第22話 戦いは準備の段階で決まる
大規模戦が今日から始まる。街中で冒険者、領主の私兵がひきめしあっている。僕はこの2日間、錬金による調合をしていた。自分用にある程度毒液状態で確保しといて解除薬は薬師ギルドに卸してきた。途中で素材が足りなくなったから追加で採取に行ってきたんだよねぇ…今回は護衛を頼まずに一人で行ってみたけど、魔物に全然会わなかったし。多分、大規模戦だから魔物が引っ込んでるのかな?
今回は作れば売れるという状態だったから頑張ったよ…当分は自分用でいいかなってくらいお金も貯まったしね。1個500ユルだけど200個作れば100万ユル、金貨100枚だからね。材料は街の外でタダで手に入るから濡れ手に粟状態だったよ!
一応、イベント発表されたあとすぐにザインさんPTとラナさんに連絡は入れといたんだよね。別れ際に魔物の動向に気になっていたらしいし何か掴んだ可能性があったから。
結果は思った通り、この街周辺の魔物の他にオーガがいたらしい。しかもその個体に命令されているのか周りの魔物は暴れる素振りや集団から抜け出すなどしなかったという。これってスタンピードじゃなく意図的な襲撃になるよね?ギルドも今までにない状態って言ってたし。
その時点でオーガが洗脳しているのかなって思う。もしかしたらリーダーであるオーガを倒したら統率とれなくなって散り散りになる可能性もあるけど、イベント始まってからじゃないと分からないか。
ザインさんからもたらされた情報で南以外の3方向に部隊を展開しているのが分かったし、南側が空いているということでラナさんに連絡を取った。冒険者ギルドから情報が入っていると思うけど、上下関係とか利益やらの縛りがあって判断遅れられても困るからトップに教えるべきだよね。
連絡を取った時、ラナさんはまだ情報が上がってきていなかったから助かると言っていた。なんか、前に教えた薬草栽培が軌道に乗ったので、回復薬に関しては問題ないらしい。私兵と一緒にラナさんも来たがったが、さすがに領主に止められたらしく愚痴を送ってきた。一人娘なんだし仕方ないよ…現場に出る大切さもあるけどさ。
こうして僕の準備期間は過ぎて行った。現在、僕は西門の城壁で草原を眺めている。ひねくれてなければ西北東で中央の北に指揮官が待機すると思うんだけど…北と東は流れ人が多いらしい。
あと、遠距離攻撃としてボウガンを作っておいたよ。飛距離の問題を解決するために射出する際に風魔石による後押しをすることで山なりじゃなくまっすぐ相手を狙えるようにした。弓の名人とかFPSが上手いってわけじゃないから当てる工夫しないとね!
矢に毒や麻痺を付与することも出来るし結構使い勝手がいいんだよね、まだ魔物に使ったことないけど…濃度を高めたものなら耐性高くてもある程度効くよね…?不安になってきた…ほんとはリディさんみたいに魔法の矢で攻撃出来たらいいんだけど、生産職はそれだとダメだからなぁ…
「狼煙が見えたぞ!来るぞ!」
誰かが叫んだ。その声を聴き部隊が展開していく。
西門には領主の私兵がといくらかの流れ人が参加している。西は見通しが悪く状態異常が混合なため参加者が少ないようだ。
大丈夫かな?
「西は兵数少ないですが十分に鍛えた部隊なので何事もなければ大丈夫ですよ?」
いきなり後ろから声がした!って、ラナさん付のメイドさん!?
「え、え?あれ、なんでメイドさんがここに…?」
「お嬢様からワタリ様の護衛を申し付けられておりますので。それと私の名前はロエナと言いますのでよろしくお願い致します。」
「ラナさん…嬉しいんですけど僕は流れ人なので、ロエナさんは自分の命を優先してください!」
なるべく死なない様に立ち回るけど、万が一ってのもあるからね…
「それがワタリ様の意思なら尊重させてもらいます。不確定要素があるとすれば流れ人の動き次第ですね。」
城門から見てると分かりやすいんだけど、協力して倒そうってわけじゃなく戦功狙いらしく、私兵の方々の統率が取れた動きを阻害している。
「あー…確かにあれじゃ陣形に穴が出そうですね…なら僕は遠距離から崩れそうな場所を狙って足止めしてみます。」
「魔物もリーダーのオーガ以外に細かな命令を出している個体も見受けられますね。私が指示しますので、狙えそうならお願いします。」
それは助かる、いくら城門の上からと言っても奥は見通しの悪い森で戦場は眼下に広がっているから一人では見きれないし…
「敵の陣形は魚鱗だったのが私兵と当たって鶴翼になっていってますね…私兵も対応していますが流れ人が邪魔で片方押され気味になっている…」
「敵の判断が速いですね、囲まれると籠城している街にも被害出ますから…いました!」
ロエナさんが指さすが僕にはどれか分からない…方法はあるんだけど、先に謝っとこ…
「ロエナさんごめんなさい!そのまま命令だしている個体に指さしててください!」
僕は謝ってからロエナさんの後ろに回り、抱き着くようにしてからボウガンで指をさしている個体に照準を合わせる。矢はたっぷりと付与した毒矢にした。
僕の腕の中でロエナさんが狼狽しているが今は我慢してもらおう。…よし!当たった!
「次の個体の指示をお願いします!」
僕が言ったことでロエナさんは覚悟が決まったのか次々と命令を出している個体を発見し、僕が矢を射る。
相手の動きが乱れ、私兵が掃討を開始し、それに釣られ流れ人も勢いを盛り返した。僕はもう大丈夫だろうと息を整えロエナさんから離れる。
「すみません、こうでもしないとどの個体か分からなかったので…」
「いえ…最初は動揺してしまいましたが、不純な動機ではないことは伝わっていましたので大丈夫です…」
ロエナさんが少し顔を赤らめ、恥ずかしそうにして答えた。
「しかし、一度も外さずに当てるとはお見事です。」
「いや…これくらいはしないと戦闘で貢献できませんので…生産職ですので攻撃力で考えると足手まといなので…」
「自分の長所と短所が分かって、しっかり役目をこなしているのが凄いんですよ。お嬢様が気に入るのもわかります。見た目は可愛らしいのにかっこいいですよ。」
僕は恥ずかしくなって戦場に目を向けた。もう西門は大丈夫そうかな。結局オーガはここに来なかったけど…他の場所に援護に向かうか。
流れ人にはかなり死傷者がでたが私兵の方々は軽傷で済んだようだ。さすが訓練を積んだ兵士だ。しかし消耗は激しいようで、兵達は西側で残党討伐と後始末をするようだ。
僕とロエナさんは共だって北側の支援に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます