第二話 ジュエル・ファンタジー・オンライン

 ユーザー人口二億人。ゲーム界において、世界最高の人口を誇るジュエル・ファンタジー・オンライン(Jewel Fantasy Online)

通称JFO。


 剣と魔法を自由自在に扱うことができるVRMMORPGである。


 このゲームの世界では主に、五つの大陸に分かれている。


中央側に位置するダイヤモンド大陸。

南側に位置するルビー大陸。

北側に位置するサファイア大陸。

西側に位置するエメラルド大陸。

東側に位置するアレキサンドライト大陸。


 そして、プレイヤーの誰かが各大陸にある五つのダンジョンをクリアすることによって、最果てにある六つ目の大陸が開放される。その大陸の名は、黒曜石オブシディアン大陸。そこにはJFO最難関のダンジョンが存在している。このダンジョンへ入るためには、五大陸にある五大ダンジョンをクリアする必要があるのだ。そして、生半可なプレイヤーレベルでは到底太刀打ちできない。このダンジョンの適正プレイヤーレベルは500。

平均プレイヤーレベルは100前後。そう考えるとかなりやばいダンジョンだということがわかる。


 だが、この世界には攻略組と呼ばれるものがある。それはその名の通り、攻略を進める班のことを指す。そこに入るには最低レベル200を超えていなければならないという条件が存在している。


 JFOをやっている人たちからは、憧れの眼差しを浴びており、誰もが入団しようと必死になってレベルを上げている。


 まあ説明はそんな感じで、俺は今日もパートナーと一緒にダンジョンに潜っていた。





「クレハ!そっちに行ったぞ!」


 俺は目の前の敵を斬り伏せながら後ろに大声で呼びかける。


「大丈夫、任せて!」


 クレハと呼ばれた燃えるような緋色の外套を羽織った少女は、杖を振って魔法を発動させる。


「『炎魔法:炎槍ファイアーランス多重詠唱!』」


 そう言うと、クレハの周りに数え切れないほどの魔法陣が出現する。10や20なんてもんじゃない。下手をすれば100を余裕で超えてくる。だが、それくらいしなくては今目の前にいる敵には勝てない。出し惜しみなんてしたら速攻で首を落とされる。それだけ敵が強敵なのだ。


 クレハの周囲の魔法陣から、炎の槍が無数に飛び出す。それは四足歩行の亀のようなドラゴンのようなものに向かって全弾放たれる。


 ドガンッと大きな音を立てて全弾命中する。


「よし、やったわ!」


 クレハは小さく飛び跳ねながら喜んでいる。だが、本当に今ので倒せたのだろうか?

今はクレハの放ったファイアーランスの衝撃で起きた砂埃で中の様子を確認することができない。


(一応念のためにスキルを使うか。『スキル:生命探知ライフサーチ』)


 俺を中心に、水色の波紋が広がっていく。このスキルはその名の通り、生命あるものを探知することができる。だが、あまり使い勝手がいいものではない。ダンジョン内で使えば魔物を探知することができるのだが、そこにいるプレイヤーも引っかかってしまうのだ。だが、魔物の位置さえ分かればかなり有用なスキルではある。


 俺は自身の感覚に意識を向ける。すると、生命の反応が俺を含めて3つ出現した。


「まずい!」


 この場にプレイヤーは俺とクレハしかいない。すると、もう一つの反応は必然的にさっきクレハが倒したはずの魔物だとわかる。


 俺はクレハに向かって全力で駆ける。


 クッソ、間に合え!


『グギャァァァァ!』


 砂埃の中からクレハに向かって魔物は突進してくる。あれに当たったらクレハの防御力なら一撃でお陀仏だろう。


 クレハその場に固まって動くことができない。


「か、カイン!」


 クレハが俺の名を呼ぶ。心なしか足により力が篭った気がする。


 魔物がクレハに到達する直前で、俺はクレハを抱き抱えてその場を離れる。俗に言うお姫様抱っこというやつだ。


「何やってんだよ、ここは最難関ダンジョン。それも、ボス部屋の一歩手前だぞ?敵もそこまで甘くはない」


「そんなことわかってるし!」


 クレハは頬をぷくぅっと膨らませている。


「それだけ元気があるなら行けそうだな」


「あんま私を舐めないでよね!」


「さっきまで震えてたくせに」


 俺はふっと鼻で笑う。


「え、演技だし。別に怖かったから震えてたとかじゃないんだからね!」


「あー、はいはい。わかったからあんま暴れるな」


 俺はとりあえず魔物から離れたところに着地して、クレハを下ろす。


「それじゃあ、奴を倒すか」


「えぇ、もちろんよ!」


 それから俺たちと亀型の魔物による第二ラウンドが開始した。





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