純情やり直し幼馴染み@勃っちゃった、濡れちゃった、15歳少年少女の恋

武田優菜

第1章 美少年はつらいよ。マーちゃんの追試と、幼馴染みと、ブランクと……。

第1話:高倉健です……。美少年マーちゃんの校内でのスタンス。

「マーが追試受けるっていうのよ」

「それで、それに落ちたら夏休み補習だって」

「お店どうしようか困ってるのよお……」

「夏休みはフルタイムでマーに手伝ってもらわないと困るのになあ……ったくッ」

と、すみちゃんが私の母にガックリとボヤいた。

マーちゃんは校内一の美少年だ。

それも、ほんの一瞬ッ、

ホントにほんの一瞬見ただけでもビッチリ目に焼き付いてこびり付いて離れなくなってしまうという、

ほとんど事故にあったような錯覚におちいってしまうくらい、

まるでルネサンス絵画の代表的一枚のような美貌だ。

一度目が合うと、ばちーんとビンタされてビクンと背骨に電気が走ったような衝撃に襲われる。

実際、一瞬、見惚みとれてクラッと身体からだが止まってしまう女子生徒はホントに多い。

時岡将義ときおかまさよし15歳、中学3年生の男の子。

どうして私がそんな子を「マーちゃん」などと気安く呼べるのかと言うと、

単純に幼馴染みだからだ。

これは否定しようのない事実。

でも、異性の私がマーちゃんを美少年だって気付いたのはつい最近のこと。

その関係はあとで話すけど、

とにかくマーちゃんは100人中120人が「美しい!」と叫ぶほど掛け値なしの美少年だ。

そして、校内一の不良のマーちゃんにはクラスに友達がいない。

完全に孤立している。

男女問わず、生徒みんながマーちゃんを怖がってるってのもあるんだけど、

それよりもマーちゃんが無口で独りでいるのが好きだっていう性格の方が大きい。

生まれたときから付き合っている私が言うんだから間違いない。

マーちゃんは群れるのが嫌いだ。

小さい頃、いつも私と二人だけで遊んでいた。

2人ぐらいの子供たちが一緒に遊ぼうと言うと参加するけど、

それが3人4人を超えると急に不機嫌になって「やめる」と言ってまた私と二人になる。

三歳くらいからそうで、どうもこれは持って生まれたマーちゃんの性格らしい。

だから、いつも教室でマーちゃんは一人教科書を読んでいる。

流行はやりのファッション雑誌ではなく教科書なのが悲しい。

お金が無いからだ。

私の家もマーちゃんちもシングルマザーで筋金入りの貧乏だ。

だいたいの人は「あか」という漢字を色として覚えるけど、

私は「赤貧せきひん」という言葉で「赤」という字を覚えた。

マーちゃんも一緒だ。

中学生は法律で働けない。

遊び道具が買えないマーちゃんは仕方なく教科書を読む。

でも結局放課後勉強しないで忘れるから成績は悪い。

ところが、一人頬杖ほおづえついて教科書を読んでいるマーちゃんの姿は校内のどの男子生徒よりも知的に見えるから不思議だ。

「イケメンは得だなあ」なんて内心複雑に笑える。

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