第5話 エヘッ! 5
「やって来ました! ウルヴァーハンプトン!」
おみっちゃんたちはウルヴァーハンプトンにやって来た。
「ウルヴァーハンプトンは鉱山の街です。」
「お宝採掘で決まりだね! ダイヤモンドを掘り当てるぞ! なんなら温泉でもいいよ! イヒッ!」
勝ち誇る女将さん。
「あとはタフガイ・チャレンジの街ですね。」
「タフガイ・チャレンジ?」
「タフガイ・チャレンジはトライアスロンみたいなエクストリーム・スポーツです。」
「横文字ばっかりで分からないよ。」
おみっちゃんは横文字に弱い。
「ネットで調べると関連項目に風雲たけし城がある!?」
「異種格闘技的な10キロのレースで有刺鉄線に、火の海、氷の大地など何でもありです。まあ、相手を全員倒すか、一番にゴールするかで勝利です。ただし死者もかなりの数が出るそうです。」
恐るべし! タフガイ・チャレンジ!
「馬鹿馬鹿しい。そんなものに参加しても怪我するだけだよ。一円にもなりはしない。」
タフガイ・チャレンジをバカにする女将さん。
「タフガイ・チャレンジの優勝賞金は1億円ですよ。」
「なにー!?」
優勝賞金の金額を聞いて目の色が変わる女将さん。
「出ろ! おみっちゃん!」
「え? でも鉱山でお金を掘るんですよね?」
おみっちゃんの弱い頭では鉱山からお金が掘れると思っている。
「鉱山は私たちでやる! おみっちゃん! あんたはタフガイ・チャレンジに出るんだよ!」
女将さんたちは鉱山。おみちゃんはタフガイ・チャレンジと二手に分けた。
「でも有刺鉄線とか火の海とか危ないじゃないですか! 一歩間違ったら死んじゃうんですよ!」
ウルウルした瞳で訴えるおみっちゃん。
「あんた幽霊だろうが!」
「そうでした。エヘッ!」
可愛い子ぶるエヘ幽霊。
「おみっちゃん! タフガイ・チャレンジの優勝者には、ウイニングライブができる特典付きだよ!」
「ウイニングライブ!?」
説明しよう。ウイニングライブとは優勝者が歌を歌える権利である。
「はい! はい! はい! 私、タフガイ・チャレンジに出ます! 優勝して憧れのウイニングライブを歌います! ああ~! 私のための! 私だけのステージ!」
おみっちゃんの夢は江戸で歌姫をやることである。
「私、イギリスにずっといますけど、タフガイ・チャレンジの優勝者が歌を歌うなんて聞いたことがないんですけど?」
ダイアナは首をかしげる。
「もちろん、嘘だよ。イヒッ!」
全ては女将さんの嘘だった。
「金の亡者・・・・・・。」
ダイアナは女将さんに呆れる。
「おみっちゃんが心配じゃないんですか?」
シャーロットが苦言を呈する。
「ならシャーロット。あんたがタフガイ・チャレンジに出場するかい?」
鋭い女将さんのカウンターが入る。
「え? ・・・・・・。みんなで金を掘り当てるわよ! エイエイオー!」
シャーロットはおみっちゃんを見捨てた。
「おみっちゃん、あんたは日本代表だよ。」
女将さんの悪魔の囁きが始まる。
「私が日本代表!? こんなミジンコみたいな私が!?」
自分に自信のないおみっちゃん。
「そうだよ。あんたの実力をもってすれば簡単に優勝できるからね。今から何を歌うか考えておきな。何なら新曲の作詞作曲でもしておきなよ。」
「はい! ありがとうございます! 女将さん大好き! わ~い! 新曲の歌詞は何を題材にしようかな! エヘッ!」
完全に女将さんにマインドコントロールされるおみっちゃん。
「それじゃあ、二手に分かれて試練に挑むよ!」
「おお!」
こうしておみっちゃんたちは二手に分かれた。
「ここがタフガイ・チャレンジの会場か。」
おみっちゃんはタフガイ・チャレンジの会場にやって来た。
「はい! 参加される方は出場者名簿に名前を書いてください!」
おみっちゃんも列に並んで出場者名簿に名前を書いて登録しようとする。
