錬金術は転生特典として指定できません

 突然ですが、問題です。

 俺が海運会社受付で見つけた、アトラクティブなアイテムとは。

 一体なんでしょうか?

 テレレレテレレレテレレレテレレレ、レ〜。

 正解者には、スーパータドルくん人形を差し上げます。






*****






 ここから皆さまがシンキングタイムに入りますので、皆さまはスープの映像をお楽しみください






*****






「ただいま帰りました」


「何持ってんの?」


「たる」


 正解は、『たる』、でした。


「何を入れるための、たるなの?」


「観賞用のたるです」


「ごめん、ちょっと、意味わかんない」


たるがどれだけ重要なアイテムか、わからないんですか!

 たるとは、錬金術とは切っても切れない、重要なアイテムなんです!」


「あんた、錬金術師じゃないでしょ」


「酒場感が、急激に上昇するでしょう!

 なんか、酒場っぽくなるでしょ!」


 俺は、たるをカウンターテーブルの横に配置した。


「これから、俺。

 9回、喫茶店とパレル、往復しますんで。

 帰宅しても、無視してください」


「ごめん、ちょっと、意味わかんない」






*****






 たるの運送は、午前中までには完了した。

 10往復はしたが、中身が空だったので、さほど苦労はしなかった。

 俺は、購入したたるを、喫茶店内の以下の場所に設置した:


・カウンターテーブルのサイドに2個

・入り口左の切り株スツールの隣に1個

・入り口右の切り株スツールの隣に3個

・入り口手前の2人掛け席の間に1個

・入り口手奥の2人掛け席の間に1個

・入り口の右、入ってすぐの所に2個


 また、今回購入したたるのスペックは以下:


・高さ50cmくらい、俺の膝上くらいで、結構大きい

・水を入れても、漏れたりしない、しっかりとしたたる

・海運には必須のアイテムで

・これに、水とか、酒とかを入れて運ぶ

・ワインの発酵とかにも使われる

・帯は木製のものもあったが、俺が購入したのは帯が鉄のもの

・価格は1個2,000G

・鉄が使われているし、構造的に複雑

・が、大量生産されているので比較的安価


 そして、俺はこの高級品を、10個も購入したわけである。


「人力☆所持金タイムライン機能、実行!」


・前回残金 [100G]

・喫茶店売上 :+57,950G [60,050G]

・樽(10個) :+20,000G [40,050G]


 残金、『40,050G』。

 やっと、ここで俺は気づいたのである。

 船代考えたら、たる、今買ったらあかんかった、と。






*****






 今日のお昼ご飯は、タマゴサンドとコーヒー。

 船代捻出ねんしゅつのため、節約生活が求められるのです。


「160,000Gです」


「船賃?」


「そうです。

 俺とミエルさん2人で、16万」


「私のぶんは、自分で出すわよ」


「あれっ?

 そうなんですか?」


「当然でしょ」


「でも、廊下で寝なきゃダメみたいです」


「なんで?

 じゃあ、客室には、誰が寝るの?」


「輸出品、だそうです」


「私たち、物以下の扱いなの?」


「考えようによっては、そうです。

 あと、クラーケンが出たら、死ぬそうです」


「ああ、あのヘビね。

 ルーラーと比較したら、雑魚よ、雑魚」


「ルーラーと比較したら、ね」






*****






 昼飯後、俺は、再びパレルの街を訪れた。

 午前中は、完全にたるに心奪われて、心神喪失状態にあったので。

 改めて、街の探索を行うのである。

 探索のポイントは:


・醤油の発見

・ハミルトンには存在しない食材の発見

・ハミルトンには存在しない雑貨の発見

・ハミルトンには存在しない武器防具店の発見

・熱帯魚店の発見


 である。


 探索開始。

 最初に、俺の目に止まったのは。

 ビールのアイコン、そして、その下に『G』のアイコン。

 この街にも、ギルドが存在していることを確認できた。

 しかし、その建物の大きさは、ハミルトンの半分程度しかなく。

 『どうせ依頼を受けるなら、ハミルトンの方がよいのでは』、という思考を受けてスルーした。


 その後、俺は、夕方まで、散策を続けた。

 醤油、および、俺のアンテナに引っかかる商店は、1つも発見できず。

 明確にハミルトンと異なったのは、『釣具店』が多数あったこと程度で。

 惨敗の結果に終わった。


 にも、かかわらず。

 俺が、この探索を続けられたのは。

 この街のどこにいても。

 どこからでも。


「海が、美しく、見えるからなのでした」


 このパレルの街は斜面上に発展しており。

 石造りの家々が、立ち並び。

 街路が複雑に入り組み。

 そして、そこに夕日が差し込み。


「よき、散歩コースでしたとさ」


 という結論を持ってして。

 俺は、喫茶店へと戻ったのだった。

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