ラノベホイホイ~蟻地獄のような罠を越え、神に復讐しろ!

3匹の子猫

第1話

 「ラノベ」…ライトノベルの略称で、ファンタジー・SF・ミステリー・ラブコメなど非日常的なストーリーを描く物語のことを指すことが多い。異世界に飛ばされたり、特別な能力や魔法を得ることにより日常ではあり得ない活躍をしたり、可愛すぎる女の子からモテモテになったり…と、現実ではあり得ないような、夢のような展開が待っている物語だ。


地球の…特に日本では、多くの若者がこのラノベを読み、いつか自分もこんな風に突然神様に呼ばれて、凄い力をもらい、異世界へと旅立つことを夢見る。


この物語はそんなラノベに憧れている者たちの物語だ!




キターーー!!この展開はラノベ異世界転生パターンだ!



 俺は先ほどまで、確かに学校の授業を受けていた筈だ。そこに突然魔法陣のようなものが現れ、俺を飲み込んだ。今俺は、ただ真っ白な空間に存在している。



きっとこの後は、神様なんかが現れる筈だぞ!



『話が早いのう!』



おおー!これは頭の中に声が直接聞こえてくる…これがテレパシーって奴か!!ということは…



『そうじゃ、儂がお前を呼び出した神じゃ!名をファーレという。地球のある世界とは違う世界の神をしておる。』



いかにも神という神々しい雰囲気を漂わせ現れたファーレは、俺に向けて優しく微笑んだ。



神様キターーー!!ラノベのように心を読まれてるの確定ーー!



『儂のことを見ても驚かんのか?変わった奴よのー。』



「それは俺がこの展開をずっと待ちわびていたからです!!ファーレ様の世界に俺を転生されようとしてるんですよね?」



『そうじゃ!儂の世界「ポータルマリナ」へ転生させたいと思うておる。お主の魂から、別の世界に行きたいという思いが溢れておったからな!その強い思いがなければ理を越えて別の世界に魂を移すことは叶わぬのでな。


お主に問おう、儂の世界へ行ってくれるか?この問いに応えればお主の魂は儂の世界へ転生することになる。』



「えっと…ファーレ様?その前に俺がポータルマリナへ行く目的は何でしょうか?それにポータルマリナとはどのような世界でしょうか?」



『急に冷静になったのー。まあよい、では説明を先にするとしよう!ポータルマリナは地球のラノベでよくあるような剣と魔法の世界じゃ!お主がポータルマリナに行く目的は特にない。あえていうならば儂が異世界の人間であるお主が儂の世界で何を成してくれるのかを見たいだけじゃ!!』



キターーー!剣と魔法の世界♪



「なるほど。その世界にはステータスやスキルなどが存在するのですか?」



『ステータスもスキルも存在しておる。異世界へ旅立ってくれる貴重な魂には最高級のスキルばかりを準備しておるぞ!楽しみにしておるがいい!!』



うおぉー!チートまでもらえるなんて最高な異世界転生じゃないか!!



「俺、行きます!!俺がポータルマリナで何を成せるか分かりませんが、一生懸命努力していきます!」



『そうか、では今一度問おう。儂の世界へ行ってくれるか?』



「は」『待て待て待て!!そんな勝手な転生は俺が許さんぞ!!』




 俺の言葉を遮って現れたのは、黒を基調とした格好をした赤髪の女の子だった。



『お前はベトログではないか!!一体何をしに来たのじゃ!?』



『今言った通りだ!このような勝手な転生を許さぬ!!こんな凄まじいスキルの数々を持った人間が生まれれば、世界の厄災になる恐れがある!』



『ではどうしろというの?この者の魂は既に呼び出してしまった。もう元に戻すことは叶わん。このままここで消滅させろとでも言うの?』



『ちっ!仕方ねーな。そいつの転生を許可しよう。ただし俺はそいつの魂に呪いをかけさせてもらうぞ!』



『呪い?何をするつもりじゃ!?』



『簡単な呪いだ!どんなに凄い才能を持っていようと、長生きできねばたいしたことは出来まい?20歳で寿命を迎える呪いだ!それと自分が転生者だということをバラしたら即時死ぬ呪いも掛けておく!』



『それでベトログがそれで満足するのなら勝手にすればいいわ!』



「えっ?ファーレ様!俺は20歳で死ぬのなんて嫌ですよ!!」



『儂の用意したスキルの中に「完全解呪」というスキルがある。それさえ覚えられたら、たとえベトログの呪いだとしても解呪できるわ!!』



『な、何だと!?』



『改めて尋ねます。儂の世界へ行ってくれるか?』



「はい!行きます!俺2人をガッカリさせないよう頑張ります!!」



 この言葉を最後に俺は光に包まれ、新たな世界へ転生したのだった。




『アッハッハ。行ったわね♪』



『ホント何回やってもみーんな引っ掛かるよな♪地球のラノベ好きは馬鹿ばっかりだぜ!!今回の奴はどのくらい持つかな?』



『今回も10歳で絶望しちゃうんじゃない?殆どがそのパターンだしね!』



『おっ!現れたようだぜ!』



『お前たち…またうちの人間の魂を勝手に移動させおったな!?』



『遅かったわね、地球の神よ。もう彼は自らの意思でポータルマリナに転生しちゃったわよ!』



『ぐぬぬぬ…お前らのやっておることは詐欺だぞ!お前らのせいで何人の人間が犠牲になったことか!!』



『でも私たちは嘘なんて何一つついてないし、ポータルマリナに転生することを決断したのもあくまでも本人の意思なのよ!神の決まりには何も背いてないわよ!こうなるのが嫌だったら、ラノベなんて文化消滅させちゃえばいいんじゃない?』



『ラノベの文化自体に何の罪もないんじゃ!悪いのは、それを読み、純粋に異世界に憧れておる者の心を利用するお主たちじゃ!!こんなことを続ければ必ずお主たちに罰が下るぞ!!!』



『罰ね…もうかなりの数を転生させちゃったけど、私たちには何の罰も下ってないわね!この遊びは今の私たちには最高の娯楽なの♪変な正義を振りかざして私たちの邪魔をしないでよね!』



『ぐぬぬ…見張りを強化するから今後はそうそう魂を勝手に移動させないからな!』



地球の神は消えていった。



『ラノベの文化がある限りこの遊びはいくらでも続くのよ♪』



『あー、この「ラノベホイホイ」は最高の娯楽だ!!それじゃー、転生した奴等の新たな人生を楽しむとしようか!』



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る