第2話 エヘッ! 2

「よろしくね。シャーロット。」

 おみっちゃんはシャーロットに手を差し伸べる。

「こちらこそ。救世主様。」

 シャーロットはしっかりとおみっちゃんの手を握り握手する。

「救世主様は照れるからおみっちゃんでいいわよ。そうじゃないと私も王女って呼ぶわよ! エヘッ!」

 エヘ幽霊は気楽に生きているので堅苦しいのが苦手である。

「分かったわ。おみっちゃん。」

「それで良し。エヘッ!」

「ワッハッハー!」

 おみっちゃん、シャーロット、ダイアナは仲良く笑い合う。

「シャーロット、あなたはどうしてイギリス兵士に追われていたの?」

 そもそもイギリス兵士なら王女であるシャーロットを守りそうなもの。

「違うわ! あれはイギリス兵に扮装したパパラッチの戦闘員よ!」

「なんですと!?」

 シャーロットを襲っていたのは悪の組織パパラッチの戦闘員だった。

「やはり時期王位継承権争いのために命を狙われているのね。」

 ダイアナはイギリス王国の虚しさを実感して死んだのでイギリスの実情が分かる。

「実は・・・・・・私の兄のジョージも何者かの手に寄って暗殺されたの。」

 悲しい暗い表情でシャーロットが呟く。

「なんですって!?」

 シャーロットの兄、ジョージは既に何者かによって殺されていた。

「次は私が殺される番なんだわ。きっと、そうよ。さっきの連中も私を狙っていたもの!?」

 恐怖で少し錯乱気味のシャーロット。

「おお! シャーロット! おばあちゃんがついてるわ!」

「おばあ様! 私、怖い!」

 うなされる孫のシャーロットをダイアナが宥める。

「大丈夫よ! 私がシャーロットを守ってみせるわ! エヘッ!」

 いつも明るく笑顔で元気に前向きなおみっちゃん。

「おみっちゃん。」

 少しシャーロットも気持ちが落ち着く。

「そうよ! おみっちゃんがいれば大丈夫よ! おみっちゃんは強いんだもの!」

 ダイアナもおみっちゃん頼りである。

「そうです! 私は強いのです! 侍と忍者の免許皆伝書を持っているからね! エヘッ!」

 カクカクシカジカで説明すると、おみっちゃんは江戸で歌姫になるために道中の危険から身を守る為に刀を振り、忍法の巻物を読み、一人前の侍と忍者の二刀流になったのである。

「侍と忍者か、足したら侍忍者ね。」

「長いから略すと・・・・・・サムニン、サムニンよ!」

「いいわね。サムニン。映画のタイトルみたい。エヘッ!」

 おみっちゃんは侍忍者になった。

「ここは危ないから敵の増援が来る前にどこかに避難しましょう。どこがいいかしら?」

 ダイアナは砂浜から逃げることを提案する。

「ポッタリーズにしましょう。あそこなら隠れる所がたくさんあるわ。」

 シャーロットはポッタリーズの街に逃げようと言う。

「ポッタリーズ? ハリーポッターのこと?」

 おみっちゃんはイギリスの地名は分からない。

「ポッタリーズはストーク・オン・トレントのことよ。陶器産業の盛んな街なの。」

 ポッタリーズは陶器産業の里らしい。

「よし! ポッタリーズに行こう!」

「おお!」 

 おみっちゃんたちはポッタリーズに行くことを決めた。

「でも、さっきみたいに悪い連中が襲ってこないとは限らないわね。どうしましょう?」

「できるだけ、戦闘は避けて目立たないようにポッタリーズに着く方法はないかしら?」

 戦闘をしてしまうと敵に現在位置を知られてしまう可能性が高いからだ。


ピキーン!


