第8話 エヘッ! 8
「やって来ました! ノッティンガム!」
おみっちゃんたちは学生さんがたくさん住んでいると言われるノッティンガムにやって来た。
「わ~い! きれいな街! 私、こういう所でも歌ってみたいな! エヘッ!」
美しい街並みに大喜びのおみっちゃん。
「このきれいな街もおみっちゃんの歌の前に滅ぶんだろうね。」
女将さんの嫌な予感はだいたい当たる。
「おみっちゃん、歌を歌う前に茶店の準備をしな。」
なんとしても、おみっちゃんに歌を歌わせない女将さん。
「ええー!?」
嫌そうな声をあげるおみっちゃん。
「お給料なしでもいいんだね?」
脅しにはいる女将さん。
「それだけはご勘弁を! はい! 直ぐに茶店の準備をします!」
おみっちゃんはパワハラに弱かった。
「ふ~う。これで大丈夫っと。」
額の汗を拭う女将さん。
「それにしても、やっぱり黒の組織パパラッチは王位継承権争いをしている誰かに呼び出されたんだね。」
女将さんは黒の組織パパラッチの幹部の火の魔神イフリートの言葉を思い出していた。
「そうですね。でも、いったい誰が!?」
シャーロット王女も戦々恐々である。
「きっとカミラよ! カミラが私を殺すためにパパラッチと契約したのよ!」
ダイアナは私情の恨みが混じった意見である。
「おばあ様。よっぽどおばあちゃんを恨んでいるのね。」
カミラは元旦那のチャールズの浮気相手で現在の妻である。
「結婚って何なんだろう?」
お金がないものがお金がある者に体を売る奴隷契約なのかもしれない。
「私! 結婚しない! イギリス王室の血筋が途絶えたって知るものか!」
シャーロット王女の独身宣言。
「カミラめ! 私だけでなくカワイイ孫娘の命まで狙うなんて許せない! 呪い殺してやる!」
ダイアナは呪術を始める。
「こいつらがイギリス王室だと思うと、イギリスの将来は暗いな。」
女将さんはイギリス王室に立ち込める暗雲を感じる。
「それにしても王室の誰が悪の組織パパラッチと契約してシャーロットを襲っているんでしょうね。」
おみっちゃんらしくない良い質問をする。
「だからカミラだって!」
ダイアナはあくまでカミラを敵視する。
「黙れ。ダイアナ。悪霊になってるよ。」
女将さんはダイアナを注意する。
「まあ、シャーロットの一族のチャールズ派ではないだろう。」
ダイアナのカミラ陰謀説は否定された。
「残りの3人の兄弟がアンドルー、エドワード、アンね。」
エリザベス女王の子供がチャールズを含め4兄弟である。
「これは乗り込んで直接会ってみるしかないですね?」
おみっちゃんは純粋な意見を言ってみた。
「あら? おみっちゃんにしては良い意見だね。」
女将さんも思わず関心する。
「私はやればできる子です! エヘッ!」
笑って見せるエヘ幽霊。
「でも、どこに行けば会えるんだい? 王族には?」
女将さんはイギリスの土地には詳しくなかった。
「基本的にはロンドンです。バッキンガム宮殿にいます。」
王族はロンドンにいるらしい。
「でも別荘で休暇していたり、巡回で地方にも行くことはありますよ。」
イベントがあればロンドン以外でも会えるみたいだ。
「きっとノッティンガムにも誰か来てるはずです。」
シャーロットは王族がノッティンガムにいるという。
「私、調べてきますね。」
ダイアナは町に王族の情報を集めに行った。
「しまった!? 既におみっちゃんの歌の犠牲になっている王族がいるかもしれないね。」
恐るべし! おみっちゃんのデスボイス!
