第三章『真白襲来!?』
Act.01:年末月の訪れ①
12月に入り、周りはすっかりとクリスマスムードを醸し出しているこの時期。俺はスマホ型のデバイスの画面を見ていた。
流行りと言うか最早一般常識となっている、CONNECT(コネクト)という会話アプリ。連絡先を交換しておけば、電話できたりチャットを送信したりのやり取りが出来る物だ。
相手が未読が既読かの表示機能もある為、確かに便利なアプリだと思う。他にも有名なSNSとしてはツブヤイッターっていうのもあるな。あっちは全世界と繋がる事が出来る方だ。
当然ながらこのデバイスにも入っているのだが、残念ながら連絡先は0件である。おいそこ、ボッチとか言うな。これはあくまで変身デバイスだから交換はしてないのだ。
まあ、交換する相手が居ないのも事実だけど。
「すっかり、クリスマスムードね」
「だなー。もう12月だもんな」
更に冷えてきたこの時期。今年ももう終わりを迎えようとしているのも事実。1年って早いんだなあとこの時期になると毎度のように思う。
相変わらず時期関係なく、魔物は出現しているけどやはり停滞状態で増加はしてない。むしろ減ってる所が増えてきてるようだ。
まだ油断できないけど、このままかなり少なくなったら良いなと思いつつ。
ただ、クリスマスムードであるから人が多くなってるのも事実で、むしろ増える可能性がある。各地ではクリスマスイベントが開催予定でもあるしな。
「なあ、凄い今更な事聞くけど、反転世界に魔物を連れて行くって出来ないのか?」
いやむしろ何で今まで考えてなかったのかという話だ。
「あーそれね。昔に何度か試した事あるんだけど、どうも魔物を連れて行くのが出来ないのよね。魔物を巻き込んで反転世界に移動しようと思ったら弾かれたのよ」
「それは何でだ?」
「分からないわ。ただ別世界の生物っていうのがもしかすると原因かもしれないわ。複製する世界はあくまで発動者がいる世界だからね。良く分かってないわ」
「そうなのか……」
ふむ。
原因不明か……だよな、もしそんな事出来るなら最初からやってるはずだし。
「この反転世界もまだ完璧じゃなくてね。一度作った世界から抜け出すと、その世界は消えるのよ」
「えっとそれはつまり……」
「未完成魔法……ではないけど、妖精世界を犠牲に誕生した魔法の劣化版みたいな物よ。だから消費する魔力も少ないでしょ」
「確かに……」
「今使ってる反転世界はもう一度入ると、全てがリセットされてるでしょ?」
「確かに」
何をやっても一旦世界を抜けた後に、もう一度中に入ると全てが元通りとなってるな。後は、自分がいる場所を参照してるっぽくて、移動した所で使うとその場所を起点に世界が形成された気がする。
復元魔法的なのが発動してるのかと思ったが、なんか違うみたいだ。
「あれは一から作り直してるからよ。要するに一度出るとその世界は消えて、次入る時はまた新しく生み出されるって感じね。一時コピーみたいなもので中に発動者がいる間だけ存在できるのよね」
「なるほど……」
少しややこしいけど、まあ、簡単に言えばラビの言う通りで一時コピーだ。一時的にデータのコピーを作成し、抜けるとデータは消える。
「あれ、でも世界を作成するには膨大な力が必要って」
「その通りよ。でも反転世界っていうのは周囲をコピーするだけだから少なく済んでるの。遠くに移動するとその分、後ろの世界が消えていって新しく先が読み込まれる感じ」
「えーとそれって、オープンワールドゲームみたいな?」
「ええそうね。発動者を起点に周囲を常に読み込む感じね。発動者が移動するとその分、消えて行って進んだ先がまた読み込まれる感じ」
「完全にオープンワールドゲームだな……って事は、遠くに移動すると魔力消費する?」
「するわね。ただ読み込む範囲にもよるけど、そこまで大きな消費ではないわね。進んだ分消えてるわけだしね」
新しい事実。
反転世界ってそういう仕様だったのか……俺はぶっちゃけ、その場周囲でしかやらないから全然気にしてなかったな。
「なるほどなー新たな事実を知ったわ」