 その時、おみっちゃんは何かを閃いた。

「そうだ! 困った時は師匠を呼ぼう!」

 おみっちゃんは師匠を呼ぶことを気づいた。

「師匠?」

「はい! 私の侍と忍者の師匠です! とても強くて、とても賢い方なので、きっと助けてくれるはずです!」

 おみっちゃんは困った時は師匠に助けてもらっている。

「それは頼もしい!」

 シャーロットもダイアナも師匠に期待を膨らませる。

「渋い谷流忍術! 忍法! 口寄せの術! いでよ! 師匠!」

 おみっちゃんが忍法を唱えた。

「え?」

 丁度洗い物をしている師匠が現れた。

「もしも、お風呂やトイレに入っている時に召喚されたらどうするのだろう?」

 シャーロットの素朴な疑問である。 

「師匠! 会いたかったです!」

 おみっちゃんが師匠に駆け寄る。

「お、お、おみっちゃん!?」

 師匠はおみっちゃんに驚く。

「師匠! お久しぶりです!」

 久しぶりに師匠に会えて喜ぶ弟子のおみっちゃん。

「おみっちゃん!? あんた死んだんじゃないのかい!?」

 師匠はおみっちゃんが死んだものだと思っていた。

「元々、私は死んでいるんですけどね。エヘッ!」

「相変わらずエヘ幽霊をやってるんだね。」

 師匠はおみっちゃんにいつも呆れている。

「実は、川で洗い物をしていたらドンブラコッコ、ドンブラコッコ、大きな桃が流れてきたんです。私は桃にぶつかって気絶して川を流され海流に乗って海を漂流して目が覚めたら、ここに居ました。エヘッ!」

 おみっちゃんが日本からいなくなった原因である。

(その桃は私が江戸に人々をあんたから救うために流したんだよ! まさか生きていたとは!? 恐るべし! エヘ幽霊!)

 実は桃を流した犯人は師匠であった。

「許さんぞ! 桃太郎! 日本に帰ったら、真っ先に倒してやる!」

 冤罪で恨まれている桃太郎。

「で、おみっちゃん。ここはどこだい?」

「イギリスです。エヘッ!」

 師匠は自分が遥々イギリスに口寄せされたことを知る。

「この人たちは誰だい?」

「私のお友達のイギリスの王女様と死んだおばあちゃんです。」

 師匠は目の前にイギリスの王女と幽霊のおばあちゃんがいることを知る。

「初めまして。シャーロットです。」

「ダイアナと申します。どうも、うちの孫がおみっちゃんにお世話になってます。」

 すごく丁寧に挨拶するシャーロットとダイアナ。

「これはご丁寧に。おみっちゃんの働いている茶店の女将の蛍です。」

 師匠の名前は蛍。

「師匠! 助けてください!」

 おみっちゃんが師匠に助けを求める。

「どうしたんだい?」

 カワイイ弟子の声に耳を傾ける師匠。

「カクカクシカジカで。」

 おみっちゃんはシャーロットが王位継承権争いで命を狙われていること、ダイアナが幽霊であることを説明する。

「ほうほう。」

 ここまでの物語を理解する師匠。

「どうしましょう? 師匠。」

「それなら安全に王女様が移動できる方法があるよ。」

 師匠は簡単に解決策を思いつく。

「茶店をやりながら移動すればいいんだよ。」

 師匠の提案は江戸の時と同じように茶店をしながら移動していくというものだった。

「さすが師匠! 困った時は頼りになります! エヘッ!」

「だてにあんたの師匠をやっている訳じゃないから。」

「普通の人間に私の師匠は務まりませんからね。エヘッ!」

 息がピッタリのおみっちゃんと師匠。

「それでは移動する前に、将来の夢が歌姫になることの私、おみっちゃんが1曲きれいな歌声で歌いたいと思います!」

 おみっちゃんの夢は歌姫になることだった。

「わ~い! 聞きたい!」

「よ! おみっちゃん!」

 何も知らないシャーロットとダイアナはおみっちゃんの歌が聞けると思い大喜び。

(まずい!? このままではイギリスの王女様を殺したのが日本のエヘ幽霊になってしまう!? 日本とイギリスの外交問題だよ!? 戦争になっちゃうよ!? 絶対におみっちゃんに歌を歌わせるものか!)

