茶店の歌姫2
渋谷かな
第1話 エヘッ! 1
ザ・・・・・・ザザ・・・・・・。
砂浜に波の音が心地よく聞こえてくる。
「・・・・・・zzz。」
浜辺に一人の少女が眠っていた。
「・・・・・・ん・・・・・・んん。」
そして目覚めた。
「青い空、白い砂浜、カゴメが飛んでいる?」
少女は目に見えるものを言ってみた。
「ここはどこだ?」
少女は自分の居場所が分からなかった。
時代劇救世主伝説 茶店の歌姫
「ここは日本じゃないのは確かだ。」
周りを見渡した少女は日本からやって来たらしい。
「まさか!? 私は異世界ファンタジーにやってきてしまったのでは!?」
建物などは日本風ではなく中世ヨーロッパ風だった。
「でも、どうして私はここにいるんだろう?」
少女は考え込む。
「そうだ! 私は川で洗濯をしていて、ドンブラコッコ、ドンブラコッコと大きな桃が流れてきて、ぶつかって気絶して川に流されたんだ! そして気がついたらここにいた!」
これが少女がここにいる理由である。
「私って、漂流してたんだ。なんだ~、分かったら、スッキリしたな。エヘッ!」
少女は悩み事が解決したのでスッキリして喜んでいた。
「って、スッキリするか! 覚えてろよ! 桃太郎!」
ブラックリストに桃太郎の名前を書き込んだ少女。
「ここがどこだか分からないのも困るし、一人ボケにも限界があるから地元のお友達に聞いてみるか。」
少女は一人でいるのが寂しくなっていた。
「茶店流忍法! 口寄せの術! いでよ! 地元のお友達!」
少女は忍法を唱えた。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」
少し年上のきれいなお姉さんが現れた。
「ここはどこ!? 私は死んだはずなのに!?」
きれいなお姉さんは死んでいた。
「私が呼び出したの! エヘッ!」
少女は胸を張って言い放つ。
「あなたは誰?」
きれいなお姉さんが尋ねてみた。
「私はおみっちゃん。あなたは?」
少女の名前はおみっちゃん。
「私はダイアナ。」
きれいなお姉さんの名前はダイアナ。
「よろしくね! ダイアナ!」
「おみっちゃん、あなたはサモナーなの? それともネクロマンサー?」
サモナーは召喚士。ネクロマンサーは屍術師である。
「いいえ! 私は忍者です! エヘッ!」
おみちゃんは忍者だった。
「見て見て! 師匠から頂いた忍者の免許皆伝書です! 本物ですよ! 私って、すごいんです!」
おみっちゃんは忍者の免許皆伝書を見せびらかす。
「すごい! ジャパニーズ・ニンジャ! 私、忍者を見たのは初めてよ! すごい! すごい!」
忍者を見て大喜びのダイアナ。
「そう。じゃあ、もう少しだけサービスしちゃおうかな。火を出します! 水も出ます! 雷も落とします! 風も土も自由自在でございます! エヘッ!」
差し詰め一人かくし芸大会である。
「おお! エキサイティング! ワンダフル! ビューティーフル! アメガフル!」
ダイアナは大喜びである。
「ダイアナ。ここはどこなの?」
やっと本題に入る。
「ここは・・・・・・イギリスです!」
「なんですと!?」
おみちゃんはイギリスにいた。
「私はイギリスまで漂流してきたというのか!?」
おみちゃんは日本からイギリスまで気絶している間に海を流されてたどり着いた。
「いや~、その設定は無理でしょ?」
思わずダイアナが止めに入る。
「大丈夫! なぜなら・・・・・・。」
「なぜなら!?」
ここで一度言葉をためるおみっちゃん。
「私は幽霊だからです!」
おみっちゃんは幽霊だったんのです。
「だから日本からイギリスまで漂流しても食べ物も水も鮫に襲われる心配はないから不思議はない! エヘッ!」
幽霊って便利ですね。
「でも、幽霊って足がないわよね?」
ダイアナは足が無い。おみっちゃんは足がある。
「これも忍術よ! 忍法! 義足の術よ!」
「おお! すごい!」
「忍法が使えれば何でもできる! エヘッ!」
おみっちゃんの足は忍法で付け足したおまけであった。
「何とかして日本へ帰らなくっちゃ。」
遠くを見つめるおみっちゃん。
「・・・・・・日本って遠いね。」
「私なら力になれるかもしれないわよ。イギリスのことは詳しいし。ほら、私は地元の幽霊だし。」
「ありがとう。ダイアナ。」
「困っている人は放っておけないわ。それに私とおみっちゃんはお友達だからね。」
「私とダイアナはお友達! エヘッ!」
おみっちゃんはダイアナと友達になった。
「ダイアナ。あなたはどうして幽霊になったの? 私は大好きな歌を歌っていたら気がついたら幽霊になっていたの。エヘッ!」
おみちゃんは歌が好きである。
「私が幽霊になった理由? ・・・・・・はあっ!?」
「どうしたの? ダイアナ?」
その時、ダイアナは何かを思い出した。
「私は、私は殺されたんです!」
「なんですって!?」
ダイアナは暗殺されていた。
「誰に殺されたか分かっているの?」
「はい。悪の組織パパラッチです!」
