第2話 来訪

「みなさんおはようございます。今日はルウリ先生がいらっしゃる日です……。」


 朝はゼニス神父の放送で目を覚ます。

 スピーカーから響く振動は、私の頭や枕もとの貯金箱を揺さぶった。そんなんだから、あと五分とも言えず。そのまま厭が応でも起こされる。


 ……起こしてくれるなら、もう少し優しくて欲しい。この魔道具、なんとかならないだろうか?

 

 すこしだけ恨めしそうにスピーカーを睨み付けてから、うつらうつらと貯金箱を床下に隠して、よれた赤いワンピースを着る。

 どこかのだれかのお下がり。けれども、とても気に入っている。


 鏡の前に座って、大きな櫛で自慢の赤髪を整えて、後ろに大きな一本の三つ編みを作り、立ち上がって一回転。目の前の可憐な少女が、かわいらしく微笑む。


 …………よし、今日も完璧だ。




 部屋を出る前に、忘れずに首にかける。丸い二つの持ち手に麻縄を通しただけのそれ。

 

 —————パパとママの大切な金切り鋏を。




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バカな勇者と金切り鋏 @nnn1234

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