第83話 ログイン後の変化

 前から構想を練っていた衣装を形にし、あとはモーションを設定する所まで進めた後に異世界へのすゝめにログインした。

 ちなみにどんな衣装にしたかというと、ハロウィンだし橙色を基調としたホットパンツにコウモリ羽と悪魔っぽい尻尾、紫色の裾が破れた感じのシャツにワンポイントでジャックオーランタンというものにした。



 ログイン出来たことを匂いや肌に感じる暖かさで確認した後に目をゆっくりと開けた。…まさか恋人達全員が同じベッドで寝ているとは思わなかったなぁ…いるとしたらイーリスとアルルくらいだと思ってたけど、なんだかんだ寂しがらせてしまっていたのかな。ただ、むせ返るような女性の匂いが凄いんだけど一線は超えてないよね?知らない間にされてたらショックだよ!?女性同士でも僕としてはちょっとショックを受けちゃうくらいメンタルダメだよ…仲いいのは嬉しいけどそうじゃないというか。まぁ…逆視点から見たらハーレム状態の僕が何言ってるのってなるんだけどさ…


 時間を確認するとまだ早朝だったのでみんなを起こさないように部屋から抜け出した。庭に向かう途中、すでに活動を開始しているメイドさんがお帰りなさいって言ってくれて、あぁ戻って来たんだなぁって改めて実感した。こういう何気ない挨拶とか心が休まるんだよね。向こうの世界だと声かけるだけで不審者に思われないかビクビクするって聞くから、この世界では素直に受け取れるのは嬉しいな。


 庭に出ると、ログアウトする前とずいぶん様変わりしていた。こちらの世界ではなんていう花なのかは分からないけれど、秋桜と呼ばれるコスモスと彼岸花が池の周りに咲いており、池の近くに植えられた木からモミジの様に赤く染まった葉が風に舞う景色はすごく幻想的だ。他にも秋にふさわしいコントラストの色とりどりの木々や花があるのだけど、僕がいない間にここまでつくったんだね、すごい…


「どう…かな?驚いてくれた?」


 急に後ろから声をかけられてビクっとして振り向くと、まだ眠たそうにしたアルルが立っていた。


「すごく驚いたよ、後ろに立っていたことも含めて…。とても頑張ってくれたみたいだね。」


 僕がアルルに感謝しながら頭を撫でると目を細めながら頬を染めて嬉しそうにした。


「そういえば、朝起きたらみんなが僕のベッドで寝てたんだけどずっとそんな感じだったの?それと…寝てる間に手出されてないよね?」


「私は魔力補充で抱き着いて…たよ?それを見てみんながくっついてきた…かな?みんな欲求があった…けど我慢してた。」


 みんな自制心があるみたいでよかった…1人がしちゃうとなし崩し的になっちゃうもんね。ただ、このイベント期間中に身内だけでの結婚式を挙げて関係を進めないとだなぁ…我慢しすぎもよくないし、何より不安に思っちゃうだろうからね。


「アルル、教えてくれてありがとね。まだ外は冷えるしこれを羽織って。」


 寝間着のまま出てきていたアルルに外套を羽織らせた。


「…あったかい。ありがと。」


「早朝だし、ここは人通り少ないけど寝間着姿は見せるものじゃないからね。風邪引かれたら困っちゃうし。」


 アルルに注意すると何か考えるような仕草をしたあとに悪戯っ子のような笑みを浮かべ


「独占…欲?」


 うん、やっぱそう思うよね。その通りなんだけど…恋人のプライベート姿とかお披露目はしたくないじゃない?


「そうだよ、アルルは僕の恋人なんだ。寝間着姿を他の男性に見られたくないって思うよ。」


「うれ…しい。私をずっと捕まえてて…ね?」


 僕達は庭園の風景を眺めながらのんびりとした時間を過ごし、日が昇って来たので屋敷へ戻った。



「あ!やっぱりアルルちゃんと一緒にいたー!ワタリさんお帰りなさい!いつの間にか部屋から居なくなっててビックリしましたよ…」


 屋敷に戻ると着替えを済ませたラヴィ、イーリス、ラナさんの学生3人、そしてジェミとリディさんが出迎えてくれた。ちょうど外へ探しに行こうとしていた所みたいだ。


「ラヴィ、そしてみんなただいま。ぐっすり寝ていたから起こすのも悪いと思ってね。朝食を取り終わったら今後の事について決めようか。流れ人がどう動くかも予測できるだろうし。」


「そうね、住民板を見る限り神託で流れてきたのはまた人数が増えるってことかしら?」


 唯一住民板を見れるリディさんが教えてくれた。フレンドを介した招待枠の事かな。


「そのあたりも含めて、だね。あとはまぁ…みんなに色々と我慢させちゃってたからそれを解消できるよう身内だけの式を挙げるよ。」


 そう言われてみんな顔を真っ赤にて顔を俯かせた。


「あれだけ部屋に女の子の匂いを充満させちゃってたもんね…色々としなきゃいけない事が重なっていたけど、我慢させすぎた僕にも責任あるし…式を挙げる前にやっちゃうのはどうかと思っていたからね…」


「いえ!ワタリさんが私達の事をしっかりと考えてくれていたのは理解しています。大事にしてくれてこちらこそ嬉しいです。」


 ジェミが答えると次々みんなが答えてくれる。


「私も立場がある方は周りへの配慮が大事だと思いますわ。だからワタリさんの行動は責められることではありませんわ。」


 ラナさんが僕の行動を肯定してくれる。


「あの日助けられてからワタリさんの事を考えない日はありません!これからもずっとお慕いしております!」


「…ずっと一緒。ワタリの世界に行けないのが残念…」


 ラヴィ、イーリスが続く。向こうの世界、AIは発達しているけれどアンドロイドのように義体はないからね。人の仕事をこれ以上減らしたら問題な面と人口低下につながるかもしれない倫理的な問題とかで。


「ワタリ、モテモテね?私もこれからずっと一緒にいるわ。色々世界を見て回りましょう。」


 リディさんが答えてくれた。この世界は広いし魔国にもまだ行ってないもんね、すごく楽しみだ。


「好き…だよ?私を好きになってくれてあり…がとね?」


 アルルは直球だなぁ…想いを伝えるって難しいのに簡単に行えちゃうのがすごい。


「みんな、ありがとう。何かと迷惑かけるかもしれないけれどこれからもよろしくね。」


 そう言い僕達は抱きしめ合い、行動で想いを伝えあった。



 食事の準備が出来たことを伝えにきたメイドさん達にばっちり見られていたことに後から気づき、みんなして悶えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る