Act.48:選択の時
「……」
妖精世界の再生は、そう簡単には終わらない。だけど、再生させる術はある。精霊の森を起点にし、徐々に周りを再生して行く方針で今後は進めて行く事になる。
ティターニアや、精霊たちの協力のお陰で目的達成へは確実に進んでいる。元々はブラックリリーとララが計画していた事だが。
そう確実に前に進んでいる。
このまま行ければ、時間がかかったとしても最終的には目的達成へと到達できるはず。魔物は邪魔ではあるものの、地球の魔物よりは弱くて体も小さい。地球よりかは対応できるはずだ。
それに、ティターニアたち精霊が居る訳だから。
魔力の多い場所が増えれば、精霊たちの行動範囲も広がる。仮に妖精世界が再生された場合は、全ての場所に精霊が行けるようになる訳だ。
そうなれば、魔物の対処など簡単にできるだろう。とは言え、精霊がどれだけ強いかは分からないが……魔物とは戦えるくらいの力は持っていると思う。
ティターニアは精霊王って言うのもあるし、強いのは明白。この目で見ているからね。あの時使った雷以外にも、風とか火の魔法? を使ったりもしている。
いくつの魔法が使えるのやら……ティターニアの本当の力は計り知れない。
「わたしも決めないと、ね」
雪菜に蒼そしてラビに告白をされた事を思い出す。
結局の所、どの告白に対してもその時に答えは出せないで居たのだ。そして答えを出せないまま今に至る。ちゃんと答えを出さないと。
わたしにとって、皆はもう大切な人だ。そこにはブラックリリーとララも含まれる。
だけど、皆が大切な人だとしても、それでは意味はない。曖昧なまま時間をかけるのは駄目だ。だから、答えを出すしかないのだ。
「わたしにとって一緒に居て幸せだと思える人、か」
色々と特殊なわたしだからっていうのもあるんだけども。
今までの自分を顧みれば、真白を除き、わたしは周りと交流する事はあまりしてなかったし……そう思える人は居なかった。
それは以前の自分。では、今はどうなのか?
昔より大分変っていると思う。一人で居る方が良いと思っていたのに、今では誰かと一緒に居た方が楽しいと言うか、良いなって思ってるくらい。
だから……皆と居るのが一番良い。皆が好き……これは本当なのだ。
「……ふう」
三人との思い出……記憶が頭の中をぐるぐると回り始める。そこに三人以外の香菜や他の魔法少女との出来事とか、今まで起きた事全ても加わり始める。
ホワイトリリーこと雪菜は丁寧な喋り方をする少し大人っぽい雰囲気がある女の子だ。だけど、それでも年相応の顔を見せたり、反応をしたりとやっぱり普通の女の子。
白百合の花をモチーフとした魔法少女で、この地域では一番強いSクラスの魔法省所属の魔法少女だ。主な戦闘スタイルは、モチーフにしている花……白百合の花弁を放ったり、バリアを張ったりなどだ。
今更ではあるけど、ホワイトリリーの魔法少女としての戦いについてはわたしもあまり知らないかもしれないな。一緒に行動するって事はなかったし……。
多分他にも魔法を使えると思うけど……伊達にSクラスになっている訳ではないはずだ。知らない事……割と多いかも。
彼女と初めて会ったのは、星月の魔法少女と言う名前が出始めた頃。あの時は、戦闘している所を見ていただけなので直接話す事はなかった。
直接話したのは、カタツムリの魔物が出た時かな。あの時はまさか、リアルで触手プレイなんてものを見せられるとは思わなかったが。
ブルーサファイアこと蒼については、ブルーサファイアとしての戦闘を一切見た事がない。反転世界では吹っ飛ばされてしまっていた所を見ただけで戦っていた所は見てない。
……わたし蒼の事知らなさ過ぎてるな。蒼についてはブルーサファイアとしてではなく、蒼として一緒に居た方が多い気がする。
色川蒼。変身するとブルーサファイアをモチーフとした魔法少女になり、口調もホワイトリリーの丁寧語? になる。しかし、変身前は砕けた感じの話し方をする。時々、混ざってしまう時があるけどね。
