第67話 レイン・ウォーカー
「お前達、随分と軽装だな」
王墓の砦前で待ち合わせしていた男が、挨拶もせずにぶっきらぼうに問いかけてく来た。
彼の名はレイン・ウォーカー。
長い銀髪と鋭い黒眼が特徴の帝国一の剣士だ。
「そっちだって軽装じゃねぇか?」
長袖のシャツにズボン、その上からよく判らない材質の胸当てに、腰に剣を携えただけの出で立ち。
人を軽装呼ばわりしてはいるが、彼もまた間違いなく軽装だ。
「装備の話ではない。荷物の話だ」
よく見ると、彼の足元には大量の荷物が纏められていた。
何あんなに詰め込んでんだ?
まさかおやつをパンパンに詰めてるわけじゃないよな?
「なんでそんなに大荷物なんだ?」
「貴様ふざけているのか?ダンジョン踏破を目指すならむしろ少ないくらいだぞ」
何故かレインが怒って俺を睨み付けてくる。
いや多すぎだろ絶対。
後、目つき鋭すぎて怖いから睨むなよな。
内心ちょっとビビってしまったが、とりあえず平静を装う。
一応パーティーのリーダーという立場上、舐められるわけにはいかない。
「ああ、ごめんごめん。君に伝えるのすっかり忘れてたよ。たかし君が転移系魔法を使えるから、基本日帰りなんだよ」
「ほう、転移魔法を……」
レインが此方を値踏みするかの様に、更に険しく睨みつけてくる。
どうやらパーが伝え忘れたせいで、会話がかみ合ってなかったようだ。
「
「いいだろう。貴様のお手並み拝見と行こうか」
なんのだよ?
テレポートにお手並みも何もないのだが、どうもレインは俺に対して挑発的だ。
決闘したいという強い気持ちからそういう態度になるのかも知れないが、パーティーを組んでる時ぐらい、少しはフレンドリーにして欲しいものだ。
「あの、レイン・ウォーカーさん。初めまして……ではないですけど、フラム・リーアって言います。どうぞ、よろしくお願いします」
「リン・メイヤーです!よろしくおねがいします!」
「ニカ・ビータです。足手まといかもしれませんが、よろしくお願いします」
「レイン・ウォーカーだ。レインと呼んでくれればいい。その代わり、君達の名も呼び捨てにさせて貰う。短い間だがよろしく頼む。」
そういや、挨拶がまだだったな。
一応俺も挨拶しておこう。
「俺の名は――「知っている」」
挨拶しようとして遮られた。
本当に失礼な奴だ。
どうやら、俺とだけは仲良くする気がないらしい。
「さて、自己紹介も済んだ事だし。王墓に行くとしますか」
「待て、最後にちゃんと確認しておきたい」
出発しようとすると、レインに呼び止められた。
何を確認するつもりなのだろうか。
「何をだ?」
「報酬の話だ。王墓踏破に手を貸せば、貴様と勝負が出来る。これで間違いないな?」
ああ、報酬の話か。
個人的に決闘なんざしたくはないのだが……
「勿論だ。その代わりちゃんと働いてくれよ」
「いいだろう」
レインへの報酬は俺との決闘だけだ。
それ以外の報酬は一切なしで契約している。
パーはなかなかいい仕事をしてくたもんだ。
正直足元見過ぎな気もするが、まあ他人の懐事情など此方の知った事ではないので良しとしよう。
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