2-2. チョコチャンクスコーン
「ソータ様! 申し訳ございません!」
寝てると耳元で大きな声がする……。
あー、またエステルだな……。
「いいから、寝かせて。眠いんだから……」
俺は毛布をかぶる。
「ダメです! ベッドで寝てください!」
「いいから寝かせて……」
と、言って、昨日のトラブルを思い出した。
またエステルと密着する事になったら……、いいか……。
いやダメだ!
俺はムクりと起き上がり、無言でベッドに転がった。
しかし、ベッドに染み付いたエステルの甘い香りにたっぷりと包まれ、寝るどころじゃなくなってしまった。健全な成年男子にはキツい状況だ。
毛布のすき間からのぞくと、エステルが正座して申し訳なさそうな顔でジッとこっちを見ている……。
「エステル……。シャワーでも浴びてきなさい」
俺はエステルを追い払う。
「ソータ様……。私、昨日の記憶が無いのですが……、何か
「ん? 気にしなくていいよ」
俺は適当に流す。
「え? 私、何したんですか!? まさか、はしたない事を……」
エステルが青い顔して言う。
「単に酔ってトイレで吐いてただけだから大丈夫」
「えっ!? もう……、お嫁にいけないですぅ……」
エステルはそう言って崩れた。
「何言ってんの、良くあることだよ。エステルほど可愛ければ誰とでも結婚できるよ」
俺はフォローする。
「えっ?」
エステルはキラキラと光る目で俺を見て、
「も、もう一度……」
「ん? 可愛いから結婚はできるんじゃないかって……こと?」
「か、可愛い……ですか?」
「うん、まぁ、可愛い……と思うよ」
言ってて俺が恥ずかしくなってくる。
「うふふ……。あ、でもクラウディアさんの方が……いいですよね?」
そう言ってチラッと俺を見た。
「彼女は大人の美人さんだからなぁ……。でもエステルもあと何年かしたらクラウディアみたいになるんじゃないかな?」
「そ、そうですか……」
なぜか、しょげるエステル。
何かマズいことを言ってしまったのだろうか……?
◇
すっかり目も覚めてしまったのでスタバに朝食を食べに行くことにした。
「ちょっと寒いですぅ」
そう言いながらエステルは俺の腕にしがみついた。ほんのりとエステルの匂いがあがってくる。
俺はちょっとドギマギしながら、
「そ、そんなに寒いかな?」
と、言うと、
「寒いですっ!」
と、言って俺を見あげてニコッと笑った。
こんな所を大学の友達に見られたら恥ずかしいな、と思いつつ、まるで恋人のようなやりとりについニヤけてしまっている自分がいた。
「それにしても高い建物ばかりですぅ」
エステルはキョロキョロする。
「うちの世界には魔法はないけど、その分科学が発達してるんだよ」
「科学?」
「あー、この世界が何でできてるかとか、どうすると便利な物が作れるかとかだね」
「え? この世界って何でできてるんですか?」
「素粒子……かな?」
「粒子……? 小さな
「粒って言っても、波なんだけどね」
「波? もう! 何言ってるか分かんないです!」
「うん、俺も良く分からん」
そう言って苦笑した。
◇
スタバの大きなガラスドアを押し開ける。
「いらっしゃいませー」
という、声がかかり、エステルは
「うわぁ、綺麗~」
と、言いながらガラスのショーウィンドウに駆け寄った。
真っ赤なストロベリータルトや緑の抹茶のスコーンに、オレンジのレアチーズケーキがずらりと並ぶ。
「みんなおいしそう!」
と、エステルは目を輝かせて言った。
「好きなの選びな。コーヒーでいい?」
「じゃぁ、これ! じゃなくて……、こっち……。うーん、やっぱりこれ! それとジュースがいいですぅ……」
エステルがちょっと恥ずかしそうに言う。
俺はポンポンとエステルの頭を叩くと、チョコチャンクスコーンとコーヒーを選び、エステルのと一緒にお姉さんに伝えた。
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