「おいおい? お嬢ちゃん。おまえもタフガイ・チャレンジに参加するつもりか?」
そこに大男が現れる。
「そうですよ。エヘッ!」
おみっちゃんはいつも明るく笑顔で元気に前向き。誰にでも愛想を振りまく八方美人さんである。
「ワッハッハー!」
大男は馬鹿笑いする。
「こいつは面白い! 可愛いお嬢ちゃんがどこまでできるか見せてもらおうか! ワッハッハー!」
「そんなことやってみないと分からないでしょ!」
バカにされておみっちゃんは激怒する。
「俺の名前はアクトレス。じゃあな。お嬢ちゃん。ワッハッハー!」
「私にはおみっちゃんという立派な名前があるんだからね!」
笑いながら大男は去って行った。
「ぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ! 許せん! 日本侍をバカにするとは!」
おみっちゃんの侍魂に火がついた。
「私をバカにすると、どれだけ恐ろしいか見せてやる!」
おみっちゃんは出場者名簿に名前を書いて立ち去る。
「な!? なんじゃこりゃ!?」
おみっちゃんの後ろにいた人間が出場者名簿を見た。
「おみっちゃん! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
と、丁寧にエヘ笑いまで書いているエヘ幽霊。
「予選会場はあちらです!」
「は~い!」
おみっちゃんは予選会場に向かった。
「これがハンプトン鉱山か!」
シャーロットたちはハンプトン鉱山にたどり着いた。
「ハンプトン埋蔵金を掘り当てようね!」
女将さんも気合が入っている。
「おお!」
一致団結するシャーロット率いる鉱山発掘部隊であった。
「ここがタフガイ・チャレンジの予選会場ね。」
おみっちゃんはタフガイ・チャレンジの予選会場に着いた。
「何をすればいいのかしら?」
おみっちゃんはタフガイ・チャレンジのことを何も知らなかった。
「それでは予選のタフガイ・チャレンジを説明します。」
司会進行が説明を始める。
「なんだかドキドキするな。私、死んでいるんだけど。エヘッ!」
おまえはもう死んでいるエヘ幽霊。
「今回のチャレンジはこれだ!」
巨大な洗濯機が現れた。
「ウワアアアアアー!?」
予選の参加者たちは洗濯機の中に落とされて水浸しになる。
「酷い!? 何すんのよ!?」
さすがの扱いにエヘ幽霊も怒る。
「これは人口渦潮発生器です! 決勝戦に進めるのは、この渦潮の中で生き残れた人だけです!」
「なんですと!?」
タフガイ・チャレンジの予選は人間洗濯機に決まった。
「それでは予選開始です! ミュージック! スタート!」
司会者が予選の開始を宣言する。
ウイーン!
それと同時に渦潮発生器が動き出す。
「なんだ!? 何が始まるんだ!?」
水が回転し始めた。
ウイーン! ウイーン! ウイーン!
渦潮が発生し激しさを増していく。
「ギャアアアアアアー!」
予選参加者たちを渦潮が呑み込んでいく。
「助けてくれ! 俺は泳げないんだ!」
カナヅチは水に沈んでいく。
「体が引きちぎられる! ギャアアアアアアー!」
渦潮は人間の体など簡単に引き裂いた。
「ふん。他愛もない連中だ。これぐらいの渦潮で俺はビクともしないぜ!」
おみっちゃんをからかった大男のアクトレスは渦潮の中でも動ぜずに耐えていた。
「うん? なんだ?」
その時、大男アクトレスは何かを見つけた。
「スイスイ! スイスイ! スイスイ~! おたまじゃくしの兄弟は川の中~!」
おみっちゃんは渦潮の水面を軽やかに踊っている。
「おまえは!? あの時のチンチクリン!?」
アクトレスはおみっちゃんのことを覚えていた。
「誰がチンチクリンよ! あ! あなたは! 失礼な奴! 私にはおみっちゃんという由緒正しき名前があるんだからね!」
おみっちゃんもアクトレスを見つけた。
キラーン!
