第2話 裏切りの告白
国王と絵師にイタカの外見の特徴を話していると、絵師にイタカの性格や印象に残る話をしてくれと頼まれた。ポーズや顔の表情にリアルを出したいらしい。
印象に残る話なら、イタカが俺に裏切り者だと打ち明けた時だ。
イタカは最初は俺にだけ打ち明けたのだ。魔王城に入る前夜だ。勇者もマリーも、ミランダも寝ていた。
寝ずの番を俺とイタカでしていた時に、静かにイタカは言葉を投げてきたのだ。
「コモドールはさ、俺が魔王側の人間だって言ったら、俺のこと殺す?」
明日には魔王城に乗り込んで討伐するというのに、直前になって何を言い出すんだ。さては眠いのか、イタカは。
そう思って俺は毛布を渡したのを覚えている。
「アホな寝言は寝てから言え。俺だけでも見張りはできるから少し寝ろ」
「嫌だなあ、俺本気だよ?」
「建国とともに代々続いてきた聖堂教会の嫡男があり得ないだろう。それに魔王復活の時に親父を殺されたんだろ? 親父さんが泣くぞ」
魔王が歴史ある大聖堂を崩落させ、何も残さず聖都に大穴を作ったことは聞いていた。
イタカの父親がその崩落に巻き込まれて亡くなったことも。
俺が渡した毛布を膝にかけて、イタカは不敵な笑みを浮かべた。
「俺の父さんはさ、勇者様に殺されたんだ」
何を言っているのかすぐに理解できなかった。驚いて言葉が出ない俺を面白そうにイタカは続けた。
「なんで建国と同時にできた聖堂教会が王都から離れた場所にあると思う? 聖堂教会の地下に魔王を封印していたからだよ」
暖をとるための焚き火が、ぱちっと音を立てた。
「復活したのは別の場所じゃなかったのか? あの聖堂教会にそんな大きな地下があるとはとても……」
「別に封印されていた魔王があのままの大きさである必要はないだろ? 封印されてた時はマリーより小さかったよ。復活したら元の大きさになるから、王都に近いと被害がでる。魔力を放出するだけで街一つ壊滅できるからね。だから王都と聖堂教会は一番離れていたし、帝国と公国には少し近かった」
俺が間に入る隙を許さない早口だった。
そして一呼吸おいて、イタカは苦虫を噛み潰したような表情で言った。
「魔王復活と言えば、帝国も公国も、王国と戦争する時期をズラすだろ。それどころじゃないってさ。今回の魔王復活は、国王と勇者が結託して行われたんだよ」
イタカを仲間として信じていた俺は、その時どんな顔をしていたのだろうか。
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