Act.50:エピローグ②


 まだまだ油断は出来ないものの、妖精世界の再生が順調になっている中、わたしは妖精世界に居る魔物と対面していた。再生範囲を広めていくと、当然他の場所に居た魔物にも遭遇し始める訳だ。


「ん。やっぱり小さい」


 近くで見ても、やはり地球の魔物と比べて小さいのがほとんどな妖精世界。もちろん、個体差もあるがそれでも今まで遭遇した魔物からして、平均的にその体は小さい。

 そして何より、地球の魔物と比べてもそこまで強くない事。わたしたちとしては、それは好都合と言うか良い事なのだが……。そうは言っても、まだ全部を見た訳ではないのもまた事実。


 そもそも、まだ再生している範囲がそこまで広くないし。

 なので、妖精世界にも強力な生物がいる可能性は否定できない訳で……たまたまわたしたちが遭遇している魔物が弱くて小さいってだけで世界全体で見たら、大きい魔物や小さくても強い魔物とかが居ても可笑しくない。


「スターシュート」


 魔法のキーワードを紡ぐと、ステッキから星が放たれる。それは真っ直ぐわたしを狙って走ってくる魔物に直撃する。避けようというような動作は確認できたけど、無理だったみたいだ。

 星のエフェクトを出して爆発し、魔物は消滅する。魔物が居た場所には、やや小さめで少々鈍色な魔石が一つだけ転がっていた。


「品質は地球ほどは良くないかな?」


 既に何回か、妖精世界の魔物は倒しているので分かっていたが、やはりと言うか何というか、どの魔物も倒してもそこまで品質が良くない魔石ばかり落とす。

 妖精世界の魔物は、ララの言う通り魔力がないから弱いし、その蓄える魔力もないから倒したとしても、品質の低い魔石を落とすのかもしれないな。


 まあ、これについては謎のままではあるけどララがそう言う風に考えているみたい。あくまで、ララが考えているだけで、それが事実かは不明である。

 何度も言う通り、魔物は謎が多いから仕方がない。そしてこっちの魔物については、地球ではないっていうのもあるから地球でのデータとかが参考にならない場合もある。


「まだまだやるべき事はある」


 妖精世界の真っ黒な空を見上げる。

 再生した場所はちゃんと日が照っていて、とても穏やかな気分になるけどこっちはどんよりする。そしてやっぱり、この外側に居る時は身体が少々重く感じる。

 別に動きに支障が出るレベルではないけどそれでも、違和感が結構するのもある。思わぬ事故に繋がる可能性もあるかもしれない。いくら妖精世界の魔物が弱いと言っても油断は出来ない。


「……戻ろ」


 この辺りの魔物は倒したので、一旦拠点としている精霊の森に戻る。

 一応、帰る前に回りを少しだけ見て、特に魔物も居ないし異常もない事を確認した後、精霊の森の方面へと歩き出す。魔法少女の状態なので、あっさりと辿り着くけどね。


「あ、戻ってきたようですね」

「ティターニア」

「いつもありがとうございます」

「ん。わたしとしてはティターニアに頭が上がらない」


 精霊の森に戻れば、ティターニアが出迎えてくれる。

 今日この世界にいるのは、わたしとラビとブラックリリーにララだけど、各自それぞれ別行動をしている。ララは主に周辺の調査等をしていて、ブラックリリーはそんなララと行動している。


 ラビはと言うと、この今の出来事を記録者として記録するって言ってたかな。


「いえいえ、これくらいどうってことないですよ」


 本当にティターニアが居なかったらこんな順調に行く事はなかったと思う。

 再生の魔法は良く分からないけど、取り敢えず普通ではないっていうのは誰も理解しているだろう。このまま行ければ、いつかきっと、この妖精世界も息を吹き返すだろう。


 どれくらい先になるかは想像がつかないけれど……それでも希望は見えている。ラビたちの故郷が元に戻る……ただ世界は確かに戻るかもしれないが、妖精世界は一度滅んでいる。そして生存者も今の所、確認できてない。

 だから復活したとしても、妖精世界には誰も居ない……ティターニアたち精霊は居るけれどラビたちのような妖精は居ない。そこだけがやっぱり、一番残念な所かもしれない。


 ……。

 本当に妖精の生き残りは居ないのだろうか? まだ探索できている範囲がそこまで広くないし、もしかしたら何処かで生き延びているかもしれない。他にもラビやララのように歪みに飲み込まれて別の世界に居る可能性もある。


 その別の世界というのが地球とは限らないが……。


 妖精世界や魔物の世界と言った、別の世界が実際存在しているのだ。他の世界があったとしても、何ら可笑しくない。地球ではない世界だと、結局はそんな世界に行ける方法など分からないから結局はどうしようもない。