その時、おみっちゃんはアクトレスを見て女の第六感が働いた。
「チャンス! あなた、渦潮の中で耐えるのが精いっぱいなのね! エヘッ!」
おみっちゃんは瞬時にアクトレスの現状を理解した。
「なぜだ!? なぜおまえは水の上を歩けるんだ!?」
アクトレスは良い質問をした。
「私、忍者だから。エヘッ!」
得意げに忍者アピールをするエヘ幽霊。
「忍者だと!?」
アクトレスは忍者を見たのは初めてだ。
「その通り! 私はジャパニーズ・ニンジャです! エヘッ!」
可愛く笑って見せるおみっちゃん。
「忍法! 水の上スイスイの術だ!」
何でも忍法にできるおみっちゃん。
「バカな!? おまえは詐欺師かペテン師に違いない!」
忍者を信じないアクトレス。
「誰が詐欺師にペテン師に妖術士よ!?」
嫌疑がかけられるおみっちゃん。
「はあ!? そういえばはるか遠くの日本という国に伝説の忍者という歴史上の架空の人物がいると聞いたことがある!?」
出た! 新しい伝説!
「誰が歴史上の架空の人物よ!? 私はあんたの目の前で実在しているでしょうが!」
アクトレスの目の前におみっちゃんは存在する。
「しかし忍者が存在したというのは伝説の生き物だけにかなり昔なはず!? さてはおまえ! 人間じゃないな!」
忍者って現代は絶滅危惧種らしい。
「ばれたか! その通り! 私の正体は・・・・・・カワイイ幽霊だ! エヘッ!」
正体がバレても動じないエヘ幽霊。
「幽霊!? ゴーストやガイコツたちアンデットの仲間か!?」
「違うよ。私は妖怪の仲間だよ。エヘッ!」
笑って自己の存在を主張するエヘ幽霊。
「アンデットも妖怪も同じだろうが?」
「違う! 違う! 妖怪は日本の化け物で、アンデットは西洋妖怪に当るんだから。日本の妖怪と西洋妖怪は犬猿の仲なんだから。ね? 違うでしょ。エヘッ!」
日本の妖怪と異世界ファンタジーのモンスターは仲が悪いらしい。きっと西洋妖怪を倒しまくったゲゲゲ先輩の性だろう。
「どっちも人間の俺からすれば一緒なんだが・・・・・・。」
アクトレスからするとおみっちゃんの主張は目くそ鼻くそで似たり寄ったりだった。
「その通り! 東洋の日本の妖怪と私たち諸外国の西洋妖怪は仲が悪いのだ!」
その時、渦潮の中を泳いでいる者がいた。
「何者だ!? おまえは!?」
「私は悪の組織パパラッチの幹部の一人! 海の怪物! レヴィアタンだ!」
なんとレヴィアタンは海蛇の姿をした悪の組織パパラッチの幹部だった。
「私の名前はおみっちゃん! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
「いや、別に聞いてない。」
「レヴィたんの恥ずかしがり屋。エヘッ!」
可愛い子ぶるエヘ幽霊。
「出たな! パパラッチ! また悪いことを企んでいるな!」
おみっちゃんはシャーロット王女を守る為に悪の組織パパラッチと戦っている。
「ていうか、なんで西洋妖怪がタフガイ・チャレンジに参加してるんだよ?」
「生活していくためにはお金がいるんだよ! それは西洋妖怪も一緒なんだよ!」
海蛇の悪魔レヴィアタンもお金に苦労していた。
「分かる! その気持ち! 私もお金のためにタフガイ・チャレンジに参加させられているんだ!」
「おお! 同士よ!」
妙な所で気持ちが通じ共感するエヘ幽霊と海蛇。
「それに魔界で平和に暮らしていた俺たちを呼んだのは人間だ。」
「なんだって!?」
悪魔は悪魔らしく魔界で暮らしていたらしい。
「人間界に呼ばれたらカーテン越しに人間がいて、「この国には王位継承権争いがあるから、自分が王位につけるように力を貸してほしい」て言うんだ。人間って自分勝手だろ。」
悪魔レヴィアタンの持論は人間は我儘である。
「そうだ! そうだ! その通りだ! 私にだけ危険なタフガイ・チャレンジに参加させて、自分たちは安全な鉱山で金を掘り当てるんだとよ! まったく! やってられない!」
不当な扱いを受けているエヘ幽霊。
「おみっちゃん。あなた悪魔になれる才能があるわよ。良かったら悪の組織パパラッチに入会しない?」
海蛇レヴィアタンはおみっちゃんを悪の組織パパラッチにスカウトする。
「ごめんなさい。それは無理。」
きっぱり断るおみっちゃん。
「どうして?」
「それは・・・・・・私の夢は江戸で歌姫になることだからです! エヘッ!」
おみっちゃんは自分の夢のために悪の勧誘を断る。
ピーイ!
