喫茶店に持ち込んだアイテムは保持されます

 俺が、この1ヶ月で取り組んだこと。

 それは・・・。


 DIY。


 言い換えると、『家具作り』である。

 家具を買うほどのお金は持っていないし、そもそも家具店を見つけるまで、あとどれだけの期間がかかるかが不明。

 家具って、ほんと、高いのよね。

 そこで、考えた。

 『You!自分で作っちゃいなよ!』作戦。

 素人の自分が、どこまでやれるかわからない。

 が、やってみないとわからない。

 また、村に大工さんがいたので、その人が多少力を貸してくれる、という話がついたのだ。


 俺は、まず、簡易的な設計図を作成。

 そこから、必要な木材のサイズ、個数を割り出して、これを村人に連絡。

 『この木材と、猪肉を交換する』というトレードを持ちかけたのだった。

 同時にノコギリや金槌、釘もトレード。

 そして作成開始。

 最初の1週間は、それはもうヒドイ出来だったが、徐々に慣れてくると、その後は順調に進んだ。


 最終的に完成したアウトプットは:


・4人掛けテーブル+椅子のセット、×1

・2人掛けテーブル+椅子のセット、×4

・カウンター+椅子×6

・切り株スツール×2

・木製ベンチ

・木製パーティション×2


 これで総座席数『18』。

 ・・・。

 そう。

 作りすぎたのである!


 今喫茶店を開店しても、そんなにお客が訪れるはずもない。

 しかし、家具を作る作業がだんだん楽しくなってきたので、最終的には当初の計画になかったベンチやパーティションも作ることになったのだった。


 さあ、ここからレイアウトだ。

 まず、入り口の反対側にシェルターがあるので、この前にカウンターと椅子を6個配置する。

 続いて、入り口から見て左に2人掛けセットを2×2で4卓配置。

 逆に、入り口から見て右に4人掛けセットを1卓配置。

 テーブル、イス、カウンター、共に、『天板1枚+脚4本』という、簡素な方程式でできている。

 ただし、『バリ取り』、『面取り』、『ヤスリ掛け』の3つの追加作業は行なっている。


 その間に、木製パーティションを2つ配置して間仕切りする。

 このパーティションは木の枠に、村人からタダでもらった不要な布切れを適当に貼り付けて作成してある。

 木製ベンチは外。

 満員時に外でお客さんが待つときに座ってもらうことを想定している。

 ベンチとはいっても、長い天板に、6本の脚が付いているだけの構造。

 まあ、これが使われることになるのは、相当先の話だが。


 そして今回、俺が最もこだわったもの。

 それは、観葉植物だ。

 狩猟に同行した際に、観賞用に向きそうな木を2本、見繕みつくろい、村人の力を借りてこれを掘り起こし、わざわざ、喫茶店まで運んでもらったのだ。

 植木鉢も木材で作成し。

 これを切り株スツールとセットで、店の左端と右端に設置した。

 黄緑色の葉っぱが、木製の家具と調和する。


 これで、念願の、喫茶店、バージョン1。

 完成である!






*****






 『田舎に泊まろう』も、ついにお別れの時間。

 俺は完成した喫茶店に村人を招待した。


 18の座席と、切り株スツール2つが埋まり。

 その他の村人は、俺が作る家具を、子供たちが見よう見まねで作った家具に座っていて、店内はギチギチの状態だった。

 しかし、その子供が作った家具の完成度も非常に高い。

 ニスもペンキも塗っていない質素な家具だが、木の温かみを感じる、そしてなにより頑丈な一品であった。

 この喫茶店を利用する客は、冒険者が多くなると予想している。

 故に、鎧装備の大男が座っても大丈夫なレベルの強度に仕上げたかったのである。

 もはや、この家具が、この村の特産品にまでなりそうなまであった。


 俺は、村人全員に、猪ではない、『鶏肉』の唐揚げを無料で振る舞った。

 残念ながら、飲み物は水だが。

 大好評で、すぐに完売。

 『唐揚げは、やっぱり鶏肉だよね』って思いました。

 

 そして、喫茶店を収納。

 巨大な施設が一瞬にしてなくなる様子は、またも村人を驚かすこととなった。


「森に沿って、北に進みなされ。

 商業都市ハミルトンにたどり着きます。

 あなたが求める食材、物資は、そこでおおよそ手に入るでしょう」


 この時点で、村人から、質素な食器やナイフ、フォークをトレードしていた俺。

 これで、喫茶店として最低限必要な資材が整ったことになる。

 さあ、ここが本当のスタート地点。

 目指すは、世界一の喫茶店のマスターだ!

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