喫茶店内に観葉植物を持ち込んだ場合、水やりは自分でやってください

 翌日、目覚めると。

 俺は、『バイト問題』のことはスッカリ忘れていた。

 さーて、家具家具〜。

 現在地はジェルソン近郊。

 すぐに、4台の家具が運び込まれる。


「白、白、黒、黒!」


「なのです!」


 ポリアネシア上陸直後に発注していた。

 白と黒のワニ革を使った、ドラゴンレーザーソファーレプリカ。

 白2台。

 黒2台。

 合計4台のソファ。


 配置位置はもちろん。

 喫茶店中央の2人掛け席。

 前方、黒タイルテーブルに合わせて、黒のソファー2台。

 後方、白タイルテーブルに合わせて、白のソファー2台。

 村人8人の力を借りての納入作業。

 双子ちゃんのチアアップもありながら。


「検収、あがりました!」


「あの?

 タドルさん、質問いいですか?」


「何ですか、モリタさん?」


「喫茶店って、大陸渡ると、森になるんですか?」






*****






「それにしても・・・。

 本当に、様変わり、しましたね。

 まるで、この場所だけ、異世界、みたいです」


 4人掛けテーブルに座って、店内を見渡すモリタさん。

 その横に俺は腰掛けた。

 すでに、チェアの代金は支払い済み。

 1脚10,000G、4脚で40,000G。

 レッドラソファーの時は15,000G(材料支給)だったので、ちょっと安くしてもらっています。


 そして、双子ちゃんには、好き勝手に。

 店内を見てもらっています。

 自分たちの仕事が、最終的に、どういう結果を生んでいるか。

 子供なりに、感じ取ってみてもらいたい。

 とか、思ったのでした。


「カッコいい、お店になったの!」


「植物がいっぱいで森みたい!」


 双子ちゃんの建物探訪が終了し、4人席が埋まった。

 さて、また、ここから。


「仕事の話です。

 これを見てください」


 俺が取り出したのは、『本』。

 そう。

 ガンダルの装丁屋そうていやで購入した書籍。

 その中の1冊だ。


「珍しいものを持っていますね」


 前も述べたが。

 紙は高級品。

 その集合体である『本』は、さらなる高級品であり。

 アトラシア大陸で、俺が歩んだ道の中では、販売されていた記憶はない。

 そういう事情が、『珍しい』という、モリタさんの言葉につながっているのである。


「全部で『30冊』あります。

 これを、壁際、入口左の壁際に。

 全部、飾りたいのです」


「『本棚』、ということですか?」


「おそらく、モリタさんが想像している本棚とは、少し違います。

 要求は、すごく単純です。

 本の『背表紙』、ではなく、『表紙』を見せたいんです」


 ここから、紙とペンを用い、設計図案の作成に入る:


・30冊の本、その『表紙』が、お客さんに見えるようにする

・本を斜めに立てかける、薄い棚となる

・縦3段

・横は本が10冊以上おける長さ

・窓にかからない高さにしたいが

・床の近くには本を置きたくないので、地から少し浮かせたい

・木製

・塗装は、大量の塗料が必要なので、今回は保留


「構造は単純だけど、面積が、過去最大、なのです」


「1つの家具じゃなくって。

 複数の家具を横にぴったりくっつける形式でオッケーだよ」


「それなら、分業もできますね」


「この構造なら、新人でも作れそうだな」


「新人?」


「村の若い子たちだよ。

 まだまだ『見習い』だが。

 元気は、いっぱいさ。

 当然、俺が監督をやる。

 家具の売上も、受注も、順調に増えている。

 時間が空けば、村の大人も力を貸してくれる。

 もう、『村の産業』と言っても大丈夫だ」


「頼もしい、ばかりです」


「ということはですね〜」


「私たち2人の手が、空いている。

 ということ、なのです」


 双子ちゃんが立ち上がり、手を合わせてポーズを取る。

 どうやら。

 見せたい、『自信作』、があるようだ。

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