その時、司会進行が笛を吹く。
「予選の終了です! 残った方はタフガイ・チャレンジの決勝にお進みください。」
タフガイ・チャレンジの予選が終わった。
「優勝したら歌ってもいいですか? エヘッ!」
決勝出場者はおみっちゃん。
「俺は負けないぞ!」
大男のアクトレス。
「なんで悪魔がこんなことしなくっちゃいけないの? は~あ・・・・・・。」
悪魔の海蛇レヴィアタンの3人とその他大勢の人々。
「いらっしゃいませ! ジャパニーズ・スタイルのお茶とお団子はいかがですか?」
シャーロットが茶店の呼び込みをしている。
「どうして元王妃の私がお皿洗いをしないといけないの?」
ダイアナはお皿と湯呑を洗っている。
「あいよ! お茶とお団子できたよ! シャーロット! さっさと運んでおくれ!」
「はい! 喜んで!」
女将さんは茶店でお茶とお団子を作るので忙しい。
「ありがとうございました! いらっしゃいませ!」
鉱山では鉱山堀の男たちが珍しい茶店に大行列を作り大繁盛していた。
「これだけ労働者がいるんなら、自分たちで掘るより、こいつらからお金をもらった方が儲かるね。イヒッ!」
守銭奴の女将さんは計算高い。
「もしも金が見つかったら、見つかって外に運ばれてから奪い取ればいいんだよ! イヒッ!」
抜かりはない女将さん。
「キャアアアアアアー! やめてください!」
「いいじゃないか! 酌ぐらいしろよ! ワッハッハー!」
その時、お客の男が配膳のシャーロットの体を触ろうとした。
「いやです! やめてください!」
「おお! かわいいね! ワッハッハー!」
傲慢なお客様。
「おやめ! うちの看板娘に手を出すと私が黙っていませんよ!」
女将さんがお団子づくりをやめてやって来た。
「なんだと? 俺とやろうってか? 大岩を軽々持ち上げる俺と女の分際で戦おうっていうのか? ワッハッハー!」
お客様は女をバカにしている。
「口はいいから、かかっておいでよ。」
女将さんは江戸っ子のように根性があった。
「何を! なめるな!」
大男が女将さんに襲い掛かる。
「危ない! 女将さん!」
見ているシャーロットは女将さんを心配する。
「おい、蛍がいつ光るか知ってるか?」
「あん? 何言ってるんだ! 死ね!」
大男が女将さんに大きな岩を投げつける。
「蛍は悪い奴を倒す時に光るんだよ! いでよ! 蛍光刀!」
女将さんは光る刀を出す。
「渋い谷茶店流! 夏の世の夢!」
女将さんが大男を切り裂く。
「ギャアアアアアアー!」
女将さんは大男を倒した。
「まったく商売の邪魔だね。」
女将さんの頭の中はお金しかない。
「強い!? 女将さんって強かったのね!?」
シャーロットは女将さんを見直した。
「当たり前だろ。だって私はおみっちゃんの師匠なんだから。イヒッ!」
恐るべし! 女将さん!
「さっさとお客さんにお茶とお団子を出しておくれ。」
「はい! ただいま!」
何事もなかったかのように女将さんはお団子作りに戻る。
「タフガイ? 私は女の子だからタフガールなんだけどな? まあいいっか。エヘッ!」
細かいことは気にしないエヘ幽霊。
「そうだ。タフガイ・チャレンジは男女混合無差別種目だ。どんな手を使ってでも相手を倒せば勝ちだからな。」
そこに大男アクトレスが現れる。
「その通り。私はパパラッチの運営資金として賞金が必要なのだ。」
海蛇の悪魔レヴィアタンが現れる。
「それでは決勝の説明を致します!」
司会進行がタフガイ・チャレンジの決勝の説明を始める。
「まず火の海、氷の大地を抜けて、シークレット・ゾーンを抜けるとゴールです!」
「火の海!?」
「氷の大地!?」
「シークレット・ゾーン!?」
おみっちゃんたちは過酷なコースに戦々恐々になる。
「なんてヤバいんだ!? タフガイ・チャレンジ!?」
大男アクトレスもビビる。
「な~んだ。普通だな。残念。エヘッ!」
余裕なので残念がるエヘ幽霊。
