Act.08:ラビとエーテルウェポン②
「エーテルウェポンっていうのは、妖精世界にあった魔力の武器の事よ」
「魔力の……武器?」
魔力の武器……魔力が武器?
「そう。見た目は普通の武器、だけどそれには魔力が流れてる。更に自身の魔力を使うことで剣なら切れ味……武器の攻撃性能等を底上げできる、要はゲームとかで言う特殊武器みたいなものよ」
魔力が流れている武器、か。ゲームでの例えで何となくは分かる。特殊効果の付いた武器とかそういう類の物ということだろう。
「そして何より……
「
「ええ。名前の通り、纏っている魔力を解放して――何て言えば良いかしら。そうね、奥義を放つような感じよ。その力は武器によって千差万別」
「なるほど」
ラビの説明をまとめるとこんな感じだ。
まず、エーテルウェポンと言うのは魔力を持つ武器の事で、普通に使ってもそれなりには強い。見た目はファンタジーとかでよく見るような、剣やら杖やらみたいな物だ。
で、自身の魔力を武器に流す事によって武器の性能を一時的に向上させる事が可能な武器のようだ。
そして奥義。
名前で察する通り、武器の持つスキルを放つことが出来る。武器の纏っている魔力を全部消費し、一撃必殺なスキルを撃つ。
使用後はしばらくの間何も使えない状態となる。まあ
因みに自身の魔力を流した状態で使うと、更なる威力向上が見込める。ただし、本来の武器の魔力を更に増加させた状態……キャパオーバーで放つため、CTも長くなるそうだ。
「そのエーテルウェポンがどうしたの?」
「エーテルウェポンは特殊な武器よ。……実体を持たない刃の武器だって有る」
「!」
実体がない武器。
短剣の刃がその実体のない物ならば、魔力装甲を無視できる。実体がないから体に刺さっても特に何の影響もない。
「……その武器、結構危険?」
実体がない。
それはまだ良いが、仮にだ……誰かを刺した状態で何かしらすると、刃が実体化するとしよう。魔力装甲は意味を成さずに殺せてしまうのではないだろうか。
「うーん、それは流石に大丈夫だと思うわ。実体がないから魔力装甲が何の意味をも成さないだけで、実体化したら弾かれるはずよ、装甲に」
「そっか」
ラビを見た感じでは大丈夫そう?
「まあそれで話を戻すわね。その武器が魔力を吸収するのに特化したエーテルウェポンなら、可能性はある。装甲を無視して体内の魔力のみを吸収する事が出来てもおかしくはないわ」
「……」
「それともう一つ。あなたが持っているそのステッキもエーテルウェポンの一種よ」
「そうなの!?」
自分の持っているステッキを思わず見る。
魔法少女が持つのはお約束なステッキ……普通ではないとは思ったけど、確かに魔石とか保管できてたしな。
「その中に魔石を保管できているのが証拠よ」
「この収納は武器スキルみたいな物?」
「そういう事。後は魔法少女の魔力の補助等を担ってくれてるのよ。ステッキ無しで一度魔法使ったこと有るわよね? どうだった?」
それは少し前の事だ。
ステッキがなくても魔法少女の状態なら魔法を使えるのか? というふとした疑問から試したことだ。
結果的には使えた。使えたのだが、ちょっと魔力の消費とかが大きかった気がする。あとはステッキがある時よりもコントロールが難しかった印象がある。
「魔力消費が大きい。コントロール少し難しい」
「そういう事。そういった物を調整補助してくれてるのがステッキなのよ」
「なるほど……」
何らかの補助機能が何かがステッキにはあるのだろう、とは何回か思ったことはある。
ステッキよ、お前はかなり大事な事とかをしてくれていたのか……ついついステッキを撫でてしまう。何か点滅したようだ。何処となく、嬉しそうな感じがした。
「それでエーテルウェポンなんだけど、魔法少女ならまだしも、そんな男たちが持ってるなんておかしいわ。妖精世界の武器なのよ?」