 師匠はおみっちゃんの歌を知っている。

「おやめ!」

 大声でおみちゃんを制止する師匠。

「え?」

 おみっちゃんは師匠の一括で歌い出すのをやめる。

「今は王女様の命を守ることが優先だ! 早くここから逃げるんだよ!」

「はい! 師匠!」

 お世話になっているのでおみっちゃんは師匠の言うことには耳を傾ける。

「ふ~う。どうにか外交問題にならずに済みそうだね。」

 安堵のため息をつく師匠。

「おみっちゃん、旅の準備をしておくれ。服装も変えないと目立ってしまっうね。」

「はい! 師匠!」

 旅の準備は弟子の仕事。

「忍法! 旅の準備の術! いでよ! 茶店! いでよ! 制服一式!」

 おみっちゃんは忍法で茶店と茶店の制服を出す。

「さあ、王女様たちも着替えて変装してください。」

「え? どこで着替えを?」

 砂浜には身を隠す所が無かった。

「おみっちゃん。」

「はい! 師匠! 忍法! 試着室の術! いでよ! 女子更衣室!」

 誰にも見られない部屋が現れた。

「すごい! さすがおみっちゃん!」

「よく言われます。エヘッ!」

 褒められると弱いエヘ幽霊。

「さっさと着替えておくれ。」

「はい。」

 シャーロットとダイアナは更衣室の中で洋服から茶店の着物に着替える。

「おばあ様。日本の幽霊ってすごいんですね。なんでもできて。」

「そうね。イギリスにはおみっちゃんみたいな幽霊はいないわね。」

 おみっちゃんに感心している着替え中のシャーロットとダイアナであった。   

「おお! カワイイ!」

 シャーロットとダイアナが着物に着替えて更衣室から出てきた。

「そうかな。似合ってるかな。」

「可愛いよ。シャーロット。ダイアナもバッチリよ。」

「そうですか? 日本の着物を着たの初めてです。キャハ!」

 褒められて嬉しそうなシャーロットとダイアナ。


ピキーン!


