第4話:遅れましたけど自己紹介。赤貧チルドレン・私とマーちゃん。

私でなんとか助けてあげられないかなあ……。

実は助けてあげられるんだけど……。

あ、ご紹介が遅れました。

私、マーちゃんの幼馴染みで延塚のぶつか直子なおこと申します。

母は愛子。

母子家庭で身を寄り添い合ってなんとか生きています。

マーちゃんと似た境遇ですが、私はヤンキーになることなく、ごくごく平凡な女子中学生に育ちました。

私は平凡そのもののつもりですが、でも、周りからは「ガリ勉」と呼ばれ、成績も常に学年トップ3から落ちたことがないようです。教師から聞いたデータですが。

でも、やっぱりガリ勉なんでしょうね。

勉強しかやることなかったですから……。

とにかく貧乏で携帯もゲームもネットもないので家に帰っても食事の準備が終われば宿題と予習と復習しかやることがないんです。

内気ですし、病弱で友達も少なかったですから情けない話です。

でも、こんな内向的な性格の私を今までマーちゃんがどれだけ救ってきてくれたか……。


私とマーちゃんはほぼ生まれたときからの幼馴染みだ。

まだ0歳のとき、私の母も澄ちゃんも同時期に離婚してシングルマザーになって、

そのシンマザの集まりでお酒飲んで付き合いが始まった。

母は私を産んですぐ高知市の食品会社の事務員に落ち着いて、

それから猛勉強して簿記検定の2級を取って、

今では会社の経理の重鎮になっている。

一方澄ちゃんはというと、

出産後、すぐに貯金が底をついて、アパートを追い出される寸前で、

母が大変な苦労をして今いる町の住み込みのスナックの仕事を探してきて澄ちゃんとまだ赤ちゃんだったマーちゃんをそこへねじ込んだ。

それでも、心配だからと言って母もこの町に住んで高知市まで電車で仕事に通うことにした。

だから、澄ちゃんは母を命の恩人だと言って母に頭が上がらない。

でも、落ち込みがちな母も、澄ちゃんの底抜けの明るさに救われているようで、

そんな澄ちゃんに恩を売るようなことはしない。

付き合い始めて15年。

お互いしつこく、本物の親友のようだ。

そこから私はマーちゃんとずっと一緒。

毎日のように澄ちゃんがマーちゃんを私の家に連れてきてたから、保育園も一緒、食事も一緒、遊びも一緒、

お風呂も毎日のように一緒に入った。

冗談のファーストキスまでしている。

四歳のとき

「チューってどんなの?」

とマーちゃんがしつこくせまってきたのでお風呂で訳も分からずブチュブチュと唇をこすり付け合った。

ガハハと無邪気に笑ってたな、マーちゃん。

覚えてるかなあ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る