「……妖精世界と言えば他の魔法少女にはラビみたいな妖精がいる?」
「それは……」
そう言えば他の魔法少女たちにはラビみたいな存在が居るのかなと思っていたのだが、何となく居なさそうなんだよな、ホワイトリリーもそうだし、ブルーサファイアもだ。
今まで気にしてなかったが、ちょっと気になってしまった。後、妖精世界と言う場所も。ちらほら言ってたけど、詳しい事は聞いてなかった。というより、無理に聞くつもりは無かった。
「……そうね、隠すのは良くないわ」
「? ……ラビが言いたくないなら無理して言わないで良い」
ラビは俺を魔法少女にしても、戦いとかを強制はしてこないし、俺の意思を尊重してくれる。普通に生活もできてるし、ラビレーダーも役に立っている。
まだ二ヶ月あまりしか経過してないが、相棒と言っても良いと思ってる。だから言いたくないことは別に言わなくて良い。いつか教えてくれたらそれは嬉しいが。
「いえ、話すわ。……まず、他の魔法少女に妖精が居るのかって話ね。率直に言うと居ないわ」
「居ない?」
「ええ。居ないわよ。むしろ、この世界の何処にも妖精は居ない。私しか居ないわ」
「それってどういう……」
「そのままの意味よ。妖精と呼ばれる存在は私のみしか居ないわ」
そういうラビの表情は悲しそうだった。こんな顔をするラビは初めてかも知れないな。
「何か、あった?」
まあ俺でも流石に分かる。ラビの身に何かが起きたという事くらいは。ラビを両手に持ち上げ、目の前に持ってくる。
傍から見れば女の子が兎のぬいぐるみを抱いているような可愛らしい状態だと思う。
「私が居た世界――
「もう、無い……?」
それってつまり、妖精世界は滅んだという事だろうか? 一体何で……それじゃあ、ラビは?
「ええ。滅んだ……正確には滅ぼした、かな」
「滅ぼした? 誰が……まさか、妖精?」
「正解よ」
「! どうして」
「簡単よ。技術の発展には犠牲は付き物……犠牲ってレベルじゃないけどね。私たちの住んでいた妖精世界は魔法という力が普及していたっていうのは前に話したわよね?」
その言葉に俺は頷く。魔法がある世界で、魔石と呼ばれる物を主なエネルギーとして使っていたという事は聞いている。
「魔法は生活する上で、もう切っても切れない関係となってたわ。魔石というエネルギーも要は魔力だし」
「わたしたちの世界で言う科学?」
「ええ。科学の発展にも犠牲はあったでしょう?」
「うん」
「何か結果を得るには、犠牲になるものもある。それが技術の発展の宿命」
この世界だって今じゃ、本当に便利になっているが、この状態になるまでにいくつもの犠牲を払ってきたはずだ。それは魔法でも同じ事が言えるのだろう。
しかし、世界を滅ぼすって一体何が起きた? そんなやばい何かを研究とかしていたのだろうか。
街一つが滅んだとか、一部の場所が滅んだとか、そういうのであればまだ? 考えられなくもない。いやまあ、これでも十分やばいんだけどさ。
この世界にもあったよな。放射線が溢れ出てしまい、一部地域が長い間閉鎖されて居たという事件が……。
「世界を滅ぼすって一体何を……」
「そうね、そういう反応になるわよね。……でもあれは今の世の中を更に良い物にしようとした結果なのよ。そこに悪意はなく、本当にただ純粋な世の中を良くしたいという気持ちで行われていたわ」
悪意はない。
つまり、世界が滅んだ原因は本当に世の中を良くしたいと思ってた上での研究で起きた不幸な事故。とは言え、世界を滅ぼすって規模が違う。
「私たちが行っていた研究……それは――」
――
ラビはただそう静かに言うのだった。
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