第51話 王殺し

「ふぁ〜あ。それで?僕は何で此処に呼ばれたんだい?」


パーが眠たげな目を擦りながら聞いてくる。

彼女は普段着ているローブではなく、胸元にでかでかと天才の二文字が刺繍されているパジャマを身に付けていた。


こんな馬鹿っぽいパジャマ、何処で売ってるんだ?


「ああ、これかい?これは僕のお手製さ。良いだろう」


俺の視線に気づいてか、パジャマの胸元を左右に広げ、見せつける様に自慢してくる。

こいつの感覚だけは本当にわからん。


「おりょ。ティーエちゃんもかい?」


光の輪が地面に現れ。

その輪が迫り上がって中からティーエさんが姿を現した。

どうやらまだ就寝してはいなかったのか、ティーエさんは何時ものローブ姿で現れる。


「御機嫌よう。皆さん」


人の事いい様に誘導しておいて、ご機嫌も何もあったものでは無い。

だが今はそれは置いておこう。


「2人を呼んだのは実は――」


「愛のためです!!」


「愛のためなのかい!?まあそれならしょうがないね!」


人の発言を遮ってフラムが馬鹿な雄叫びを上げたかと思うと、パーが面白がって乗っかり出す。

フラムは兎も角、こいつは寝起きだってのに何でこんなにテンションが高いんだ?


「フラム、一々話を遮んな。そしてパーもいちいち乗るな」


フラムの頭にチョップを入れると、何で私だけと恨めし気に睨んで来るが無視する。因みにパーにしないのは、やると後々レインが怖いからだ。


「魔法国のお姫さんを帝国に堂々と嫁がせたいから、力を貸して欲しい」


「堂々と……ですか」


ティーエさんは眉を顰め、訝し気に聞いて来る。

彼女の中で戦争は避けられないと結論付けられている為、その表情は何言ってんだこいつ?的なものになっていた。


「ええ、堂々とです。戦争は起こさせません」


「おおー、熱い意気込みだねぇ。ところで戦争って何の話だい?」


「今帝国と魔法国との間に戦争が起きる瀬戸際なんだよ。其れを止める為、魔法国の王様の病気を治す」


「たかしさん、大変言い辛いのですが。例え私が覚醒したとしても、タイランド陛下の御病気を治すのは難しいかと」


勿論それは理解している。

そもそも病気が魔法で治るなら、ティーエさんだって俺を誘導するなんて回りくどい真似はしなかったはずだ。


「そうですね。ティーエさんの言う通り、普通にやったんじゃ治すのは無理かと。だから荒療治でいきたいと思ってます」


「荒療治、ですか?」


「ええ、ちょっと無茶します」


それも相当の。

何せ――


「王様には死んで貰う事になりますから」


「「えええええぇぇぇぇ!!!」」


俺の発言にフラムとアランが驚愕の叫びを上げ。

薄暗い牢獄に二人の大声が響き渡る。


うっせぇ奴らだ。

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