レッドドラゴンのレザーには耐火性能があります

 試乗会、緊急開催。

 集まってくれた村人全員に、座り心地を体験してもらいました。

 以下、お客様アンケートの結果で御座います:


・程よく押し返してきて気持ちいい

・ボヨンボヨンして、楽しい

・紫色がカッコいい

・レザーがすべすべ、ツルツル、ひんやり

・俺は今、ドラゴンに乗ったぞ!

・若干、お尻痛い、でもそれがイイ

・背もたれのクッションが柔らかくて好き

・いつも座っているイスよりも背が低い

・これ、いくらするの?

・手すりもザラザラしてなくてグッド

・木が黒い!

・塗料が役に立ってよかったです


 以上、報告を終了します。

 解散。


 そう、本当に解散したのである。

 理由は明確です。

 『まだ、1席分しかできていないから』です。


「これを、もう1個作るのか・・・」


 モリタさんが、ボソッと漏らしました。

 その『ため息』を、双子ちゃんのチアアップが、かき消します。


「がんばれ、がんばれ!」


 モリタさんのみならず、メンバー全員が奮起して。

 同じ作業をもう1回。

 繰り返し。

 そして。

 それが完遂された頃には、日が暮れかけていたのでした。






*****






 納車。

 じゃなくて、納品は、次の日の朝に行われました。

 村人数人の力を借りて、ジェルソン近郊に解放している喫茶店まで、運搬をお願いしました。

 『なんか、神輿みこし、みたい』、とか思いました。

 まつりだ、まつりだ!。

 納車祭のうしゃさい

 納車記念日。

 テンションがおかしいなと、自分でも思いました。


 喫茶店に着くと、そこに、天使はいませんでした。

 昨日ついた『嘘』を貫くため。

 同棲相手には一時、押入れ、ならぬシェルターに、隠れてもらっています。

 通常、怒りを買いそうな依頼でしたが、『ソシャゲ様』が怒りを沈めてくれました。

 ソシャゲ様、さすがです。


 配置位置は決めていました。

 入り口から入って左、手前。

 元々2人掛けのイステーブルセットが置いてあった場所。

 そこに旧式のモノと交換で配置します。

 テーブルは同じですが、前述の通り脚を短くしています。

 余ったイスは喫茶店の端っこ、左手の切り株スツールの隣に並べて仮置き。

 もし、お客と従業員が増えたら・・・という、小さな可能性に備えて待機してもらいます。


 この時点で、ケントさんが一人で完成させていた、ミエルさん用の木製ベットも搬入。

 それを、喫茶店の奥、シェルターの右手に設置してもらいます。

 これで、シェルターを挟んで、左手が俺のベットスペース、右手がミエルさんのベットスペースとなります。

 堅牢なるシェルターが、2人のナカをへだてるのでした。


 これで、全て、設置、完了です!


「傷なし!

 検収、あがりました!」


 『検収』という言葉の意味は、間違いなく誰も理解していなかったと思われますが。

 『OKの宣言』であることだけは伝わったようで。

 自然と、拍手が巻き起こりました。

 とりあえず、自分も拍手しておこう。






*****






 入り口の右手。

 木製の、4人がけのテーブル席。

 そこに6個のイスと、6個のカップが並びました。

 4個はコーヒー、2個は水。

 テーブルを囲むのは、もはや、頼もしいばかりのメンバー。

 俺、ケントさん、モリタさん、イノリちゃん、カナエちゃん、そしてタマエさん。


 お疲れ様会。

 その前に。

 クロージングミーティングをり行うのである。


「今回は、ご協力いただき、ありがとうございました。

 今回の報酬は、最初に相談させていただいた通り。

 『ソファの設計書』、になります。

 ・・・。

 本当に、それだけで、いいんですか?」


「その話は、もうすでに、何回もした」


 モリタさんが代表して答える。

 これからは、モリタさんがジェルソンの家具店を仕切っていくのだろう。


「で、ですね。

 あの、実はですね。

 もう1つ、作ってもらいたいものがあって」


 申し訳なさを全身で表現しながら、俺はシェルターの中に入る。

 イスに座って大人しくソシャゲをしている天使をスルーして。

 冷蔵庫の中に保存してある、とある素材を回収し。

 その素材を、皆が待つテーブルの上に広げ。

 そして、懇願した。


「今回のソファー、その『赤い』やつ。

 どうしても欲しいので!

 また、製造、お願いさせてください!」

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