 その時、師匠の脳裏に銭勘定が働く。

「おみっちゃん一人でも儲かるのに、若いカワイイ看板娘が3人。これは大繁盛しかないね! ワッハッハー!」

 師匠はお金が大好きです。

「師匠! 旅の準備ができました!」

 おみっちゃんは旅の準備を整えた。

「おみっちゃん! 茶店の時は師匠ではなく、女将さんと呼びなさいって教えただろう! 敵に私たちが普通の茶店の女将と看板娘と思わせないといけないんだからね!」

「すいません! 師匠・・・・・・じゃなかった、女将さん。」

「それでよろしい。」

 銭が儲かると思い寛大な女将さん。

「今度こそ! 出発だ!」

「おお!」

 おみっちゃんたちはイギリスの大冒険を始める。

「おみっちゃん、がんばって茶店を引いてね。」

「任せてください! 私、幽霊だから疲れませんから。エヘッ!」

 茶店はリヤカーの移動販売方式だった。

「ヌヌヌヌヌヌー!」

 おみっちゃんは一人で力強く茶店を引っ張っていく。

「すごい! おみっちゃん力持ち!」

「よく言われます。エヘッ!」

 おだてられると嬉しいおみっちゃん。

「ガンガンいきますよ!」

 おみっちゃんは茶店のリヤカーを引いていく。

「ところで王女様とおばあさんは、おみっちゃんの歌は聞いたことがないのかい?」

 女将さんはシャーロットとダイアナに素朴な疑問を尋ねてみた。

「ありません。」

「そんなにおみっちゃんの歌は上手なんですか?」

 シャーロットとダイアナはおみっちゃんの歌に期待していた。

「・・・・・・。」

 何も言えない女将さん。

「あんたたちに、これを渡しておくよ。」

 女将さんはシャーロットとダイアナに何かを渡した。

「これは? 耳栓?」

 女将さんはシャーロットとダイアナに耳栓を渡した。

「いいかい! 死にたくなかったらおみっちゃんが歌を歌い出したら耳にするんだよ!」

「は、はい・・・・・・。」

 真剣な女将さんに戸惑うシャーロットとダイアナ。


「ここいらでお茶にしよう。」

「は~い!」

 少し進んだ所でお茶休憩を入れるおみっちゃんたち。

「どうぞ。茶店名物のお茶と団子です。」

「美味しそう! ジャパニーズ・ケーキね!」

 シャーロットにはケーキとお団子の違いは分からなかった。

「お茶のいい香りですね。まるでお紅茶みたい。」

 ダイアナも紅茶とお茶の違いは感じなかった。

「美味しい! 世界にはまだまだ私の知らないお菓子があるのね!」

 お団子の美味しさに感動するシャーロット。

「あら? お茶に何か立ってますよ。」

 お茶にお茶の葉の茎が浮いていた。

「それは茶柱よ。茶柱が立つと縁起がいいと言われているわ。」

 シャーロットは茶柱を初体験した。

「ラッキー! 何か良いことがありそうですね! エヘッ!」

「そうね。きっと我が国から争いを失くして、みんなが笑える平和な国を作ってみせるわ!」

 王女としてシャーロットは自国民の幸せを願っていた。

「金を出せ! 俺たちは盗賊だ!」

 そこに盗賊が現れた。

「どこが縁起がいいのよ!?」

 シャーロットは憤慨する。

「おかしいな? エヘッ!」

 笑って誤魔化すエヘ幽霊。

「いいえ。この盗賊さんたちは運がいいのよ。なんてったっておみっちゃんの歌が聞けるんだからね。」

「女将さん、歌ってもいいんですか?」

「いいよ。せっかくの茶店のお客さん第一号だ。看板娘のおみっちゃんが歌わないで誰が歌うのさ。」

「やったー! 歌が歌える! わ~い!」

 女将さんがおみっちゃんに歌を歌う許可を出した。

「こら! おまえたち! 俺たちは盗賊だぞ! 命が惜しかったら金を出せ!」

 盗賊はお金を要求する。

「はい! 1番おみっちゃん! 歌います!」

 遂におみっちゃんが歌い出す。彼女の夢は江戸で歌姫になることだ。

「あんたたち! 早く耳栓をしな!」

 既に耳栓をした女将さんはシャーロットとダイアナに耳栓をするように促す。

「はい。」

 シャーロットは耳栓を言われるままにした。

「私は幽霊なので耳栓をしなくても大丈夫なのでは?」

「甘い! あの子の歌は幽霊も成仏させちゃうよ!」

「え? おみっちゃんの歌は讃美歌かレクイエムですか?」

 ダイアナはおみっちゃんの歌越えを知らなかった。

「いいから! 大事な孫娘を一人にしたくなかったら耳栓をするんだよ!」

 何かに恐れている女将さんの様子は尋常ではない。

「はい!」

 とりあえず急いでダイアナは耳栓をした。

「曲は世界平和! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主だった。

「ギャアアアアアアー!」

「耳が潰れる!? 頭が割れそうだ!?」

「俺は何を聞いているんだ!?」

「悪霊の神々が降臨されだんだ!?」

 盗賊たちはおみっちゃんの歌声に酔いしれた。

「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」

 おみっちゃんは自分の世界に入って歌を歌っているので何が起こっているのかは知らない。

「ウギャアアアアアー!」

「アベシー!」

「ヒデブ―!」

 盗賊たちは耳から体内爆発を起こし粉々に爆発して消えていった。

「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ちよかった! エヘッ!」

 おみっちゃんは一曲を気持ちよく歌い終えた。

「あれ? 盗賊さんたちがいない? 帰っちゃったのかな?」

 おみっちゃんは盗賊がいなくなった原因が自分の歌の性とは知らない。

(さすがおみっちゃん。あんたの歌は世界でも通用するよ。江戸には帰らないで世界の歌姫になっておくれ。)