「悪の組織パパラッチ!?」
思いがけない悪の組織の登場。
「でも、どうしてダイアナが命を狙われるのよ?」
「実は・・・・・・。」
「実話?」
「私はイギリスのロイヤル・ファミリーだったのです!」
「ロイヤル・ファミリー!?」
ダイアナはイギリス皇室の関係者であった。
「私たちはイギリスの王位継承権を巡って、常に他の皇族から命を狙われているんです。きっと他の皇族がパパラッチを使って私を襲わせたんです。」
「酷い!」
熾烈な王位継承権争い。
「私の夫や子供たちが怖い目に合っていないか心配だわ!」
「ダイアナも襲われたし、もしかしたらご家族も・・・・・・。」
「そ、そんな!?」
ダイアナは家族を心配する。
「私の家族なら、おみちゃんを日本に送り届けるのを助けてくれるはずです!」
「行こう! きっとダイアナの家族は生きてるよ!」
「おみちゃん、あなた現金な性格ね。」
「よく言われます。エヘッ!」
イギリスに行ってもエヘ幽霊は健在である。
「私がダイアナの家族を守ってみせるよ。だって私とダイアナはお友達だもの。」
「ありがとう。おみちゃん。」
おみちゃんとダイアナに友情が芽生える。
「キャアアアアアアー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その時だった。少女の悲鳴が聞こえてくる。
「行ってみよう!」
おみちゃんたちは悲鳴が聞こえた方に向かう。
「あれはイギリス兵!」
駆けつけるとイギリス兵たちが少女一人を襲っていた。
「危ない! 助けなきゃ!」
おみちゃんは困っている人を見捨てられない性格をしている。
「死ね!」
イギリス兵士が少女を斬りつけようとした時だった。
「キャアアアアアアー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
再び少女の悲鳴が響き渡る。
カキーン!
危機一髪の少女をおみちゃんがイギリス兵の剣を刀で受け止める。そして払いのけ相手と距離ができる。
「あ、あなたは!?」
「私はおみっちゃん。通りすがりのジャパニーズ・サムライよ。エヘッ!」
おみっちゃんは侍でもあった。
「見て見て! 師匠から頂いた侍の免許皆伝書です! 本物ですよ! 私って、すごいんです!」
おみっちゃんは忍者の免許皆伝書を見せびらかす。
「クレイジー・ガール?」
少女のおみっちゃんの第一印象は狂った女の子だった。
「ダイアナ、クレイジー・ガールって、どういう意味?」
おみちゃんは英語が分からないのでダイアナに尋ねる。
「狂った女よ。」
「へえ~、そうなんだ・・・・・・よく言われます! エヘッ!」
言われ慣れているので動じないおみっちゃん。
「あなた、ピンチなのに、どうして笑っていられるの?」
「いつも笑顔で明るく元気に前向きに! それが私です! エヘッ!」
おみっちゃんは遠慮なくどんな時でも明るい。
「殺されるかもしれないのよ!? あなた死ぬのが怖くないの!?」
「あ、それは大丈夫です。」
平然とした表情をしているおみっちゃん。
「え?」
「だって、私、幽霊だもん! エヘ!」
おみっちゃんは既に死んでいる。
「ええー!? 幽霊!?」
少女はおみっちゃんが死んでいると聞いて驚く。
「細かい話は後にしましょう! 先にこいつらを倒すわ!」
おみっちゃんは刀を構えイギリス兵士たちと対峙する。
「なんだ? この奇妙な女は? みんな! やっちまえ!」
「おお!」
イギリス兵たちがおみっちゃんに襲いかかる。
「かかってこい! お相手仕る!」
おみっちゃんはイギリス兵たちと戦いを始める。
「えい! やあ! たあ!」
「ギャ! ギャ! ギャアアアアアアー!」
おみっちゃんは剣術でイギリス兵たちを次々と倒していく。
「キャハハハハー! キャハハハハー! キャハハハハー!」
狂喜乱舞の刀裁きで残すイギリス兵は後一人。
「つ、強い!? なんなの!? 本当にクレイジーだわ!?」
少女はおみっちゃんの戦いぶりが意外だったので驚いた。
「なんなんだ!? おまえはいったい何者だ!?」
イギリス兵もおみっちゃんの強さに足がたじろぐ。
「私の名前はおみっちゃん! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
おみっちゃんの夢は歌姫になること。
「誰もおまえの夢なんか聞いてない! ふざけやがって! 殺してやる!」
イギリス兵が剣を振り上げ襲い掛かってくる。
「生きてるくせに夢がないなんて悲しい奴だな。死んでから後悔しても遅いのに。生きている有難みを教えてやる!」
おみっちゃんは刀を構える。
「渋い谷茶店流奥義! お茶とお団子!」
「ギャアアアアアアー!」
奥義を刀で放ったおみちゃんはイギリス兵を倒した。
「どうだ? 生きていると痛いんだぞ。死んだら痛みなんて感じないんだからな。エヘッ!」
戦いに勝っても、おみっちゃんエヘエヘ笑っている。
ギュッ!