「ティターニアは、この妖精世界や地球以外にも世界があるって思う?」

「また唐突ですね。この妖精世界と地球と、それからあなた方から聞いた魔物の世界の事しか知りませんが、可能性はあるでしょうね」

「ん」

「実際この世界と地球という世界がこうやって繋がっているのですから。魔物の世界については、行った事もないので何とも言えませんけどね」

「まあね。魔物の世界っていうのは聞いただけだから。でも行ける方法とかあるのかな?」

「あるかもしれませんね……」


 仮に魔物の世界に行けたとしてもどうするのかって話だけど。

 その世界にいる魔物を全て倒すとか? そうすれば確かに地球と妖精世界に魔物が来る事はなくなるかもしれないが、そもそも魔物の世界の環境が分からないし、行けたとしてもまずはそこからだよねえ。


「好き好んでいく気はないけど」

「それが一番です。と言っても、確かに魔物の世界で魔物さえ倒せれば、平和になるかもしれませんね」

「そうだけどね。まあ行けても向こうの環境は分からないから」

「あーそれもそうですね。魔力が全くない世界だったら私たちはどうしようもなくなりますね」

「ん」


 魔物の世界なんて考えても分からないし、今わたしたちに出来る事は出てくる魔物を倒すだけである。それは地球でも同じだけどね……地球には魔法少女が居るからまだ良いけど、妖精世界には誰も居ないからやれるのはわたしたちくらいだ。


「そろそろ時間じゃないですか? 大丈夫です?」

「ん。……あ、そうだった」


 この後、地球で会う約束しているんだった。

 ……自分の答え、それも伝えないといけないし。ステッキを一度、スマホ状態にして時間を確認する。まだ大丈夫だけど、今から行った方が良さそうだ。


 余談だが、妖精世界では流石にスマホは繋がらないので、時計はインターネット同期ではない。まあ、そう簡単にずれないので時間確認ついては問題ない。

 流石の魔力さんも、異世界という毛別世界までは適応してないようだ。でも元々は妖精世界のものなのに……。


 そもそもこのスマホがどういう条件で動いているのかわからないけども。


「行ってくる」

「はい。応援してますね」

「ありがとう」


 やることは多い。

 だけど、そもそもどれくらいかかるか分からない妖精世界の再生だ。ゆっくりと、だけど確実に……地道にコツコツやって行けばいずれは目的も達成できるだろう。


 妖精世界だけではなく、地球の魔物も対処しないとね。

 確かに全体的な数は減ったけど、それでもゼロになった訳でない。それに、以前の異常事態に時のように少なくなる傾向になると、何処かでまた異常事態が発生する可能性だって考えられる。


 それが茨城地域なのか、他県なのか……それとも海外なのかは分からない。

 だけど、常に妖精世界も地球も魔物という脅威と隣り合わせだ。魔物という未知な生命体が、やって来てから地球ではもう16年……皆、日常は取り戻しているもののそれでも危険がある。


 何せ魔物は突発的に出現するのだから。

 だから、これから先も魔法少女と魔物の戦いは地球で続くだろうね。もちろん、わたしも……野良ではあるけど魔物を倒す事自体はやめないさ。


 妖精世界の魔物と、地球の魔物……両方に対応しないとね。そしてこの世界の再生も……まだ先は長い。


「うん。まだまだやることはある」


 改めてそれを認識し、わたしは妖精世界化を後にして地球へと向かうのだった。







TS魔法少女リュネール・エトワール! ~星月の魔法少女は気の赴くままに行動する~

共通世界 END







新たな世界が確認されました。

世界へ移動しますか?


白百合の世界◀

???

???

???

???



決定 キャンセル






『あとがき』

ここまでお読み頂いて本当にありがとうございました。

Twitterでも告知した通り、一度これにて完結となります。

実質的な処女作で、色々と拙い所はあったかと思いますが、生暖かい目で見て下さると幸いです。


なお、まだ回収しきれてない内容が幾つかあるのは認識しております。



一番下にも何やら変なのを書いていたと思いますが、

これより先は分岐します。

今までのものが共通世界という認識で大丈夫です。


なお、ここまで毎日投稿をしていましたが一度本編と言うか共通世界の内容については完結となります。そのため、分岐する先については外伝的続編な感じとなります。


外伝的続編については不定期となります。

本作品も元々は不定期更新でしたが、ここまで書けました!

これも、皆様の応援のおかげです。改めて本当にありがとうございました。


どんな世界に分岐するかは秘密です。

(まあ、一つは既にもう作中でバレてますが)


また、外伝的続編で会えたら嬉しいです。

ここまでありがとうございました。m(_ _)m

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