転生の場所指定はできません

 モリタさんは最後に、『量産体制が整えば、もう少し安くなる』という言葉を添えました。

 まだ、手探り状態の家具屋経営。

 少しでも、力添えをしたいと思ったのでした。


 そして、即、運搬開始。

 即、納入。

 即、検収。

 即、入金。


 ここで、所持金を確認させてください。


「人力☆所持金タイムライン機能、実行!」


・前回残金 [450G]

・ドラゴンルーラーの爪:+8,000G [8,450G]

・食材:-3,000G [5,450G]

・喫茶店売上:+41,150G [46,600G]

・レッドドラゴンレザーソファー:-15,000G [31,600G]

・ウッドソファー・ダブル:-13,000G [18,600G]


 所持金は、『18,600G』です。






*****






 ここから話は、『イス』から『テーブル』へシフトしていく。


「テーブルについては、どう考えていますか?」


 モリタさんがうかがいをたててくる。

 次の商談が動き出す。


「理想は、『メタル』です」


「『鉄』、ですか」


「はい。

 骨組みを『鉄』で作成し、その上に、塗装したウッドの天板を乗せる。

 これが、1つの、俺の、なんとういうか。

 夢、というか」


「鉄の入手は、難しいですね。

 ・・・。

 大陸を、渡らなければ」


「『炎と鉄の国』、ですか」


「そうです。

 例えば、ナイフやフォークなどの鉄器類は、おおよそ、ガンダルからの輸入品です。

 鉄の加工技術に関しては、この大陸は、何倍も遅れを取っています。

 この大陸にいる以上、鉄材の入手は不可能だと思います。

 まあ、俺たちも、イマイマ、木材を扱い始めたところですから。

 いきなり『鉄』を渡されても、対応できません。

 ただ、タドルさんが、俺たちの技術水準に合わせてくれる必要は、ないと思います。

 俺たちは俺たちで、道を進みます。

 あなたは、あなたの道を進んでください」


「正直、海。

 渡りたいと、思ってます。

 しかし、まだ準備が足りません。

 何もかも。

 何もかも、です」


「それまでは、最重要顧客でいてください。

 そして、たまには、こちらの大陸に、帰ってきてください」






*****






 話が長くなってきたので、俺はここでコーヒーをいれた。

 俺とモリタさん、2人分。

 そしてモリタさんが待つ、ドラゴンルーラーレザーソファーの席に、コーヒーを配膳した。


「こういう、ゆったりした時間もいいですね。

 俺、コーヒーとか、あんまり飲まなかったんですけど。

 なんか、いいっすね」


 モリタさんは、コーヒーに、ゆっくり、口をつける。

 カップを置くと、話の続きが始まった。


「俺たちに作れる、タドルさんを納得させられる『テーブル』って。

 なにか、できないですかね」


 俺も、コーヒーを口につける。

 そして、今ある考えを、外に出していった。


「1つは、ガラス天板のテーブルです」


「ガラスですか!?」


「当然、割れます。

 なので、厚みが必要なんです。

 でも、そんな厚みをもったガラスを作れる技術が、この世界にあるのかがわからないです」


「難しいでしょうね。

 工房を、探し出すのは」


「あと、今、テーブルは4本脚ですけど。

 これを1本脚にできないか、と考えています」


「なるほど、それなら、俺たちにも可能です。

 必然的に脚は太くなりますね。

 その脚に彫刻をほどこすなどすれば、付加価値もあがります」


「この件は、双子ちゃんの意見も聞いてみたいですね。

 もはや、俺よりも良い意見、出してくれそうな気がします」


「子供に頼るのは、心苦しいですが。

 ほんとうに、大事な、ウチの戦力です」


「そして、最後に、もう1つ考えがあります。

 それは・・・」


「それは?」


「『石の天板』です」






*****






 ジェルソンにて昼食をご馳走になったあと、俺はジェルソンの森を訪れた。

 ちなみに、ミエルさんには、前もってミックスサンドを作っておいた。

 現在、絶賛ソシャゲ中である。


 同行してくれるのは2人。

 最初のジェルソン滞在にて、狩りのイロハを教えてくれた、ハンターの2人。

 一人は、黒髪短髪オールバックの『ラウド』さん。

 一人は、金髪襟足をっている『シュリンク』さん。

 共に、弓装備。

 ただし、ラウドさんは、弓より剣の方が得意。

 一方のシュリンクさんは、弓の名手、です。

 共に、赤みのある茶色の『革の鎧』を装備しています。

 小獣の爪程度なら、おおよそ無効化できる強度だそうです。


 ・・・


 ・・・


 革?


「それ、何の革、なんですか?」


「ナメシガワ」

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