「まあ特に気にする必要もないしね。あなたの場合、反転世界内で遠くなんて行かないし」
「だな」
わざわざ遠くに行く必要がないと俺は思ってる。
「そう言えば、以前魔法少女たちが練習する空間って言ってたが、魔法少女は皆使えるのか?」
「魔法を知っていれば、ね。原初の魔法少女たちは私が居たから知ってたわよ」
「あーそっか、他の魔法少女……魔法省側にはラビみたいな妖精は居ないもんな」
「ええ。だから使えるって事自体知らない可能性もあるわね」
そうなると、ホワイトリリーやブルーサファイアは知らないのかな? 何処で練習とかしてるのか分からないが、魔法省内にそういう場所があるのかもしれない。
それは魔法省に行かないと分からないから何とも言えないが、多分あると思うんだよな。練習できる訓練場みたいなのがね。
それは置いとくとして。
最近、ホワイトリリーもそうなんだが、ブルーサファイアもちょっとおかしいんだよな。俺と会うと(勿論リュネール・エトワール)顔を赤くしたりとか色々と。
もしかしてブルーサファイアもリュネール・エトワールが……? いやいやそれはない……とも言い切れないんだよな。ホワイトリリーと言う前例もあるし、その反応とかにもデジャヴがある。
「なあ、ラビ。最近、ブルーサファイアもちょっとおかしいんだけど、もしかしてホワイトリリーと同じか?」
「あら、今更気づいたの? どう見てもあなたに気があるじゃないの」
「マジか……」
「モテモテね!」
えー……まじか。
一体俺が何をしたんだ? うーむ……でも多分ブルーサファイアもリュネール・エトワール何だろうな。晒すつもりはないけど、本当の姿は本気で言えんな……隠し通さねば!
「はあ、まじかあ」
「ブルーサファイア……いえ、蒼ちゃんの事もちゃんと考えないとね」
「そうだな……」
はあ、俺大丈夫かな。いっそのこと、リュネール・エトワールが本当の姿だったらとか思っちゃうよ。って、何てこと考えてんだ!?
いやまあ、ハーフモードは実質そんな感じだもんな。
「割とあなた無自覚で色々とやらかしてるしね」
「え、そうなの?」
「まず、撫でたり抱き締めたり……慰めたり」
「……」
わーい、凄い身に覚えがあるぜーって、改めて見ると俺何してんの!?
「うん。何かごめん」
「私に謝られても困るわよ。取り敢えず、ちゃんと気持ちに答えてあげることが大事よ。放ったらかしなんてしないでしょう?」
「ああ。そこはちゃんと考えるつもりだ」
勿論リュネール・エトワールの姿でな。むしろ向こうじゃないと駄目だろ。
「……魔物か」
「ええそうね。近いわ……推定脅威度は!?」
「ど、どうしたんだ?」
いつものようにデバイスから警報が鳴り、ラビが推定脅威度を出そうとしていた所で、ラビがいつもと違う反応を見せる。
「推定脅威度は……AAよ!」
「!?」
脅威度AA……最高でもAまでしか観測されなかったのに、その一つ上の脅威度の魔物か観測されたという事か。AAって確かそれなりに強いんだったよな?
「AA、か。でもSクラスのホワイトリリーなら対処はできるか?」
「一応出来ると思うわ。ただ魔物の種類にもよるけどね」
既に何人かの魔法少女が到着しているようだ。だがAAってという脅威度だし、不安もあるので俺はデバイスを手に取る。
「行くのね?」
「ああ。念の為にな」
大丈夫だとは思うが、念の為にである。ホワイトリリーやブルーサファイアたち魔法少女に何かあっては駄目だ。
「――ラ・リュヌ・エ・レトワル!」
『SYSTEM CALL "CHANGE" KEYWORD,OK――LA LUNE ET L'ETOILE――』
変身のキーワードを紡ぐ。ふわっと浮遊感に襲われ、魔法少女リュネール・エトワールとなる。
『SYSTEM CALL "CHANGE" SUCCESS!!――GO!』
そして意識が俺からわたしへと切り替わり、毎回のように姿を見えなくしてから窓から飛び出すのだった。
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