原初の星


 原初の星。


 それは最初の生命体が住まう場所。


 彼らは誘き寄せた銀河を星の核に捧げることで、その寿命を引き伸ばしていた。


 そんな永遠とも呼べる繁栄の中で、次なる銀河が原初の星に引き寄せられていた――


 巨大な月、その一部が空にあるのが当たり前の時代、メテンプリコーシス星の若い王女が神の声を聞いた。


『原初の星に存在する残虐非道な者たちのせいで世界に危機が訪れている。助かりたければ仲間を見つけ、原初の星に築かれた繁栄の祭壇を破壊せよ』


 王女は反対する両親を説得し、星の民に神の声を伝えた。


 道のりは険しかった。


 彼女を阻む敵が現れ始めたからだった。しかし、敵の妨害の度に仲間が増え、ついに繁栄の祭壇へ辿り着いた。


 そしてついに、死闘の末、彼女たちは繁栄の祭壇を破壊することに成功した。


 王女は崩れゆく祭壇の眺め、犠牲になった仲間たちの為に涙を流す。


 生き残った仲間に押し込められるように脱出船に入ったころ、祭壇の奥深くから煌めく粒子が宇宙へ放たれた。


 残忍な敵の最後は意外にも美しいものであった。


 皆がその光景に心奪われていた。


 煌めは凄まじい速度で宇宙に広がっていく。近くにあった彼女たちの故郷など、覆い尽くされるのに一瞬もかからなかった。


 王女たちの脳裏に故郷の家族たちが崩れ、消え去っていく映像が流れ込んできた。


 王女の口は怒りに歪んでいく。


 その時、再び神の声が聞こえた。今度は脱出船にいる全員に。


『よくやりました。ようやく子を成せる。ありがとう、ありがとう私の救世主たちよ』


 神の声はさらに続く。


 煌めきはすべてを粒子に分解するもの。それは宇宙の終わりで始まり。


 寿命を迎えた原初の星は宇宙のすべてを分解し、その半分を分かち合う原初の星を2つを外つなる世界へ産み落とす。


 そしてそれぞれが異なる宇宙を作り出し、死を迎えると共にまた新たな原初の星を産み出すのだと。


『ありがとう』


 神、いや原初の星の感謝に王女たちは絶望した。


 煌めきに飲み込まれた星々、それらに生きるものたちの崩壊していく様が、王女たちにありありと伝わっていく。


 幸いなのはその誰もが最後の瞬間を理解していなかったことだろうか。


 もはや誰もなにも言わなくなった。


 静寂に包まれた死に際、原初の星は王女たちを哀れに思った。


 そして決めた。


 我が子の片方を彼らの故郷として産み出そう。何もかも同じにし、王女たちを帰してあげよう、と。


 感謝と贖罪を込めて。


 原初の星は満足して眠りについた。


 だが最後の瞬間、ふと思い出した。自分は産まれたときから王女たちを知っていたということを。


 それはもう何にも伝わらなかった。

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