異世界でも、1週間は7日です

「今度こそ、代金を支払います。

 素材は自分が提供して。

 15,000G払います。

 モリタさん。

 あなたが受注の判断をしてください」


「その前に、1つ質問に答えてくれ」


「はい」


「あんた、やっぱり、バカなの?」


「そうです」


「レッドドラゴンのレザーだろ、これ!

 いや、ドラゴンルーラーと比較すれば、くらいは下がるが」


「赤いのも、作りたい!」


「絶対、カッコいい!」


 ノリノリの双子ちゃんが後押し。

 ケントさんとタマエさんは笑顔を見せる。


「わかった。

 その金額で受けよう。

 受注、成立だ!」




 


*****






 この時点で、ちょうどお昼時。

 俺は皆に、料理を振る舞うことにした。

 ここから、やっと本当に、慰労会となる。

 メニューはやはり、チキン南蛮定食がいいだろう。

 みなを待たせてシェルター、キッチンへ。

 天使には端っこに避けてもらい。

 俺は、定食を『7人分』作成。

 一気に『7人分』も食事を作ったの、生まれて・・・、死んで、また生まれて初めてかも。

 とか思ったのでした。


 一食分を天使に残し。

 にぎやかなる食卓。

 その、甘酸っぱい味付けの鶏肉は、驚きの早さで胃袋に流し込まれたのだった。




 


*****






 食後のコーヒーを飲み終わった後。

 俺は2,000Gをふところから取り出し。

 今回のMVPにプレゼントした。

 

「タマエさんには、無理してもらったと思ってます。

 次回のソファーの納品は1週間後で構いませんので。

 自分のペースで取り組まれてください。

 感謝しています」


「あらあら、私は大丈夫よ。

 でも、これは受け取ります。

 この子たちに、美味しいもの、食べさせて、あげたいので」


 コインを両手で受け取ったのち。

 タマエさんが、その手をにぎって、胸の前で合わせ、目をつぶる。

 若々しい仕草、かわいい。


「当然、次回の報酬は、タマエさんにも分配します」


「ありがたく、いただきますわ。

 次回も、若い人に負けないように頑張ります!」


 次回の報酬はモリタさんに渡すことにしてある。

 誠実なモリタさんなら、適切な分配比率を叩き出すだろう。


「今後の話ですが」


 モリタさんが切り出す。


「家具店を、本格的に運営しようと考えています。

 本来、俺たちはみんな農民です。

 まあ、本業もあるので、まだまだ片手間でしか取り組めませんが。

 大きく、2つの方向性を検討しています」


「それは?」


「1つは、現状実現済みの、木材のみで作る家具の改善、および販売ルートの開拓です。

 その『改善』についてですが・・・。

 俺は、双子の力を借りたいと思っています。

 この2人は、繊細な感性と、手先の器用さを持ち合わせています。

 そこで、『微細な細工を施した家具』を販売できないか、そんな考えを持っています」


「がんばる!」


「なのです!」


 双子ちゃんが、2人で両手を合わせての気合アピール。

 この話はすでに、タマエさんにも伝達済み、であったようだ。


「もう1点は、今回のソファーを、自分たちでも作ってみる。

 その方向性です。

 当然の話ですが、『ドラゴン狩り』ができる人員は、この村にはいません。

 それどころか、羽毛を、あれだけ大量に集めるもの難しい。

 まだ俺の中に正解はありませんが。

 代替となる材料を、村人の力も借りながら、検討してみたい。

 そう思っています」


「俺も力を貸す」


 ケントさんが、モリタさんの肩を叩く。

 師弟関係が構築されている。

 そんな考えが浮かんだ。






*****






 お疲れ様慰労会は閉幕し。

 レッドドラゴンレザー、ゴムボール、羽毛を作業場へ運搬してもらい。

 その運搬作業を手伝い。

 双子ちゃんとの、しばしの別れをしんだのち。

 解散。

 俺はジェルソンの村を後にした。


 喫茶店に帰還。

 そして俺は、再びコーヒーをいれる。

 そのコーヒーを、入り口に一番近い、2人席、木製テーブルの上に乗せ。

 俺は、そのテーブルの、入り口に近い側の木製の席に着席。


 そのポジションから。

 新品、紫のレザーソファー。

 その、美しき光沢を。

 コーヒーを飲みながら。

 ただただ、永遠、眺めたのだった。


「異世界ソファー、めっちゃイイ・・・」

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