今年で12歳の弟がいる。彼にも多少自立心が芽生え、時々親と対立する。真っ向から対立するのではなく、隠れるようにして囁く。親が嫌いだと。私には遠慮なくそんなことを言ってくる。私自身に反抗期はあったと思っている。時々耐えきれず癇癪を起こしていたこともあるが、学校に行かないことが親に対する一番の抵抗だった。彼もまた学校には行かない。彼には自分の部屋がないので、親を遠ざけ私の部屋で引きこもっている。


甘やかしすぎたのかもしれないが、彼は好き嫌いが多い。特に食べ物に関しては気を遣う。魚はほぼ食べないし、ピーマンもナスも食わない。野菜全般は食べないが、味噌汁は食べる。私は食べ物なら何でも食べるが彼は好きなものしか食べない。私は料理の作り手の苦労や生命の尊さを考えながら食べる。私と同じように食べろと言っているわけではないが、食べ物を残すときに罪悪感くらいは感じてほしい。


彼の育ちについては私よりも恵まれていない。精神不安定で非行に走る私が与えた影響は私が考えるよりも大きい。その償いとして私か弟が自立するまでは生活費を払うつもりだ。彼に人生の楽しみを教えるのも一番そばにいる長男としての義務である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る