「そうだな。魔界そのまんまだ。魔界レースとかに名前を変えればいいのに。」
悪魔のレヴィアタンも平気そうにしている。
「なんなんだよ!? おまえたちは!?」
アクトレスにはおみっちゃんとレヴィアタンが理解しがたかった。
「私はおみっちゃんです! エヘッ!」
融通が利かないエヘ幽霊。
「はいはい・・・・・・。」
アクトレスも呆れて付き合ってられない。
「それでは決勝戦をスタートします! 出場者の方々はスタートラインに並んでください!」
おみっちゃんたちはスタートラインに並ぶ。
「優勝するのは俺だ! 優勝賞金を恵まれない子供たちに寄付するんだ!」
大男アクトレスは優勝することを宣言する。
「優勝したら私はウイニングライブを歌うんだ! エヘッ!」
おみっちゃんの夢は江戸で歌姫になることである。
「位置について! よ~い! ドーン!」
司会進行がタフガイ・チャレンジ決勝のスタートを告げる。
「おお!」
たくさんの参加者がスタートしていく。
「悪いが優勝するのは私だ!」
悪魔の海蛇レヴィアタンだけはスタート地点に残っていた。
「手段は選ばん! いでよ! 魔界のモンスターたち!」
レヴィアタンは召喚魔法を唱える。
「スラスラ!」
「ナメナメ!」
「カアカア!」
スライム、ナメクジ、カラスなどのモンスターたちが大量に現れる。
「いけ! モンスターたち! いって出場者たちを倒すのだ!」
「おお!」
モンスターたちがタフガイ・チャレンジの出場者たちに襲い掛かる。
「ギャアアアアアアー!」
「化け物だ!? 助けてー!」
一般参加の人間が太刀打ちできる訳が無かった。
「この隙に私はゴールさせてもらおう。」
やっとスタートしたレヴィアタン。
「なんか後ろが騒がしいな?」
大男アクトレスは先頭を走っている。
「おい、無礼者。」
「誰が無礼者だ!?」
おみっちゃんはアクトレスのことを無礼者と呼ぶことにした。
「焼かれたくなかったら私より先を行けよ。エヘッ!」
おみっちゃんには何か思惑があるみたいだった。
「見えたぞ! これが火の海か!? なんて熱いんだ!?」
第一の難関。火の海は燃えていたが、まだ人間が歩けるだけの道はあった。
「ふっふっふ。私が良いものを見せてやろう。」
おみっちゃんの様子が少し変だ。
「忍法! キャンプ・ファイアの術!」
おみっちゃんは火の海に油を撒き始めた。
ボー! ボボボーボ・ボーボボ!
火は油のおかげで燃え上がった。
「熱い!? おまえなんてことをしてくれるんだ!? 焼けて燃え死ぬぞ!?」
アクトレスの苦情。
「だから言っただろう。私より先にいろって。エヘッ!」
おみっちゃんはいつでもどこでも誰とでも、いつも笑顔で明るく元気に前向きである。
「これで後から追ってくる奴はいないだろう。」
「事実上、俺とおまえの一騎打ちだな。」
二人は火の海を通過した。
「負けないぞ! チンチクリン!」
「こっちこそ! 無礼者なんかに負けないもん! エヘッ!」
おみっちゃんとアクトレスはライバル同士張り合ってタフガイ・チャレンジを楽しんでいた。
「こ、こ、これはなんだ!?」
レヴィアタンが火の海にたどり着いた。しかしエヘ幽霊の性で地獄の炎が燃え上がっていた。
「まあ、悪魔の私には関係ないことだ。」
そう言うとレヴィアタンは火の中に入って行った。
「ありがとうございました!」
相変わらずハンプトン鉱山では茶店が繁盛していた。
「なかなか金山を掘り当てたという報告がないですね?」
「そうだね。もしかしたら私たちは外れかもしれないよ。」
「ガッカリ。」
女将さんたちは鉱山の金には出会えなかった。
「はいはい! 気持ちを切り替えて! 茶店に客が来る間はしっかりお茶とお団子を売りつけて稼ぐんだよ!」
「おお!」
たくましくなったシャーロットとダイアナ。
「ここが氷の大地か!?」
アクトレスは氷の大地にたどり着いた。
「無礼者。今まで楽しかったよ。エヘッ!」
突然、優しい言葉をかけるおみっちゃん。