その時、泣きながら少女が力強くおみっちゃんに抱き着いてくる。
「助けて! 助けてください! 私、命を狙われているの!」
少女は命を狙われていた。
「え?」
戸惑うおみっちゃん。
「きっと、あなたは天国のおばあちゃんが私を守る為に遣わした救世主に違いない!」
「いいえ。私はおみっちゃんです。エヘッ!」
「こんな時にふざけないで。」
「よく言われます。エヘッ!」
涙の展開でも笑顔を絶やさないエヘ幽霊。
「命を狙われてるって、あなたはいったい何者なのよ?」
「私はイギリス皇室! ウイリアム王子の長女! 王位継承権順位第4位! シャーロット・オブ・ケンブリッジだ!」
少女はイギリスの王女シャーロットだった。
「ええー!? あなたイギリスの王女様なの!?」
シャーロットの正体を知って衝撃を受けるおみっちゃん。
「そうよ。私はイギリス王女シャーロットよ。」
「見えない~。」
疑うおみっちゃん。
「しゃ、しゃ、シャーロット!?」
「ダイアナ?」
幽霊友達のダイアナの様子が少しおかしい。
「シャーロット!」
ダイアナは涙を流し体が震えている。
「どうしたの? ダイアナ?」
「シャーロットは私の孫です!」
「ええー!? なんですと!?」
シャーロットはダイアナの孫娘だった。
ピキーン!
その時、シャーロットが何かを感じとる。
「あれ? 誰かが私の名前を呼んだような?」
シャーロットはダイアナの気配を感じている。
「ダイアナよ。あなたのおばあちゃん。」
「嘘を吐くな! おばあ様は亡くなっている!」
「嘘じゃないもん! あなたの目の前にいるわよ!」
「誰もいないわよ!」
生きているシャーロットには幽霊のダイアナの姿は見えない。
「あ! シャーロットには幽霊のダイアナの姿は見えないんだわ。」
おみっちゃんは良い所に気がついた。
「それなら私と同じように幽霊だけど姿が見えるようにすればいいのね。忍法! 幽霊実態化の術! えい!」
忍法って便利ですね。エヘッ!
「お、おばあ様!?」
シャーロットにも幽霊のダイアナの姿が見えるようになった。
「シャーロット!」
ダイアナはシャーロットに涙を流しながら強く抱き着く。
「おばあ様! ウエエエエー! エンエンー!」
シャーロットも泣き叫びながらダイアナを強く抱き締める。
「感動の再会ね。なんて良い光景なのかしら。ウルウル。」
もらい泣きするおみっちゃん。
「そうか! 私が口寄せの術で地元の幽霊を呼び出したらダイアナが現れたのは運命ね! ダイアナは死しても、なお愛しい孫娘であるシャーロットを守護幽霊として守り続けていたんだわ!」
ダイアナはシャーロットを守り続けていた。
「おみっちゃん。私の孫を、私のシャーロットを守ってくれる?」
ダイアナがおみっちゃんに問いかける。
「当たり前でしょ! 私たちはお友達なんだから! エヘッ!」
「おみっちゃん! ありがとう!」
「困った時はお互い様よ! エヘッ!」
おみっちゃんの新たな冒険が始まった。
つづく。
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