喫茶店の壁は、デフォルトではコンクリートです

『石造りの家々が、立ち並び・・・』


 寝起き、早々。

 そのフレーズが、脳内に浮かんだ。






*****






 俺は再び、パレルの街を訪れた。

 朝市は今日も開かれていて。

 昨日と同じ種類の魚が、大量に販売されていた。

 が、俺の目的は魚にはなく。

 店主さんに、質問を投げかけたのだった。


「この街の『大工さん』って、どのお家に住んでますか?」






*****






「石、いっぱい、ある!」


 俺が目をつけたのは、建築用石材だった。

 大工さんから、石材を扱うお店の場所を教えてもらい。

 現在、店内を散策中である。


 求めるのは『石の天板』である。

 ただ店内のおおよその商品は、『ブロック』であった。

 石材で商売をする人間にとっての、メインターゲットは『大工さん』であり。

 基本は、『石材の加工』、『石材の使用』、両方ができて、初めて『大工』、もしくは『石工いしく』と名乗れる。

 とのことだそうだ。

 そして、このように一般の人間にも石材を売っている商店は、そこまで多くない、とのことでした。


「これは、なんていう石ですか?」


花崗岩かこうがん

 硬さや耐久力にすぐれていて、家屋の外装に使う」


 色合い的には、『白から黒のマーブル模様』といった表現。

 テーブルの天板として、申し分なし。

 しかし、今は金銭的に余裕がないと考え。

 一旦、保留とした。


「これは?」


煉瓦れんが

 粘土をかまで焼き固めたものだ」


煉瓦れんが、キタ!」


 これは勝手な俺のイメージだが。

 煉瓦れんがを使っただけで、急激にアンティーク感、西洋感がますように思う。

 ただ、どうやら『耐震性』的な観点で、日本ではあまり根付かない、とか聞いたような気がする。

 しかし、この煉瓦れんが、何かに使えないものか?

 例えば、喫茶店の壁を、全部煉瓦れんがにする、とか・・・。

 って、それ、全部でいくら、金、かかんねん!

 そんなツッコミによって、夢は霧散していった。


 そして、そんな石材店で、俺は、結局。

 またしてもの、散財、をすることになったのでした。


「これは?」


「『タイル』です」






*****






 『タイル』とは、『壁などに貼り付ける、板状の建材』を指すらしい。

 『素材が何であるか』は問わないそうだが。

 この地方では、おおよそ、『材質が陶磁器の板』をタイルと呼び、商品として扱っているのだそうだ。

 焼き物、つまりは、『茶碗』と同じである。


 俺の目に入ってきたのは、正方形の白のタイル、および黒のタイル。

 サイズは、10cmか15cmか、そのくらい。

 1枚の値段は、500G。

 建築資材にしては、安い、のか。

 否、これを壁全体に貼るとしたら、全部でいくら、金、かかんねん!

 など、というツッコミを挟み。

 俺は、白、黒、それぞれ、『16枚』づつ。

 合計『32枚』。

 32x500 = 16,000Gもの出費を、なんの疑問を持たずに行ったのであった。






*****






「ラダーシェルフ、完成してます!」


 タイルをゲットした俺は、天使転送により、ジェルソンへと戻ってきた。

 正直、ラダーシェルフが完成しているのは、予想外だった。

 さすが、仕事が早い!


「ラダーシェルフ、早速納入お願いします。

 お金は払います。

 で、いくら値をつけますか?」


「2,000Gでいいです」


「ちょっと、弱気ですね」


 弱気というのは、金額的な話、というより。

 モリタさんの表情が、そんな雰囲気だったからである。


「今回のラダーシェルフ、実は、俺だけで作りました。

 双子ちゃんの力は、借りていません」


「すごいじゃないですか」


「でも、正直、納得できていない場所が多々あるんです。

 特に、『ガタつき』と『左右対称性』です。

 双子ちゃんが仕事をしたら、こんな『心残り』は残さないでしょう。

 今回の『自作』で、改めて双子ちゃんの力を、思い知りました」


「パッと見は、よく組み上がってますけどね」


 俺は、ラダーシェルフを見上げる。

 俺の身長より高く、2mはあるだろうか。

 このサイズとなると、今度は双子ちゃんとっては『大きすぎる』家具となる。

 そういう事情もあるのだろう。


「でも、次回は、もっと上を目指します。

 これは試作品です。

 なので、2,000Gで構いません」


「では、交渉成立ということで。

 納入、お願いします!」

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