Act.05:真白襲来!①


「お兄、次これはどうかな!」


 さて、俺は今どうなっているのか?

 目の前に居るのは唯一の血縁で妹である、如月真白(きさらぎましろ)である。真白は紙にさっきから色んな服の絵を描いては、俺に見せてくる。勿論、全部女性ものである。


 12月の後半に入り、ますます周りはクリスマスムードになりつつある時期。何故真白が目の前に居るのか? それはとても簡単なことで俺に秘密で帰ってきたのだ。


 それだけなら良い。

 もう察する通りだと思う。今の俺はハーフモードで真白の前に居る。この意味が何を指すのか……はいその通り。魔法少女やってることがバレました。


 でもって、その姿を見られ今や着せ替え人形のようにされていた。と言っても、真白の描く絵の服を俺がイメージして、衣装を魔力でチェンジしているのだが。



 さて何でこんな事になってるのかと言えば、2時間くらい前に遡るのだが……うん、あれは本当にタイミングが悪かったと思う。








「ねーねーそう言えば、あなたの妹さんってどんな感じなの?」

「何だ藪から棒に」


 いつも通りの日常……周りはクリスマスムードで溢れているが俺は別に何とも思ってない。おいそこ、ボッチとか言うな。……いや、クリぼっちなのは認める。

 あ、俺やっぱりボッチかもしれないわ。いやでも、一応今年はラビが居るし、ぬいぐるみだけど喋れるし、二人って事で!


「いや、ちょっと気になっただけよ。どんな感じのなのかなってね」

「うーん……まあ、一つ言うなら可愛いと思う」

「うん。シスコンね」

「言う程か? まあ、最近会えてないけどな……CONNECTでやり取りするくらいか」

「まあ、取り敢えず可愛いっていうのは分かったからどういう感じなの?」


 どういう感じ、か。

 妹……真白は名前の通り、綺麗な白銀色の髪を持っていてぶっちゃけ、お世辞抜きでも可愛いと思う。さて、銀髪という事は外国人なのか? それはない。

 真白も母さんから生まれた立派な日本人だ。銀髪碧眼っていう、物凄いレアと言うか日本では滅多に見ない容姿をしていたから学校でもかなりの人に告白されたと聞いている。ただ、とある諸事情により、全て断っていたけど。


 母さんの先祖にそういう容姿をした人が居たらしく、言うなれば隔世遺伝というやつだ。俺は普通に黒髪黒目で生まれたのだが、妹の時は隔世遺伝が起きたっぽい。


 俺の魔法少女としての姿であるリュネール・エトワールの容姿にも近いかもしれない。ただこっちの場合は銀髪ではあるけど、金の瞳だしな。


「へえ」

「だから結構な人に告白されてたみたいだ」

「凄いわね。とは言え、確かに日本じゃ銀髪碧眼なんてまず見ないものね」

「ああ」


 その代わりと言っては難だが、一部から嫌がらせとかを受けていたのも知ってる。真白は頭も良いから、嫉妬してたんだとは思う。でも、そういう事する奴らは真白の行動によって犯行が暴かれ、こっぴどく怒られたらしいが。


「まあ、機会があったら会えるとは思うぞ。何となくだが、長期休暇には戻ってきそうだしな」

「東京の大学だっけ? どういう学校に行ってるの?」

「イラストレーターだな」

「イラストレーター……」

「ああ」


 真白は昔から絵を描くのが好きで、暇さえあれば絵を描いていたと思う。俺や、父さん母さんたちを含んだ家族の絵も描いてくれてたな、しかも可愛らしいアニメ風な感じで。

 ツブヤイッターでも、アイコン描きます的な感じで活動もしていたな。結構依頼が来てて、流石だなと思った。


「これが新しい絵だな。CONNECTで送ってきてくれた」

「おお!」


 偶に描いた絵を送ってきてくれるんだよな。

 今回のテーマは魔法少女らしい。で、この絵をよく見て欲しい。銀髪に金色の瞳、衣装も星とか月がメインで描かれているこの絵。


「あれ? これリュネール・エトワールに似てない?」

「思っただろ? 微妙に違うけど、リュネール・エトワールに似てるんだよな……」

「すごい偶然ね……」


 そうなのだ。この魔法少女の絵だが、全部ではないもののリュネール・エトワールに似ている部分が多く有る。衣装もにてるし、星や月がメインなのもそっくり。とんがり帽子までな。