「どうした? 急に? 気持ち悪いぞ? おまえ熱でもあるんじゃないか?」
怪しむアクトレス。
「ここでさようならってことです! エヘッ!」
可愛く笑って見せるエヘ幽霊。
「渋い谷流忍術! 秘技! 忍法! クレパス!」
おみっちゃんは忍術を唱えた。
「なに!? 氷の大地にヒビが!?」
氷の大地に深い割れ目ができる。まさに氷河や雪山にできるクレパスである。
「安心しろ。私は歌が歌いたいだけだ。優勝賞金は恵まれない子供たちに寄付してやる。」
心の優しいおみっちゃん。
「ありがとう。これで恵まれない子供たちを救うことができる。」
アクトレスは感動した。
「チンチクリン・・・・・・じゃなかった。おみっちゃん、おまえって本当は良い奴なんだな。」
「当たり前だろ。私たちはお友達じゃないか。」
遂にアクトレスとおみっちゃんに友情が芽生える。
「じゃあな。」
「え?」
おみっちゃんはアクトレスを突き落とす。
「ギャアアアアアアー!」
アクトレスは奈落の底に落ちていった。
「これで一人片付いた。私が歌うのを阻む奴は誰であろうと許さない! エヘッ!」
おみっちゃんの夢は江戸で歌姫になることです。
「あいつを逃がしたのか?」
そこに悪魔の海蛇レヴィアタンが現れる。
「ああ。普通の人間に居られても邪魔だからな。」
おみっちゃんはレヴィアタンの存在に気づいていて、アクトレスを逃がすために態とクレパスに落としたのだった。
「出たな! レヴィアタン!? なんだ!? その姿は!?」
現れたレヴィアタンの姿は少し違っていた。
「火の海を超える時に脱皮したのだよ!」
「脱皮!?」
そう、レヴィアタンはおみっちゃんの忍術で激しさを増した火の海を超えるために脱皮して危機を乗り越えて氷の大地にたどり着いたのであった。
「今の私はマイナーなレヴィアタンではない! 脱皮してメジャーなリヴァイアサンになったのだ!」
レヴィアタンは改名した。
「何!? 進化しただと!?」
海蛇が海竜に変化したのである。
「そうだ! 私の力を見せてやる! いでよ! 召喚魔法! スライム!」
リヴァイアサンは召喚魔法も使える。
「魔法を使っただと!? リヴァイアサンめ!」
悪魔リヴァイアサンの魔法攻撃に恐怖を感じるおみっちゃん。
「スラスラ!」
スライムが現れた。
「こっちだって忍術で対抗してやる! 口寄せの術! いでよ! 忍法! ところてん!」
おみっちゃんも忍術で応戦する。
「とことこ!」
ところてんが現れた。
「スラスラ!」
「とことこ!」
どちらもゼリー状で甲乙つけがたい。
「・・・・・・。」
ゼリー対決に思わず言葉を失くす二人。
「やはりリヴァイアサン! おまえを倒すしかないようだな!」
「かかってこい! おみっちゃん! 蹴りをつけてやる!」
おみっちゃんとリヴァイアサンは改めて戦いを始める。
「くらえ! 悪魔の大津波! 必殺! ビッグ・ウェーブ!」
リヴァイアサンは大津波を起こす。
「なんじゃこりゃ!?」
大津波はハンプトンの街を飲み込んでいく。
「なんのその! 負けてたまるか! 忍法! サーファーの術!」
おみっちゃんは大津波に乗ってしまう。
「どんなもんだい! エヘッ!」
忍法が使えるおみっちゃんは無敵のエヘ幽霊である。
「なに!? バカな!? 私の大津波を乗りこなしているだと!?」
思わずリヴァイアサンも目を疑った。
「この一撃に全てをかける! 渋い谷の茶店流! 奥義! お茶とお団子ー!」
おみっちゃんが波に乗った勢いのままリヴァイアサンに斬りかかる。
「いでよ! 海竜剣! 返り討ちにしてくれるわ! 必殺! リヴァイアサン・スラッシュー!」
リヴァイアサンも剣を取り出しおみっちゃんに必殺技で対抗する。
カキーン!
おみっちゃんの刀とリヴァイアサンの剣がぶつかり合い激しい火花を散らす。
「やるな! おみっちゃん!」
「できる!? こいつ、できるぞ!?」
お互いに相手の力を認め合う二人。
バンー!
