喫茶店に照明設備は存在しません

 では、ここで問題です。

 この5日間で、俺がお客さんにかけられた言葉の中で『2番目』に嬉しかった言葉は何でしょうか?

 ちなみに1番嬉しかったのは、『観葉植物がいいね』でした。

 さあ、みんなで、考えよう!






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 ここから各位シンキングタイムに入りますので、皆さまはギルイベに没頭する天使の脚をお楽しみください






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 横取り40萬!

 正解は『野菜が新鮮』でした。

 ハッキリ思いました。

 『計画通り』だと。


 この言葉は、最初に来店した赤緑青の冒険者の内の、青の魔術師さんもかけてくれた言葉です。

 改めてになりますが、こんなヘンピな場所で、新鮮な食材が食べられることが、まず異常なのです。

 特に野菜、パンに挟むレタスと、定食に添えるキャベツは、『生食』で提供するので、その鮮度が明確にわかります。

 現時点でのこの世界では、『冷蔵、冷凍技術』というものが、まだ確立されていません。

 ここに、俺が喫茶店運営を成功させる『鍵』がある、と考えていました。


 ただし、喫茶店をハミルトンの街の近くに出すと、新鮮な野菜を入手しやすくなるので『冷蔵、冷凍技術』の利点が活かせません。

 それもあり、ハミルトンの街からある程度離れた位置に店を出したいと思っていたのでした。


 ここからは前世での話になりますが。

 通常、喫茶店を営業するには、以下の項目のお金がかかります:


・食材費

・食材運搬費

・人件費

・水道光熱費

・備品消耗品

・家賃


 これらが、今の俺に関しては、以下のようになります:


・食材費

 現状のメイン食材である『鶏』がタダで手に入る。


・食材運搬費

 ミエルさんの転送魔法は使えないが、ハミルトンまでは喫茶店をたたんだ状態で移動でき、ハミルトン近郊でシェルターをオープンすれば、物資を大量購入しても全て収納可能なので労力はかからない。


・人件費

 ミエルさんが地上に留まる限りなし。


・水道光熱費

 水道代無料。ガス代無料。電気代、冷蔵庫に関しては無料。


・備品消耗品

 今は安物でクメン。将来的には拡充。家具は自作した。


・家賃

 なし。もし国の役人が来たら、喫茶店ごと畳んで逃げる。


 以上。

 おおよそ全ての項目で『シェルターチート』が発生しているのである。

 ここに『俺の料理人としての経験不足』というマイナス要素が入るのだが、それでもプラス要素の方が勝る、そのはずである。

 そのはずであり、事実、この5日間で納得いく売り上げを達成できたのである。


 ここで1点補足があります。

 それは『水道光熱費』に関してです。

 『水』、『光』、『熱』、全て無料です。

 しかし、『光』が無料である理由だけ異なります。

 本当に光を使っていない、つまり『電灯』がないのです。

 この世界の調光事情はとぼしく、みな日が沈むと同時に眠ってしまいます。

 一部の酒場、バーのみが、オイルランプを用いて照明を実現しているようでした。

 しかし、このオイルランプ、およびオイルの価格が高いのです。


 今回の喫茶店の運営方針の1つに、『酒の提供は、運営が軌道に乗ってから』というものがあります。

 ここに、この『光費』とも呼べるものが関わってくるのでした。

 また、酒を提供するとなると、『酔いどれアラクレ』が出没しそうで怖かったので、この点でも、もう少し俺が強く、レベルアップしてからにしたいという考えもあったのです。

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