第4話 門前での出会い

 転生したのかな?

 急にまぶしくなって目が開けられないんだけど、風が心地よくてこのまま寝たくなる。現実では少なくなった自然の匂いがするし…

 あたりを見回すと少し丘になっている草原に横たわっていたみたいだ。


「これは全然ゲームに見えないね…向こうに見えるのが街で反対側は森になっているのか」


 なぜ初期位置が草原なんだ…って思ったけれど、いきなり大勢の人が街中に現れたら騒ぎになっちゃうよね。それに、街中じゃないからこそこの景色をみて別世界に来たって考えを強くしているのかも。とりあえず街に向かってみるかな。

 麻布一枚だけだから魔物と会ったら危険だし急がないと。



 街に入る門の近くに来てみたけど、入口が複数あるんだね…良くある物語的に考えると貴族用と商人、一般人用って思うけど転生組はどうなるんだろう…

 身分証を提示する必要があるよね?でも持ってないから仮身分証を発行してもらって街中で作るのかな?とりあえず並んでみて考えるか。他のプレイヤーが見えないしもしかしたらチュートリアルで別れているのかもしれない。


「すみません。ここが最後尾でしょうか?」


 体格が良く、はちきれんばかりの筋肉をした青年に声をかけた。


「あぁそうだけど…おまえそんな恰好で街から出てたのか?

危険だぞ?…商人にも見えないし、貴族のお遊びってわけじゃなさそうだがナニモンだ?」


「ちょっとザイン!そんな高圧的な態度とったら答えたくても答えられないじゃない。しかもこんな幼い女の子に向かって!」


「だがリディ、おかしいだろ?一人で外を出歩くには軽装すぎるし!

それに依頼のこともあるだろ。」


 やっぱりこの恰好で外にいるのはおかしいのか…周りを見ても馬車に乗っている商人以外は確かに強そうな装備しているけど…そして僕は幼くもないし女の子じゃないんだけど!!

 この言い争っている二人を一人はまたか…みたいな顔して見ているな。仲良さそうだし恰好からして冒険者仲間なんだろうな、苦労人っぽいけど。


「教会から神託があってな、お前みたいな世間しらずっぽい軽装の者がこの付近に現れるってあったんだ。だから俺らみたいな冒険者が多く駆り出されてちゃんと街にこれるよう誘導し、人柄の確認をするって話だったんだ。全然現れなくて街に戻ろうとしたら列の後ろのやつがまさか流れ人とはな。」


「そうだったんですか…ある意味タイミングが良かったんですね…一人だったらどうしていいか分からなかったと思いますし。

 ちなみに僕は男ですよ?それに20歳だからそこまで幼くもないと思いますが。」


「「「はぁぁぁ!?男!?」」」


「え、えぇそうですよ。」


「ちょっとまって…え、こんな可愛い顔して男だなんて。」


「というか20歳ってリディの2歳下だろ?リディより女っぽいんだが。」


 苦労人の青年が重要そうな情報をスルーしている二人を諫めている。


「とりあえずお互い自己紹介をしよう、俺はアグス。冒険者でこの2人とPTを組んでいる。魔法剣士で回復も少しだけ出来る。」


「俺はザインだ。一応このPTのリーダーをしているが見ての通りそんなの気にせず冒険者を楽しんでいる。重戦士で攻撃と盾を兼任している、よろしくな。」


「私はリディ、魔弓士よ。矢を弓で作ったりしてどんな敵にも優位に立てる構成ね。」


「僕はワタリです。今日この世界に転生してきました。一応希望は錬金術師ですが体験して適正を見たいと思っています。」


 キャラ作成時になかった職業だけど上級職なのかな?親切そうな人達でよかった…

それに流れ人に関しての話を聞けたし。


「意図せず依頼終わってよかったじゃない、しかもこんな可愛い子だし。」


 お姉さん…後ろから抱き着かれるのは嫌ではないけど恥ずかしい…しかもたわわだから当たるんだよね;


「えっと…依頼っていうのは流れ人の誘導と人柄ってことでしょうか?でも僕は大勢いるうちの一人だから意味がない気もしますが…」


「そう思うかもしれないが俺達以外にも依頼受けているしな。それに各PTが情報を共有することによってどんな様子かが分かるってもんだっと、俺達の入場番が来たぞ。」


「それじゃまたねワタリ!あなたとてもいい匂いするからまた抱き着かせてね!」


「ほどほどにしろよリディ…それとワタリ、門番には流れ人だって言えば通じるぞ。」


 ほんとアグリさんお疲れ様です…というか鼻息荒かったのは匂い嗅いでたからなのか…


「ようこそアルファスへ、身分証の提示をお願いします。」


「すみません、今日この世界に転生してきて身分証がないのですが大丈夫でしょうか?先ほどの冒険者の方に流れ人って言えば大丈夫と教えてもらったのですが。」


「あぁ、流れ人か!領主から通達きてるから大丈夫だぞ。ただ仮身分証を発行するために保証金を貰うのだが。ちなみに身分証はギルドで作ってくれる。登録後にちゃんと保証金は返却するぞ!」


「えっと…これで足りるでしょうか?」


「十分すぎるな、この銀貨1枚で大丈夫だぞ。念のため言っておくが街中で問題おこすなよ?あとは夜になると門を閉めるため基本出入り不可だ。」


「わかりました。あと僕は錬金術師志望なのですが身分証は冒険者ギルドのが良いのでしょうか?」


 ちょっと気になったんだよね、身分証になるなら登録箇所は1か所だけになるのかとか。多分複数大丈夫だと思うけど、錬金術のギルドがあるならそっちで登録したいし…


「その場合だと錬金術師のギルドが良いぞ。生産職の人は無理に戦わなくてもいいからな。ただ、採取依頼を頼む場合に利用するし後から見に行くのもありだろう。

錬金術師のギルドはちょっと入り組んでる場所にある。ここが南門、んで大通りを道沿いに行くと噴水広場、東に向かうと冒険者ギルド、西に向かうと商店街があってさらに進むと貴族街になるんだがその境目の路地を北にいくとギルドが見えて来るぞ。もっかい言ったほうがいいか?」


「えっと…多分大丈夫だと思います。迷ったら人に聞きますし…丁寧にありがとうございます!」


「これが俺の仕事だしな。それではようこそアルファスへ!」


 僕は門番さんに別れをつげ噴水広場を目指した。ほんとNPC達、AI達はすごいなぁほんと人に見える。あそこなんて井戸端会議してるよ!こーいう日常ってなんか素敵だなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る