蒼と会ったのは初討伐の時だったかな……あの時は、そそくさに逃げたけど。本当に話するようになったのは魔法少女の襲撃事件の時からか。
ついつい頭を撫でてしまったのはわたしの失態だったかもしれない。でもやっぱり、怖い物は怖い……蒼もまた普通の女の子だ。
「何だか懐かしいな」
ラビについてはわたしが魔法少女になった要因。まあ、自分でなると選択したのだから何も言わないが。そしてその時からずっと行動を共にして一番付き合いの長い存在。
兎のぬいぐるみのような見た目をして、それで喋るものだから驚いたな。でも、そんなラビは妖精世界にあったエステリア王国の第一王女かつ、特殊な役目を担う
それ以前に、人型の姿になれる事にも驚いたし、ラビには驚かされてばかりだった気がする。でも、姿形が違うとしても、ラビはラビだって分かったけど。最早ラビについては驚き疲れた。
人型のラビの容姿には大分慣れたよ、うん。それに人型の方が本来の姿らしかったしね。最初はラビには悪いけど、違和感が結構あった。
「ラビも、ね」
二人については何時か告白して来るかもしれない、とは思ってたがラビについては盲点だった。何時も普通に話していたし、特に可笑しな所もなかった。
散々言われているけど、やはりわたしは鈍感みたいだ。雪菜が好意を抱いているって言うのはラビに言われたからだったし、蒼についてはもしかして? とは思ったけど、結局はラビに聞いてたし。
「……何だかな」
他にはブラックリリーこと香菜。
香菜については特に告白とかをされた訳ではないものの、何だか最初よりは変わってるような気がする。最初はザ・悪役的な雰囲気を持っていたのに、蓋を開けて見ればやっぱり身体が弱い普通の女の子。
大人っぽい感じはするものの、何か友達になると言ってからの変わり具合はかなりのもの。ブラックリリーとしてはいつも通り振舞っているけどね。まあ、時々素が出てしまう事もあったけど。
……良く考えるとラビの次に、一緒に居る時間が長いのってブラックリリーか?
「同じ野良同士っていうのもあるのかな」
前にも言ったと思うけど、野良で活動する魔法少女は少ない。むしろ、数えるくらいも居ないのではないだろうか?
全く居ないとは言い切れないものの、大体魔法少女は魔法省に行くし。魔法省に行かずに、普通に生活すると言う子も居る。
まあ、それはそのはずで命がかかっている仕事だからね。
「……」
真白。
わたしの現在唯一の血の繋がった家族であり、妹。今はわたしの方が妹になってるけど……真白については昔告白された事もあり、それを断ったと言うのも今でも覚えている。
叶わない恋と言う事で、真白本人も分かっていた。わたしに対して告白するから断って欲しいと言ってきて、それで断ったのだが……。
それは今は関係ないか。
そんな彼女は、わたしがこの姿になった事に特に何も言わず、あれこれ色々と教えてくれた。本当に良い子だよ、真白は。
シスコン? 上等……認めるさ、わたしはシスコンである。そんな馬鹿な事考えるのはやめよう。
大学生と言う事もあって、真白は東京に行っている。年末年始に一度帰って来て、再びまた東京へと帰って行った。次は春休みに来ると言ってたな。
真白が東京へ戻る時、どうしようもない不安があったけど……何とかやって行けてる。ラビたちのお陰かな。
「はっ! ……少し物思いにふけすぎてたかな」
時計を見ると、時間は18時を示していた。考える前は17時くらいだった気がするのだが……1時間も考えてたのか。それに気づくと身体がちょっと痛くなってくる。
ずっと同じ体勢で居たらそりゃこうなるよね。
「イタタタ……」
だけども。
何か色々と纏まったような気がした。さっきより頭の中はすっきりしているし。
「わたしの、答えは……」
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