第22話 トーナメント当日

 トーナメント当日。


「よし、じゃあ行こうか!」


 そう言いながら、カイルは家の扉を開いた。


 そこから見慣れた街を歩くこと数十分、前にも訪れた円形状の大きな建物に辿り着く。

 その周囲にはまだ早朝だというのに、多くの人だかりが出来ていた。


『わぁ、人がこんなに沢山!』

『これ、みんな観戦しに来てるんだよな……。トーナメントってそんなに大きな行事だったのか』

『ああ。国を挙げての催し物もよおしものだからな。参加者以外も今日という日を心待ちにしていたのだろう』


 へえ、そうだったのか。

 それだけ大規模な大会なら、優勝賞金も凄そうだ。

 よし、絶対に優勝して、カイルの願いを叶えるぞ!


 決意を新たにしつつ、先を歩くカイルの後を追っていると、入口の目の前に設置されている巨大な掲示板の前で足を止めた。


 お、これはトーナメント表か。どれどれ。


 ……えっ!?


 それを何気なく見た俺は、驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。


『ん? どうしましたアイズさん?』

『い、いや、トーナメントに参加するテイマーって、こんなにも居るのかと思って……』


 トーナメント表は左右両方から真ん中に向かって勝ち上がりの線が伸びていく形式で、一ブロック当たり八人のブロックが計十六個もあった。

 まさか百二十八人も参加者が居るとは……。


 ってことは、優勝するには七回勝ち続けないといけないってことだよな。

 これは思ってたよりもキツいぞ……。


『ふむ、昨年と同じ数のようだな。ということは順調に進めば、今日は三回戦うことになる。それを踏まえておけ』

『はい、分かりました!』


 今日だけで三試合か。

 それなら後のことを考えて、初戦は力を出し過ぎないように心掛けておかないと。


「三匹とも、僕達は第一試合だって。それでリリは……あ、あった! 良かった、リリ達は九ブロックだ。当たるとしたら決勝だね」


 おお、それは良かった!

 で、俺達は第一ブロックで第一試合ってことは、カイルは一番左上だよな。


 それで対戦相手はっと――うん、全然読めない……。


「僕の相手は誰だろ。――ああ、ボンズか……」


 ボンズ? 初めて聞く名前だな。

 凄く嫌そうだけど、一体どんな奴なんだろう。


「いや、でも今の僕なら! よし、行くよみんな!」

『おう!』

『はい!』

『ああ』


 俺達は中に入り、立てられた看板に従って進むと、そこにはいくつもの扉が並んでいた。

 その扉には紙が貼られており、カイルはそれを確認しながら歩いている。


「あ、ここが僕達の控室みたいだ。さあ、三匹とも入って」


 そう言いながら、カイルはとある部屋のドアを開いた。

 俺達は言われた通り中に入り、そこで試合が始まるのを話しながら待つ。


 それから数十分が過ぎた頃、コンコンと扉をノックする音が聞こえ、一人の男性が中に入ってきた。


「カイル選手ですね。そろそろ第一試合が開始されますので、選手用通路までどうぞ」

「はい、分かりました」


 俺達は部屋を出て、看板の指示に従いながら建物の中を歩く。

 そして、通路の中を歩いているところで看板を見たカイルが立ち止まった。


「あっ、ここで待てだって。はぁ、もうトーナメントが始まるんだね。みんな、僕のために出場してくれて本当にありがとう。無理しない程度に頑張って!」

『おう! 絶対に優勝してやるからな!』

『はい! そのために私達は頑張ってきたんですから』

『任せておけ』


 いよいよ本番だ! よーし、頑張るぞ!

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