クレーンゲーム

常務が言った。

「今晩暇かな?どうだい、一緒にクレーンゲームでも」

「ありがとうございます。でも私、クレーンゲームはあまりしたことが無くて…」

せっかくの常務の誘いを無下に断る訳にはいかない。

「ハッハッハ、技術なんていらないよ。まぁ、たまには私に付き合ってくれ」

そう言って、常務は私の肩をポンと叩いた。

………

そこはゲームセンターの地下だった。

常務と私はスーツ姿の見知らぬ会社員達と共に、狭い部屋で雑魚寝をした。

間もなくして、天井からクレーンが降りてきた。クレーンは常務に狙いを定めたが、掴み切れず、その場に落とした。

「君も、もう少し歳をとれば分かるよ。誰かに狙われるというのは、嬉しいものだとね」

そう言って笑う常務の右頬には、今クレーンで擦られた真新しい傷があった。

私は天井で揺れるクレーンを眺めながら、鞄の中のオロナインH軟膏の事を考えていた。

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