第六話 最強の一太刀《ラグナロク》
俺たちは早速玉座にあった神龍の指輪を装備する。
俺は敵の攻撃を右に左に避けながらステータスを確認する。
「よし、バッドステータスは無くなってるな。これでいつも通り戦える。と言っても、まだレベルは300差あるんだけどな」
「そうよね、こんなの誰が見たって絶望的な状況よね。なんだったら最初から戦うことを諦めてしまう人が出てくるくらいには、ね」
俺は隣で敵の攻撃を器用に避けながら魔法を放っている
「ふっ、口では絶望だの諦めるだの言ってるが、とてもそうは見えないぞ?むしろこの状況を楽しんでいるようにすら見える」
クレハはこちらに顔を向けてニッと笑う。それはまるで獰猛な肉食獣のようだ。
「それを言うならあんただって楽しそうに見えるけど?」
「はっ、当たり前だろ?だって俺たちは」
「「ゲーマーなんだから!!」」
その言葉を合図に、俺は避けることから突撃することにシフトチェンジする。
「クレハ、援護を頼む!」
「わかってるっての!『氷魔法:
俺が
氷槍は全弾命中し、その後氷槍は勢いよく破裂して辺りを真っ白い霧で覆い隠す。
俺は大きく前へと跳躍をし、霧の中へと迷わず突っ込んでいく。敵が俺を見失ったとしても、俺が奴のような巨体を見失うはずがない。
俺は迷いなくその方向へと進んでいく。霧を抜けて
「『スキル:激流斬』」
俺は自分の間合いに宝玉神竜が入るのと同時にスキルを発動する。すると、俺の持っている両手剣が刀身を青く染める。それから俺は二回転三回転と勢いをつけていき、そのまま流れるように宝玉神竜へとダメージを入れていく。3回、4回と敵を切るごとにみるみる敵のHPバーが削れていく。
「『スキル:殺龍剣』」
俺は丁度
殺龍剣は龍種の相手に五倍のダメージを与えることができるという強力なスキルだ。欠点としては龍種以外だと通常攻撃の十分の一も火力が出ないことだ。用は龍専門のスキルというわけだ。
俺は流れる水の如くスキルを切り替え、赤く染まった両手剣を連続で宝玉神竜へと叩き込む。
『グギャァァァァ!!』
「ちっ!」
宝玉神竜はウネウネと暴れ回り、纏わり付く俺を薙ぎ払う。敵のHPバーを確認すると、HPは半分を切っていた。それに比べて俺たちのHPは僅かに削れているだけで、全くと言っていいほど危なげがなかった。
俺は後方に一回転してからクレハの横に着地する。
「クレハ、そろそろ決めにいかないか?」
俺は横目で
「それは構わないけど、あとHP半分もあるのよ?どうやって仕留めるつもりよ」
クレハ目を細めて俺を見てくる。だが、俺だって考えなしにこんなこと言ってるわけじゃない。
「クレハ、大技を使う。また時間稼ぎを頼む」
「はっ!?また!?あの巨大蛇相手にまたタイマン勝負しろって?」
俺はニヤリと笑みを浮かべる。
「クレハじゃ無理か?」
クレハもニヤリと笑う。
「上等じゃない。やってやるわよ!時間を稼げばいいんでしょ。任せなさい!」
「あぁ、言い忘れてたけど俺この場から動けないから護衛も頼んだぞ」
「はぁ!?それ先に言ってよね!なんで追加注文するかなぁ?まあいいけどさ。全て私に任せなさい。言われたことはきっちりこなしてみせるわ」
「頼りになるな。頼んだぞ
「えぇ、最後は任せるわ
俺はそれだけ言うと、大技発動の準備に移る。といっても、俺自身が何かやるわけじゃない。言ってしまえばこれはゲームだから、俺が捜査するまでもなく自動的に処理してしまうのだ。その中で、大技ともなるとスキル発動までの時間が少しかかるのだ。今回発動するスキルはJFOでも火力トップを誇る最強のスキルなのだが、それと同時に諸刃の剣でもある。迂闊に何度も使えるスキルではない。最強のスキルが無償なはずがない。だが、敵を確実に仕留められるという場面ではこれ以上ないくらい強力なスキルとなるのだ。用は使う場所さえミスしなければ強力なスキルなのだ。
俺は目を瞑り、スキル発動までその場でジッと待つ。もしこの間に奴の攻撃が入れば、スキルはキャンセルされてしまう。そういう面でもこのスキルは欠点だらけと言える。
少し目を開けてみると、目の前でクレハが文句を言いながらも敵の攻撃を捌いていた。
「うぅ、私ウナギとか蛇って苦手なのよね。なんかキモいし。あぁ、もう!さっさとくたばれ!『光魔法:
クレハが魔法を発動すると、敵の下から巨大な光の柱が天へと昇っていく。それは確実に敵のHPを削っていく。
だが、宝玉神竜もただ黙って攻撃を受けるだけなわけもなく、今度は敵からこちらへと攻撃が開始される。
「なっ!?ここに来てブレス!?やばい、私の力であれを止められるわけ....。いえ、弱音を言っちゃダメ。やるのよ、私!」
クレハは大きく後ろへ飛んで俺の前に立つ。そして杖を体の前に構えて魔法を詠唱する。それと同時に宝玉神龍の口から虹色の
「私のMPが尽きようが関係ない!全力全開でいくわ『神聖魔法:
クレハが魔法を発動すると、俺たちの前に巨大な光り輝く盾が出現する。
神聖魔法:
今も俺の目の前で敵の
「くっ、うぅぅぅぅ。まずい、予想以上に
クレハは苦しそうな声をあげている。
「あと少し。あと少しだ!もう少し粘ってくれ!」
「あぁもう!仕方、ない、わね!耐えてやる、わよ!!あんたしっかり決めなさいよ、決めなきゃ許さないんだから!『強化魔法:
クレハが魔法を発動すると、
強化魔法:
「こいつ、どんだけ火力高いのよ。こっちは
クレハは俺の方へと振り返る。俺はそれに対して不敵な笑みで返す。
「あぁ、待たせたな」
「あんたはいっつも遅いのよ」
俺は一歩前に出て両手剣を腰溜めの位置に構える。
「『スキル:
俺の両手剣の刀身が黒く染まる。そして、それと同時にバチバチと
俺はチラリと自分のHPバーを見る。残りHP残量1。
再び俺は目の前の敵に目を向ける。宝玉神龍は迫り来る俺から逃げるようと、上空へと登って行こうとする。
だが、
「遅い。今更逃げようったって遅いんだよ!はぁぁ!!」
俺は気迫の籠った声と共に両手剣を上段から思い切り振り下ろす。それは見事に宝玉神龍に命中し、刀身がスルッと敵の体を真っ二つにする。宝玉神龍は声にならない悲鳴を上げながらキラキラと光の粒子となって消えていった。
俺はスタッと着地すると、両手剣を背中にある鞘に収めてから後ろを振り返る。
「終わった、な」
クレハ床に仰向けに倒れながらもこちらに顔を向けてグッとサムズアップしてくる。俺もそれにサムズアップで答える。
上を見上げれば未だにキラキラとした光の粒子が天に登っていた。それを改めて目にすると、本当に終わったのだと実感したのだった。
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