その時、タフガイ・チャレンジの会場にピストルの音が鳴り響く。
「ゴール! 優勝はアクトレスさんです!」
司会進行が優勝者アクトレスの名前を叫ぶ。
「なんですと!?」
おみっちゃんには理解できなかった。
「どういうことだ!? 奴はクレバスに落ちたはずではなかったのか!?」
リヴァイアサンも納得がいかない。
「こういうことです。」
なぜアクトレスが優勝できたのかの説明が始まる。
「クレバスに落ちたアクトレスは、そのままゴールにたどり着いてしまいまして、ゴールできたという奇跡なんですね。」
なんとクレバスの底はゴールだった。
「そんなのありか!?」
「やってられん・・・・・・。」
ガクンっとくたびれて倒れ込むおみっちゃんとリヴァイアサン。
「おみっちゃん、ありがとう。おまえのおかげで恵まれない優勝賞金を子供たちに寄付することができるよ。」
優勝したアクトレスがおみっちゃんの元にやって来た。
「あっそう。フン!」
ひねくれているおみっちゃん。
「約束だ。優勝者が歌を歌う権利はおみっちゃんに譲るよ。」
正直者のアクトレスはおみっちゃんにウイニングライブの権利を譲る。
「アクトレス! 優勝おめでとう! 私はおまえが優勝してくれると信じていたよ! エヘッ!」
歌が歌えると分かったら180度態度が変わるおみっちゃん。
「1番! おみっちゃん歌います! 曲は環境保全!」
早速歌い出すおみっちゃん。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。
「グワーッ!? なんだ!?」
「ギャアアアアアアー! 頭が割れる!?」
ハンプトンの人々がおみっちゃんの歌を聞いて苦しみ始めた。
「スラ!?」
「とこ!?」
スライムと、ところてんが不協和音に弾けて消えた。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
おみっちゃんは気持ち良さそうに歌い続ける。
「め、恵まれない子供たちに寄付が!? ギャアアアアアアー!」
アクトレスが体内爆発した。
「悪魔だ!? おみっちゃんの正体は悪魔に違いない!? ギャアアアアアアー!」
悪の組織パパラッチの幹部リヴァイアサンもおみっちゃんの前に敗れ去って爆発した。
「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった!」
おみっちゃんが歌を歌い終えて満足している。
「あれ? 誰もいない? みんな、トイレかな? エヘッ!」
あくまでも自分の歌が原因とは気づかないエヘ幽霊。
「あ、優勝賞金も置きっぱなしだ。危ないから私が貰って行きますね。これで女将さんに怒られないで済みます。エヘッ!」
おみっちゃんは大好きな歌も歌い、優勝賞金も手に入れた。
「女将さんたちは金を掘り当てたかな? エヘッ!」
女将さんの元へ向かうおみっちゃん。
「いや~、耳栓は持っておくものだね。」
「全くです。いつおみっちゃんが歌いだすか分からないですもんね。」
「大怪獣! エヘ幽霊! イギリス上陸! とか映画ができそうですよ。命が幾つあっても足りません。」
女将さん、ダイアナ、シャーロットは耳栓をしてかろうじて助かったのだった。
「女将さん!」
そこにおみっちゃんがやってくる。
「出たな! エヘ幽霊! 悪霊退散!」
本気でおみっちゃんを成仏させたいと思う女将さん。
「酷い! こんなに可愛いのに! エヘッ!」
可愛い子ぶることに余念がないエヘ幽霊。
「そういう女将さんは金を掘り当てたんですか?」
「これを見よ!」
「すごい金塊! さすが女将さんです!」
ドカーン! っと大きな金の塊が現れる。
「ただおみっちゃんの歌を聞いて爆発していった人々の金を集めたら、こんなに大きくなっただけなんだけどね。」
役に立つおみっちゃんの歌声。
「ダメですよ。女将さん。おみっちゃんに聞こえますよ。」
「おっといけない。あの子の夢は歌姫になることだった。自分が極度の音痴でデスボイスの持ち主だと知ったら、夢が粉々に壊れちゃうよ。」
「そうですよ。幽霊どころか魑魅魍魎になっちゃいますよ。」
「ああ~くわばら、くわばら。」
女将さん、シャーロット、ダイアナは優しいので、一応おみっちゃんに気を使っている。
「さあ、次のお宝が私たちを待ってるよ!」
「おお!」
女将さんのお金の亡者の旅はつづく。
「私はいつになったらロンドンにたどり着くのかしら?」
少し不安になるシャーロット王女であった。
つづく。
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