「これ、バレてるとかじゃないよな?」

「流石にないでしょ。だって真白さんだっけ? 妹さんは東京じゃない」

「まあそうなんだけどな」


 これが送られてきたのは大体、一週間前だ。茨城地域の魔法少女の噂が東京まで飛んで行ってたとかかね? そんな飛ぶものか? まあ良いや。


「それにしても、真白さん、絵が凄いわねえ。可愛いし」

「ああ。俺も、ここまで上達しているとは思わなかったよ。誇らしいな」

「まあ、当の兄はニートだけどね」

「うぐ」


 それはそうなんだけどね。真白にも心配させてしまったし、反省はしている。だから今度戻ってきた時に、正直に宝くじを当てたっていう事は伝えておかないとな。


「しかも魔法少女だものね……いえ、まあ魔法少女にしたのは私だけれど」

「取り敢えず、魔法少女だって言うことは伏せておかないとな」


 どう思われるか怖いっていうのもあるが、巻き込みたくはないしな。


「さてと。そろそろ」

「いつもの見回りの時間ね」

「ああ」


 スマホ型の変身デバイスを手に取り、いつものように変身キーワードを紡ぐ。


「――ラ・リュヌ・エ・レトワル!」

『SYSTEM CALL "CHANGE" KEYWORD,OK――LA LUNE ET L'ETOILE――』

「え、お兄?」


 ただ、今回はそのタイミングで第三者の声が聞こえたのである。慌てて声のした方を向くと、そこには見覚えのある少女…銀髪碧眼の、俺の妹真白がこちらを驚いた顔で見ていた。

 既に変身キーワードを紡いでしまったので、変身は止まらず、そのまま俺はリュネール・エトワールへとチェンジする。


『SYSTEM CALL "CHANGE" SUCCESS!!――GO!』


 そして無慈悲に告げる変身完了の音。そう、これが2時間前に起きたハプニングだった。そして時間は冒頭へと戻るのだ。






「お兄、可愛い!」

「嬉しくない」

「ふふ、そう言わずに!」


 バッチリ変身シーンというか、した所を見られてしまい真白には魔法少女であることがあっさりバレてしまった。だけど、別に真白は俺を軽蔑したりとかはせず、こうやって構ってくる。ちょっと安心だな。


「真白は、引かないの?」

「え? それってお兄が魔法少女してるって事に?」

「ん」


 例え真白の前であるとしても、素は出さず、リュネール・エトワールとして話す。というかもうこの姿だとこっちが安定してしまったわ。解除すると戻るんだけどな。


「私が引くと思う? 私がお兄のこと恋愛的なもので好きだったっていうのは知ってるでしょ」

「ん……」

「叶わない初恋だけど、それでも私はやっぱりお兄が好きだよ」

「ありがと」


 そうなのだ。

 ある事情というのは、真白は俺の事が好きだったという事だ。だから、どんな人が告白しようと、動じなかった。既に好きな人が居たからだ。


 でも、知っての通り俺と真白は血の繋がった家族。だからこれは叶わない恋なのだ。それは真白も分かっていて。俺にこう頼んできた。


 ――私、お兄に告白するから振って欲しい。


 そうすれば、この気持にケリを付けられるから、と。真白は真剣で、俺はその頼みを引き受け、出来る限り優しく振ったのである。


「それにしても、宝くじ1億円を当ててたなんてね」

「ん」

「言ってくれれば良かったのに。でも、道理で仕送りを出し続けてられてた訳だ、納得ー」


 うん、まあ真白には伝えようかとは思っていたんだよな。でもやっぱり、当選した日はちょっと周りが怖くて、秘密にしてすぐに口座に入れてもらったんだけどね。


「ん。ごめん。ちょっと怖かった」

「うん、それは聞いたよ。宝くじって当たるんだね」

「ん。それはわたしも驚いた」

「そっかー」


 そんなこんな、俺と真白は話を続けたのだった。



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