「私の夢は江戸で歌姫になることです! 私の歌を聞いて死んだのなら本望でしょうね! エヘッ!」
自分は音痴だと想像したことがないエヘ幽霊。
「おみっちゃんに教えてあげましょうか? 自分が音痴だってことを。」
シャーロットは怖いものが見たい。
「やめときな。イギリスが大怪獣おみっちゃんの前に滅び去るよ。」
女将さんはショックでおみっちゃんは大怪獣に変身するという。
「アン王女がノッティンガムにいるそうですよ。」
ダイアナが情報をしいれて戻ってきた。
「よし! 早速アン王女に会いに行こう!」
「おお!」
おみっちゃんたちはアン王女の元に向かう。
「ごめん下さい。どちら様ですか? おみっちゃんです。どうぞ。失礼します。」
おみっちゃんはアン王女の別荘にやってくる。
「これって不法侵入ですよね?」
「いいのよ。どうぞって言われたもの。エヘッ!」
これも忍法、一人開閉の術にしよう。エヘ幽霊は何でもありなのだ。
「アン王女はどこにいるのかしら?」
おみっちゃんたちはアン王女の別荘の中を探す。
「あなたたちは何者ですか?」
そこにアン王女のメイドが現れ、おみっちゃんたちを発見する。
「勝手に入って来ないで下さい! 警察を呼びますよ!」
お怒りなメイド。
「ちゃんと挨拶しましたよ!? そしたら「どうぞ!」って言われました!?」
弁解するおみっちゃん。
「それなら仕方がありませんね。」
納得するメイド。
「はあっ!?」
その時、メイドは何かに気づいた。
「シャーロット王女! シャーロット王女ではありませんか!?」
メイドはシャーロットに気づく。
「ケーキの食べ過ぎでお腹を痛めて死んだと聞きましたが生きておいでだったんですね!?」
シャーロット死亡説あるある。
「私は何をどうやって死んだことになっているのよ?」
シャーロットは悪の組織パパラッチに暗殺されたことになっている。
「リヴァさん、どうしたんですか? お客様ですか?」
騒いでいるとおばあちゃんがやってくる。
「あ、あなたはシャーロット!?」
「アンおばあ様!」
シャーロット王女はアン王女と再会する。
「シャーロット! あなた生きていたのね! 良かった!」
「アンおばあ様!」
シャーロットとアンは感動の再会を泣きながら抱きしめあい喜んだ。
「シャーロット、よく生きていたね。本当に心配したんだよ。」
「この人達が私を助けてくれたんです。」
シャーロットはおみっちゃんたちを紹介する。
「私はおみっちゃん! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
いつも通りの長い自己紹介をするエヘ幽霊。
「シャーロットを助けたんだから謝礼は弾んでもらえるんだろうね?」
いつも通りの女将さん。
「シャーロット王女様の侍女のダイアナです。」
自分を偽る元王妃のダイアナ。
「あれ? あなたはどこかで見たことがあるような?」
アン王女はダイアナを生前に見たことがある。
「ひ、人違いですよ。オッホッホー!」
笑って誤魔化すダイアナ。
「みなさん、ありがとうございます。よくぞ、可愛いシャーロットを守ってくれました。」
深々と頭を下げるアン王女。
「それほどでも。私とシャーロットはお友達ですから、困った時は助け合うのが友情です。エヘッ!」
おみっちゃんとシャーロットは友達。
「そうですよ。それにシャーロットはよく働く子ですからね。カワイイ看板娘が手に入って、アホな男客が増えて丸儲けさせてもらってますよ。いざとなったら身代金をイギリス王室に請求できますからね。イヒッ!」
女将さんはシャーロットを金づるにしか思っていない。
「あんたたち、本当にシャーロットの友達かい?」
おみっちゃんと女将さんに不信感を抱くアン王女。
「ごめんなさい。おばあ様。これでも命の恩人なのよ・・・・・・。」
シャーロットのメンツは丸つぶれ。
「アンおばあ様。黒の組織パパラッチって知ってる?」
シャーロットは本題を切り出す。
「知っているよ。あんたの亡くなったおばあちゃんのダイアナもパパラッチに暗殺されたんだよ。」
やはいダイアナが死んだのは黒の組織パパラッチの仕業だった。
「今、私はパパラッチに命を狙われているの。そのパパラッチが言うには、イギリス王室の誰かに頼まれて、自分の王位継承権順位を上げるために私を殺そうとしているらしいの。」
「なんだって!?」
シャーロットはイギリス王室の誰かに命を狙われている。
「じゃあ、イギリス王室の誰かがシャーロットを狙っているっていうのかい?」
「そうなの。」
可愛そうなシャーロット。
「なんてこったい!? まさか身内が身内を襲うなんて!? 何て罰当たりな!? そんなことをしたら天に居られる神様の怒りを買ってしまうよ!?」
アン王女は怒り嘆く。
「おばあ様。誰かイギリスの王族の中で悪の組織パパラッチとつながりがありそうな人を知らないかしら?」
シャーロットはイギリス皇室とパパラッチのつながりを調べたい。
