この世界には、まだ金属用接着剤は存在しません

 ジェルソン到着後、俺はいつもの3人に喫茶店に来てもらった。

 双子ちゃん、そしてモリタさん。

 俺は、以前伝えていた、あるアイデアについて、再度、簡単に説明する。

 それは、


・バーカウンターの改造


 である。


 まず、既存バーカウンターの顧客側に張ってある板を、全て取り外す。

 そして、それに代わって、『フェンスパーツ』を配置。

 釘を打って、取り付け。

 4台分、作業。

 あっという間に完成!


「フェンスバーテーブルです!」






*****






「ついに、鉄を手に入れましたね。

 おめでとうございます」


「ありがとうございます。

 俺が求める理想の空間に、近づきつつあります。

 みんなの、おかげです」


 モリタさんと、石天板の4人掛け席でコーヒーを飲みながら。

 完成した、フェンスバーテーブル。

 そして、納入したてのフェンスパーティションをながめる。


 双子ちゃんは、フェンスを『みょんみょん』と引っ張って遊んでいた。

 双子ちゃんにも、新素材、『鉄』に、じかに触れてほしいと思ったのだった。


「でも、俺が思っていた鉄と、ちょっと違いました。

 俺が考えていたのは、『鉄の棒』、もしくは『鉄板』です」


「実は、『鉄材』も入手済みです」


「ほんとですか!」


「ただし、厳密には、『亀』です」


「亀なの!?

 鉄だけど、亀なの!?」


「もう、言葉だけで説明するのが、難しいと考えました。

 そこで提案があります。

 モリタさんにも、『現場』に、おもむいてもらいたいのです。

 鉄に、実際に触れていただく、ということです」


「ぜひ、お願いします」


「ただし、条件があります。

 ここから先に起こることは、絶対に口外しないでください。

 約束できますか?」


「はい、約束します!」


「ということです、ミエルさん」


 シェルターから、天使が出てくる。

 その後ろには、ヒヨリちゃん。


「はじめまして。

 モリタさん、でよろしいのかしら?」


「この方は?いったい?」


「天使よ」






*****





 双子ちゃんを村に帰したあと。

 モリタさんと共に、4人で手をつないでの。

 空間転移。

 行き先はガンダル。

 そして、再び、訪れたのは、フェンス親父の仕事場。

 作業場の外。


「鉄材、全部、そろってるぜ。

 ただし、これは『仮置き』だ。

 1週間以内に、全部移動させな」


「なるほど、これを『倉庫』に移動させたいわけですね」


「モリタさん、その通りです」


 ここで、この場所に乱雑に置かれた『鉄材』。

 その詳細を説明する:


・厳密には『亀』

・色は『黒』

・非常に硬いが、鉄を精錬した『はがね』よりは強度が落ちる

・よって武器素材としては、いまひとつ

・ちなみに、甲羅素材は鋼より硬いらしい

・全てが棒材

・長さは50cm〜2m

・本来はもっと長いが、運搬可能なサイズに切断してある

・太さは3cm〜6cm程度

・断面は、真円ではなく、太さにムラがある

・触った感じも、ツルツルではなく、ザラザラ、ゴツゴツしている

・鉄材、合計で20本


「お前さんたち、この鉄材、どうやって運ぶかはわからんが。

 日頃から筋肉を鍛えておらんかったことを。

 後悔すr・・・」


「シェルター、オープン!」


「なじゃこりゃぁ、ああっ!!」






*****






「これで、全部ですね」


 再び、ジェルソンに戻ってきました。

 ジェルソンの酒場兼家具展示場、兼俺倉庫。

 20本の、亀鉄材が運び込まれ、壁の端に寄せられた。


「ありがとうございます。

 さて。

 ここから、残念なお知らせをしなければなりません。

 この鉄を『加工』する。

 その手段がわかりません」


・切断

・曲げ

・研磨

・穴あけ


「ここまでは、なんとか、力技で、なんとか、かもしれません。

 問題は、」


・結合


「、です。

 この世界には、まだ。

 『エポキシ樹脂』、はありません」


「エポ?」


「ただ、こんな作戦もあります。

 『針金で、ガッチガチに固める』、という案です」


「なるほど!

 それなら、俺たちにも、実現できますね」


「でも、その作戦にも、1点、問題があります」


「それは?」


「かっこ悪い」


「見た目の、問題ですか」


「故に、俺が目指している結合方法があります。

 それが、『溶接』です」

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