ドームシールドは物理と魔法両方への防御能力を持ちます

 素材の回収は完了しました。

 今回はスフィンクスブルの眼球素材の入手が目的です。

 この眼球が光魔法の実現に寄与しており、いわばレンズのような素材で。

 いろいろな機構に応用可能、とのことでした。

 一方で、スフィンクスブルの肉は硬くて土っぽいらしいので、食用としては好まれない、とのことでした。


 さて、これでギルド依頼は達成できます。

 しかし、これでは報酬が味気ないので、後3匹ほどハントする予定です。


「スフィンクスブルは群れを作ることは少ないの。

 なので、単体撃破を狙っていく。

 一体で活動してしているモノを探すわよ」


 無言で首を縦に振った3人。

 俺、エリンさん、そしてシオンさん。

 その中に、ヒヨリちゃんは含まれていませんでした。


 彼女は、ポショっとつぶやきました。


「サブロウが、震えてます」


「誰?」


 シオンさんの質問は、そりゃあ当然のモノであって。

 何の疑問もありません。

 しかし、俺には伝わりました。

 サブロウは、『守護獣』。

 ヒヨリちゃんを守ることが使命である、ということを。


「サブロウが、危険を教えてくれているのか!?」


「わかりません。

 でも、嫌な予感がします」


 このタイミングで、シオンさんが、音を拾ってきた。


「やばい、何か、近づいて来ている。

 後方。

 複数体の可能性もある!」


 その言葉で全員が了解し、前方に走り出した。

 が。


「前からも、来てるのかよ!」


 前方から現れたのは、スフィンクスブル。

 その数、3体。


「スフィンクスブルが3体で行動するなんて、聞いたことないわ!」


 エリンさんが、動揺。


「あわわ、まずいですマスターさん。

 後方からも、2体来てます」


 振り向いた時には、後方に2体のブルを確認できた状態。

 これらの情報を統括した結果。

 シオンさんは、以下のような判断を下した。


「2人は、逃げなさい!

 ここは、私とエリンが・・・。

 何とか、食い止める!

 これは異常な状態よ!

 ランクC+の依頼としては、ありえないケース!

 行きなさい!

 早く!」


 ・・・


 それでも。

 俺とヒヨリちゃんは、動かなかった。


「お姉さんの言うこと、聞きなさい」


 苦い笑みを浮かべながら、エリンさんがさとす。

 その優しい聖女に、俺は質問を投げかけるのだった。


「エリンさん、さっきレベル上がって、いくつになりました?」


「レベル34、だけど」


「前方の3人は、俺とヒヨリちゃんでります。

 後方だけ、お願いします」


「サブロウ、リリース!」


 そして、戦況は、『4 vs 5』、から、『5 vs 5』となったのである。


「ちなみに、俺。

 レベル75です」


 そして、ヒヨリちゃんは。

 ワイルドに。

 ジャーキーを食いちぎったのだった。


「開戦だ!!」






*****






 サブロウが1体とたわむれている間に。

 俺に向けて、1体が突進してくる。

 それをシェルター・オープンで防ぎ。

 相手を反動で吹き飛ばしたのち。

 シェルター・クローズ。

 ドラゴンブレスで肉を焼いた後。

 吸魔の包丁でトドメを刺す。


 この間、1体はヒヨリちゃんをターゲットとしていた。

 そして、その1体の。

 両の目が光る。

 事前情報通り。

 しかし、俺は心配をしない。

 なぜなら、彼女の噛みちぎった肉が、GGD2であったからであり。

 ビーム発射のタイミング、その前から余裕を持って。

 ドームシールドを展開。

 その防壁が、光線を、完全に防ぎ切った。

 GGDさん、サスガです。


 ヒヨリちゃんは、再度ジャーキーを食いちぎる。

 そして、ブルへ向けて、突進していき。

 距離を詰め。

 近距離から、ライトニングブレスをお見舞い。

 『威力、2倍』。

 その雷撃は。

 たったの一撃で、猛獣の息の根を止めた。


「レベルアップです!」


 ヒヨリちゃんが、手を上げ、子供のように喜ぶ。


「あ!

 また、レベルアップです!」


 再度、ヒヨリちゃんが、手を上げ、子供のように喜ぶ。

 そう、それは。

 サブロウの活躍を意味しているわけで。

 前方、と呼ばれていた位置には。

 3体の残骸が横たわり。

 俺とヒヨリちゃんとサブロウ。

 その強さと、抜群の相性を見せつけたのだった。

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