「どうだろう? 分からないね。私は高齢で一人暮らしだから、もう王位継承権なんて興味はないからね。あんたに悪意を抱くとしたら若い世代じゃないかね?」
アン王女はシャーロット世代が怪しいと考える。
「そうよね。おばあ様は子供もいないし、王位なんて狙わないわよね。」
「そうだよ。私は後は死ぬだけさ。」
シャーロットはアン王女をパパラッチと関係がある人間から外した。
「出てこい! シャーロット王女! 出てこないとノッティンガムを火の海にしてやるぞ!」
その時、外からシャーロットを名指しする大きな声が聞こえた。
「なに!?」
「外からだ!? 行ってみよう!」
シャーロットたちは外が見えるバルコニーに行く。
「俺は黒の組織パパラッチの幹部のブラック・ドラゴンだ!」
暗雲と共にブラック・ドラゴンが現れた。
「出たな! パパラッチ!」
「ブラック・ドラゴン!?」
「あいつは黒竜!?」
女将さんは黒竜を知っているみたいだ。
「黒竜は竜の中で最強に強いんだよ!? 危ないよ!? おみっちゃん!?」
「大丈夫ですよ! 私は聖竜や竜神、冥王竜、破壊竜、土石竜など何匹でも竜は呼び出せますからね! エヘッ!」
おみっちゃんの竜コレクション。
「あんたいつの間に、そんなにたくさん竜を集めたんだい?」
「詳しくはおみちゃん竜を集める編をご覧ください。エヘッ!」
そんなシリーズはないエヘ幽霊。
「私はここだ! 逃げも隠れもしないぞ!」
シャーロットは自ら大声を出してブラック・ドラゴンの注意を引き付けてノッティンガムの街を守ろうとする。
「見つけたぞ! シャーロット王女! ここがおまえの墓場になるのだ! くらえ! 黒竜破!」
ブラック・ドラゴンが黒い炎を口から吐き出す。
「おみっちゃん。発声練習をしていいよ。」
女将さんがおみっちゃんに発声練習を許可する。
「いいんですか?」
いちいち確認するおみっちゃん。
「いいからさっさと発声練習をするんだよ!」
このやり取りの間も黒い炎は近づいてくる。
「耳栓! 用意!」
女将さん、シャーロット、ダイアナは耳栓をする。
「は~い! あ! い! う! え! え! お! あ! お! あ!」
おみっちゃんが発声練習を始めた。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。もちろん発生練習も普通の発生練習なはずがない。
「なに!? 俺の黒い炎が砕かれていく!? いったい何が起こっているんだ!?」
おみっちゃんの発生練習の声が黒い炎にヒビを入れ砕いていく。
「おみっちゃん! 発生練習をおやめ!」
「モゴモゴモゴ!? 何するんですか!? 女将さん!? 人が気持ちよく発生練習をしているのに!?」
女将さんがおみっちゃんの口を手で強引に防ぐ。
「もういいんだよ! おやめ!」
「歌えって言ったり、歌うなって言ったり、女将さんは我儘だな。エヘッ!」
おみっちゃんは女将さんを我儘だと思った。
「クソッ!? いったい何が起こっているんだ!?」
ブラック・ドラゴンは予想外の出来事が起こっているので混乱していた。
(引きなさい! ブラック・ドラゴン!)
その時、ブラック・ドラゴンに女の声でテレパシーが送られる。
「はっ!? あなた様は!? マスター!?」
ブラック・ドラゴンはバルコニーにいるおみっちゃんたちの中で誰かを見つけた。
(この場は引きなさい! ブラック・ドラゴン!)
また女の声がした。
「承知いたしました。」
ブラック・ドラゴンは反転して空に去って行った。
「おお! ブラック・ドラゴンが帰って行くぞ!」
「なんて恐ろしいおみっちゃんの歌なんだ!」
結果的におみっちゃんはノッティンガムの街を救った。
「ありがとうございます。シャーロット、あなたたちのおかげで街が救われたのよ。まさにあなたたちは救世主よ。」
アン王女はシャーロットたちを褒めたたえる。
「いや~、それほどでも。エヘッ!」
褒められて可愛い子ぶるエヘ幽霊。
「アンおばあ様。ありがとうございました。他の王族の方にも会ってみます。」
「そうだね。それがいいわ。」
「行ってきます!」
シャーロットたちは次の冒険に出かけることにした。
「マスター。まさかあなた様がノッティンガムにいらっしゃったとは。」
人の姿をした物が膝間ついている。
「私のいる時に事件が起こるのはよくありませんからね。」
アン王女だ。マスターと呼ばれている人物の正体はアン王女であった。
「そうだ。ブラ、力があるからと言って破壊すれば良いというものではない。」
そこにアン王女のメイドたちが現れる。
「リー、リヴァ、イフ。おまえたちもいたのか。」
アン王女の周りには3人のメイドがいる。
「当然だ。我がマスターを一人にする訳がない。」
「我々はマスターと共に。」
メイドたちがアン王女に忠誠を誓っている。
「面白くなってきましたね。王位継承権争い。シャーロットがどれだけできるのか楽しみだわ。オッホッホー!」
ノッティンガムにアン王女の笑い声が木霊する。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。