 女将さんは江戸の人々の幸せを願った。

「わ、私は今までにこんなに酷い光景を見たことはない!? 一瞬で、一瞬で歌を聞いていただけの盗賊が一掃された!?」

「なんて恐ろしいことなの!? このままでは我が国が、イギリスが滅んでしまう!?」

 シャーロットとダイアナは世にも恐ろしい出来事体験した。

「だから言っただろ。耳栓が必要だって。」

 女将さんは得意げに話す。

「どう? どう? シャーロット。私の歌は?」

 おみっちゃんが興味津々に歌の感想を求めてくる。

「おまえは私をころ・・・・・・。」

 シャーロットが感情に任せておみっちゃんの殺人ソングの感想を言おうとする。

「いけない! シャーロット!」

 それをダイアナが遮る。

「おみっちゃんの夢は歌姫になることよ! もし自分が極度の音痴でデスボイスの持ち主だと知って、自暴自棄になって歌いまくられたら、イギリス国民は一瞬で滅んでしまうわ!」

 おみっちゃんの歌声は国を滅ぼす最終兵器扱いされる。

「なななななっ!?」

 シャーロットは言葉を喉に呑み込みこらえる。

「おみちゃんの歌声はとっても良かったわよ! あははははははっ・・・・・・。」

 シャーロットはおみっちゃんの歌を称えぎこちないが笑って見せた。

「本当! 嬉しい! 私は歌姫になって、多くの人々に夢徒感動を与えるんだ! エヘッ!」

 大喜びのおみっちゃんの志は高い。

「なれるわ! おみっちゃん! あなたなら多くの人々に愛される歌姫に!」

 シャーロットはイギリス国民のために、絶対におみっちゃんの機嫌を損ねないようにしようと思った。

「ありがとう! シャーロット!」

「私もおみっちゃんが歌姫になれるように応援するわ!」

 おみっちゃんとシャーロットの友情が深まった。

「それでは皆様のアンコールに答えて、もう一曲歌いたいと思います!」

 機嫌がよくなったおみっちゃんがもう一曲歌おうとする。

(え!? 誰もアンコールなんてしてないわよ!? 助けて! 神様!)

(やめて! イギリスで歌わないで! 日本に帰って歌ってちょうだい!)

 人類抹殺ソングが続くとシャーロットとダイアナは今度は自分の命も助からないと覚悟した。

「おみっちゃん! 早く片付けておくれ! また盗賊がやって来ちまうよ。」

 女将さんが助け舟を出す。

(女将さん! ナイス!)

 神に祝福された気持ちになるシャーロットとダイアナ。

「ええ~!? でもシャーロットとダイアナが私の歌を聞きたいって。」

 抵抗するおみっちゃん。

(言ってません! 言ってません! 神に誓って!)

 自分の潔白を神に誓うシャーロットとダイアナ。

「アルバイトの時給からサボった分を引くけどいいのか? 江戸に行く旅費が貯まらないよ?」

「やります! 片付けでも荒い物でも何でもやります! やらせてください! だからお給料を減らさないで下さい!」

 おみっちゃんの弱点はお給料だった。お金を貯めて江戸に行かなければ歌姫にはなれないからだ。

「ふ~う。助かった。」

 シャーロットとダイアナはその場で力尽きて座り込む。

「さあ、今の間に砕け散った盗賊から戦利品でも集めてくるか。イヒッ!」

 女将さんは茶店とは別に副業として、おみっちゃんの歌を聞いてお亡くなりになった人々の所持品のお金やお宝を貰っている。もちろん茶店より副業の方が儲かる。

「行くぞ! ポッタリーズ!」

「おお!」

 おみっちゃんたちは旅を続ける。

「おみっちゃん、あなたって悪魔?」

 シャーロットは素直な気持ちで尋ねてみた。

「いいえ。私は幽霊です。エヘッ!」

 おみっちゃんはいつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊です。

 つづく。

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