革の鎧は、おおよそ、魔法防御力が低いです

「ナメック革?」


「なめし皮、だ」


「『ナメシ』?

 『ナメシ』って、どんな動物なんですか?」


「『動物』じゃなくて、『製法』だよ」


「どんな『製法』なんですか?」


「知らん」


「じゃあ、ラウドさんの、その鎧の革って、何の動物からとれるんですか?」


「知らん。

 シュリンク、知ってる?」


「わからん。

 聞いたことない。

 父親が、ナメシ、ナメシって言ってたから。

 なんか、『なめす』と、強くなるらしい」


「そうなの?」


「しょうなの?」


 と言った塩梅あんばいで。

 よくわからないまま道具を使う3人なのでした。






*****






 謎の生物『ナメシ』の出現により、完全に脱線したパーティーだったが。

 ここで、本線に戻ろうと思います。


「到着だ」


 前衛職のラウドさんが宣言。

 そこにあったのは、岩場だった。

 岩の色は、灰色。

 喫茶店の壁に近い、コンクリートみたいな色であった。


「ほらよ、使いな!」


 そして、後衛職のシュリンクさんが渡してくれたのは、2点。

 杭、そして、ハンマーである。

 つまり、ここから。

 『石切』を行おうというわけである。

 正直に言うと、まったく、自信がないのです。

 まあ今日は、お試し、ということで。

 『この村に、石垣職人か、石像職人でもいてくれたらよかったのに』。

 そんな考えののち、俺は、石を叩き始めたのでした。






*****






 ここから単調な作業に入りますので、皆さまは謎の生物『ナメシ』の映像をお楽しみください






*****






 『劈開へきかい』。

 それは、『結晶や岩石が、ある特定方向へ割れやすいという性質』を指す。

 俺は、この言葉をなんとなく覚えており、そして、これを期待していた。


 まずここで、俺が『石の天板』に求める、そのスペックに言及する:


・厚みは、適当でOK

・ただし、薄すぎると割れるし、重すぎると運べないのでNG

ふちの形状は、適当でOK

・形状は四角でも、丸でも、中間のいびつでもよい

・逆に、それもそれで味があるように感じる

・ただし、絶対条件が存在する

・それは、平面度

・つまり、表面がツルツルであることが必要


 この『表面ツルツル』を実現するには、『石を削る』ということが最も単純、だと思っている。

 しかし、現状、このジェルソンには、『石を削る』、その技術が存在しない。

 そこで、俺が思いついたのが、『劈開へきかい』である。

 つまりは、『意外と、割ってみると、断面、スパッといくんじゃね?』。

 そんな楽観的、『とにかくやってみよう精神』からスタートした、プロジェクトなのである。


「あかん・・・」


 そして、そんな楽観的アイデアは、もろくも崩れ去ったのだ。

 今、削り出した、この岩石のように。


「まっすぐ、割れない」


 石を割ることには成功したが、俺が求める『プレート』には程遠く。

 『普通の岩石』が採取できたのみであった。

 当然、表面はガサガサのゴリゴリ。

 もはや、どっちが『表』なのか、わからないまであった。


「撤収!」


 一応、報告用に、採取した岩石をシュリンクさんに運搬してもらい。

 俺は、岩場を後にしたのだった。






*****






「不甲斐ない結果に終わりました」


 俺は、モリタさんに事情を説明する。


「いえいえ、すみません。

 本来は、俺も同行すべきなのでしたが。

 尽力、感謝します」


 モリタさんは、脚が万全ではないので、同行しなかったのである。

 シュリンクさんが持ってきた、『岩石』は、作業場の広いテーブルの上に置かれた。

 それを見た双子ちゃんから、以下の意見が生まれた:


・『もろい』岩石ではない

・なので、建築用としても、使えないことはないと思う

・このあたりはみんな木造住宅だけど、石造りの住宅もあるって聞いたよ

・大工さんの『ノミ』を使えば、加工できるかも

・でもやっぱり、今使っている『木材用ヤスリ』では、表面の研磨はできない

・下の面を平坦にしたら、ドアストッパーとか、作れそう

・頑張れば、猫ちゃんの彫像とかも、作れるかも?


 この子たち、本当に子供?

 『研磨』とかいう言葉、どこで覚えたの?

 ますます、頼もしさをアピールしてくる双子ちゃんなのでした。

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