ユニークスキルは他者から教えてもらうことはできません
キッチンで魔法の練習を続けていると、いつのまにか日が暮れようとしていた。
やはり火力のコントロールが難しく、『クッキング用魔法』としての性能は低いままであった。
が、『攻撃魔法』としての性能は、徐々に高まりつつあった。
威力、制御力の観点にて。
『俺も異世界にて魔法使いデビューを飾った』。
そう
ドラゴンに襲われたときは、これでお終いかと思った異世界人生。
そこに、またも新しい『色』が見えてきたように思う。
・・・。
ドラゴン?
そして、俺はここで、大切なことに気がついた。
*****
天界ソシャゲでイベントアイテムを回収中であった天使さんに声を掛け、2人で喫茶店の外に出た。
「ミエルさん、ちょっと見ててください」
そう告げたうえで、俺はナナメ上空を見つめ。
口を大きく開けて、
<<ゴォオーーーフ>>
火炎放射を行った。
そう、『ドラゴンブレス』である。
「俺、とっくに、炎、使えました」
「なるほど、モンスターの能力を吸収したのね。
吸魔の包丁の能力によるもの、でしょうね」
「魔法、
フランの魔法より、こっちのブレスの方が、間違いなく、段違いに強いです」
「そうね・・・。
その通りよ!」
「あーーーーーーーーーーー!
10,000G、無駄にしたーーーーー!」
「ふふっ。
残念でした」
天使さんが、面白そうに笑い、そして、俺は
改めて、10,000Gって、高くない?!
その値付けが気にかかってきた。
「魔法って、返品できないんすか?
クーリング・オフとか適用されんのですか?」
「される、わけないでしょ」
「ですよね」
俺は、天空に霧散消滅したドラゴンブレスを目で追いかけた。
哀愁漂う。
去ったもの、帰って来ず。
その背中に、天使さんが優しい声を掛けてくれるのだった。
「あなたは、無駄な買い物だと思っているようだけど。
決して、そんなことはないのよ」
「そうなんですか」
*****
詳細の説明は明日にしましょう、とのミエルさんの提案があり。
一晩明け。
俺は天使さんと、モーニングコーヒーを楽しんでいた。
タモさん1号を使ったドリッピングにも、だいぶん慣れてきたように思う。
でも、やっぱケトル、ほしい。
「で、昨日の話だけど」
「よろしくお願いします」
「まず、あなたが昨日使った『ドラゴンブレス』は、『スキル』でも、『魔法』でもないわ。
『ユニークスキル』、それにカテゴライズされる」
「ユニークスキル?」
「簡潔に述べると、『伝授不可能なスキル』ね。
他者に教えることができない、その人物固有のスキル、というわけ」
「なるほど」
「で、次。
『ユニークスキル確認スキルを習得』と
「スキルの習得ですね。
了解です。
『ユニークスキル確認スキル』、しゅーとく。
アンド、ユニークスキル確認スキル、実行!」
・シェルター操作権限
・喫茶店操作権限
・吸魔の素質
・ドラゴンブレス
「なるほど、『ドラゴンブレス』、でました」
「ここに、『シェルター操作権限』、『喫茶店操作権限』も存在しているでしょ。
つまり、この喫茶店と内部のシェルターを操作可能なのは、あなただけ、って言ってるのよ。
他の人間には、ユニークスキルは伝授できないから」
「『俺だけの』スキル、ってわけですね」
「続けてになるけど、『ユニークスキル確認スキル』のレベルをアップしてちょうだい」
「ユニークスキル確認スキル、レベルアップ。
アンド、ユニークスキル確認スキル、実行!」
・シェルター操作権限
・喫茶店操作権限
・吸魔の素質
・ドラゴンブレス [炎]MP10
「うわー・・・。
ドラゴンブレス、MP消費あるのかー」
「『無限に炎が吐ける』、なんて思わないこと。
ユニークスキルであっても、結局、魔力を消費するのよ」
「正直、シェルターにこもって、ドラゴンブレス吐いてれば無敵ー、とか思ってました」
「でも、それもあながち間違いでもないわよ。
だって、MPは回復するのだから。
あとは『
「もっと、溜め込まないと、ですね」
「それに、こんな表現もできるわ。
『たったMP10で、炎を吐ける、のよ』」
「納得です。
消費MP同じなのに、明らかに『ドラゴンブレス』の方が威力高いです」
「ユニークスキルは、おおよそ、通常のスキルや魔法よりも優れた効果のものが多いわ。
最初に習得したユニークスキルが『ドラゴンブレス』ってのも異例ね」
「でも、これだと、やっぱり新人の『フラン』さんの出番はないですね」
「否。
そうではないわ。
その点を今から、詳細に説明するわね」
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