在しました。両名を村民にしますか?】


 違ったようだ。もう呪いが解けたのか。


 俺はYESと念じつつ、リディアとお風呂の中でイチャイチャするのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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