第66話 屋敷の維持に必要なもの

 軽く眠った後に食事を食べ終わると約束の時間が迫っていた。僕達は応接間に移動してラナさんが来るのを待った。


「イーリスさん、ラヴィさん午前中ぶりですわね。そして…ワタリさんお久しぶりですわね。」


「ラナさんお久しぶりです。少しやつれた感じがしますが大丈夫ですか…?」


「思った以上に流れ人の人達が自由奔放すぎて対処が大変だったからでしょうか…」


 応接間に入って来たラナさんは久しぶりに見たけど相変わらず綺麗で佇まいが凛としている。ラヴィとイーリスも同じ貴族なんだけど、とっつきやすいんだよねこの2人は…つい貴族って忘れちゃうほどに。やっぱり始まりの街だから流れ人の影響が大きいんだろうなぁ。そのノウハウが他の街に生かされているんだろうけど…ご苦労様です…メイドさんが紅茶を用意してくれて一息ついた後に本題へ入った。


「それじゃ気になっている事から話を進めるわね。屋敷は今施工中で、今なら要望を追加できるけれど何かあるかしら?受け渡しに関しては…条件もあるけれどだいたい2か月後って感じかしら。」


 ん?受け渡しに条件あるの!?あと…要望かぁ屋敷として必要な所は多分あるよね?あ、そうだ。


「お風呂は広くしてほしいかな…のんびりと入りたいし。あと、屋敷を管理する人材や庭師辺りが気になります。それと条件って…?」


 僕が尋ねるとラナさんはほんのり頬を赤く染めながら言った。


「えっとね…私から言ったわけじゃありませんからね?条件は私も一緒に住まわせるという事です。今年で学校卒業しますしワタリさんの傍にいたほうが色々と学べますから。それに王家から外れますがジェミニ様がと繋がりが持てますので。」


 それを聞いてラヴィが割り込んできた。


「ラナさん、それ建前でしょ?もっと素直になろ?」


 ラヴィに突っ込まれてラナさんは更に顔を真っ赤にさせた。


「ですから、その…私もワタリさんをお慕いしていますの!一緒に居たいのです!」


 お、おお…すごく勢いがあるけど告白…なんだよね?僕もラナさんにはお世話になったし好意はあったんだけど、そこまで慕われているとは思ってもなかったからすごくビックリしている。僕がこうやって成長できたのにはラナさんが練習に付き合ってくれていたってのも大きいからホント感謝だよ。


「ラナさんやっと素直になれたね!」


「ほんと手間のかかる…。こないだの学校での話のが…」


「イーリスさん、それは言ってはダメです!あぁぁ…恥ずかしいですわ…」


 普段見かけないラナさんの姿は新鮮で可愛らしく見える。


「えっと、僕としては嬉しいんだけど…僕、何人も嫁になる人いるんだよ…?自分だけ見て欲しいってならない?」


 やっぱり人って嫉妬とか持っているからね。僕だって好きな人が他の人に靡いているのみたら嫌だし…独占欲でちゃうよね。だからそれを飲み込める女の子って凄いと思う。ジェミ、リディさん、イーリス、ラヴィにほんと尊敬するよ。


「元々、貴族の女性は好きな相手と結ばれることは稀ですわ。政略結婚や妾など様々です。個人の感情よりも、少しでも家に有利になるように求められるの。だから今回の話は渡りに船、好いた相手と結ばれて家の為にもなる、最良のご縁ですわ。それに、ラヴィさんもイーリスさんも学友で気心しれていますし、他の方々もワタリさんが好きになった相手ですから問題ありませんわ。…私だけを見てもらいたいという感情がないわけではありませんが、ワタリさんは私だけで縛れる器ではありませんから。」


「そうなんだよねラナさん!ワタリさんは自由に好きな事をしている姿がとても素敵なんですよ!雁字搦めにしてはもったいないですし…素敵な部分を皆さんで共有したいです!」


「…1人では体がもたない。」


 ちょっ!イーリス何を言うんだ!僕はまだしたことないよ!


「え、イーリスちゃんそのあたり詳しく聞きたいです!」


「ラヴィさん落ち着きなさい。イーリスさんは冗談を言っているだけですわ。」


「…匂いだけでお腹いっぱい。」


 そういう意味なのか!ビックリした…


「と、とりあえず条件については大丈夫だよ!使用人とかの人材について聞きたいんだけど…屋敷の規模が分からないからどれくらい必要なのかも知らなくて…」


「そうですわね。執事や使用人、庭師が必須ですが…ワタリさん的には若い男性が混ざるのは好ましくなさそうですわよね…ジェミニ様もいらっしゃるとなると下手な人選もできませんし。」


「一応ジェミの付き人が一緒に来てくれるみたいだから身の回りは問題ないと思うよ。」


 僕が答えるとラナさんは思案顔で答えた。


「そうですわね…屋敷の規模からするとメイド、料理人、庭師辺りは必要かしら。両立できる人材がいたらある程度自由が利く配置が好ましいのだけれど。こちらで応募しても大丈夫かしら?」


 流れ人の僕のお世話してくれる人なんて、募集しても来るものなんだろうか…僕が不安そうにしているとラナさんが安心させるように言ってくれた。


「ワタリさん、あなたは知名度も功績も素晴らしいのですよ?募集かけたらそれこそいっぱい来ますわ。アルファス家、レグルス家、ノルニール家の中からも募集しますし経歴も審査しますから大丈夫ですわ!」


 沢山応募くると審査が大変そうだけど3家が合同で調べるなら安心なのかな。秘密裡にアリエス様とか干渉してきそうだけど…シスコンだったし。あと僕が面接に関わると知り合いが来ていた場合に優遇しちゃいそうだから完全に外れてたほうがいいもんね。


 その後、屋敷の間取りと庭園をどうするのか話を咲かせて解散した。2か月で屋敷かぁ。その間何をするのか結構迷うよね。どこか観光できそうなところでも聞いて歩くのもいいかも。

 香水を試してくれてるテオにも会いに行って話を聞きたいけど、アルファスまでは馬でも時間がかかるから往復を考えると時間がもったいないもんね。転移が実装されたら一気にやることが増えるなぁ…

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