第2話
山村みすずは、いつもと変わらない朝を迎えていた。
相変わらず母に起こされて食卓へ向かうと父は既に出勤した後で一人分の朝食がテーブルの上に「いつまで待たせるんだ!」と、言いたげに置かれていた。
「早く食べないと、また遅刻よ!高校に入っても全然変わらないんだから。」
食卓に着いたとたんに、頭の上から母の声が飛んできた。
「わかってる。」
他にも言いたい言葉がなくはなかったが他の言葉で反論しようとすると全部返されてしまうので最近は「わかってる。」が、みすずの常套句になりつつあった。
そう、すべてわかってるのだ。
しかし、わかってる事と、出来る事とは違うのだよ母上。
みすずは心の中で母に
勿論、声には出さない...。
声に出せばまたクドクドと正論という名の小言を聞かなければならないからだ。
朝食という貴重な時間を少しでも有意義なものにするには、それは、やってはならない愚策である事をより一層わかっていたのである。
みすずがおもむろにテレビをつけると母は何かしら言いたげな素振りを見せたが、ひとつため息を付くとそのまま洗い場の方へ消えていった。
テレビからは、双子の芸人が朝からいつものギャグをやっては司会者の苦笑いを誘っていた。
「幽体離脱うう!」
「おまえら、いつまでそれやるつもりだよ!」
司会のツッコミで会場はドッと笑いに包まれた。
みすずも釣られて笑った。
「アハハハ・・・は・・・。」
笑いながらみすずは昨夜の不思議な光景を思い出していた。
いったいなんだったんだアレは...。
空一面の紫の光...いや、光だったかどうかも怪しい不思議な光景。
アレを見たせいで、変に昂奮して眠れなかったのだ、その事を母に言うべきかどうか、まだ決めかねている。
今のタイミングで言えば必ず、くだらない言い訳かなにかと誤解されかねない。
アレコレ考えながら朝食を食べていたので、母が真後ろに立っているの事に気がつかなかった。
パシン!いい音がして、次の瞬間、頭を叩かれたのだと、みすずは気がついた。
「あんたなにノンビリ食べてるのよ!」
母の声が後ろから聞こえてきて、ようやく何があったのか、理解したみすずは、クルンと後ろを向いた。
「叩くことないでしょ!」
そう言ったつもりだったが、何故か声になってない。
しかも、なぜか母親は口をパクパクさせてこちらを見ている、まるで...。
まるで怪物でも目撃したような目で...。
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